プロ野球のペナントレースもいよいよ大詰め。個人タイトル争いにも注目が集まるなか、パ・リーグの最優秀中継ぎ投手を争っているのが、オリックス・椋木蓮だ。度重なる故障に苦しんできたドラフト1位右腕が、4年目の2026年シーズン、リリーフとして再び輝きを放っている。大学時代からその才能を追ってきた筆者が、椋木の復活までの軌跡を振り返る。

度重なる故障に苦しんだドラ1右腕が、4年目に見せた圧倒的な安定感
いよいよ大詰めを迎えているプロ野球のペナントレース。この時期になると、チームの順位とともに気になるのが個人タイトルの行方だ。
何度もタイトルを獲得している選手がいる一方で、初めてタイトル争いに加わる選手も少なくない。その一人が、パ・リーグの最優秀中継ぎ投手を争っている椋木蓮(オリックス)だ。
2026年9月17日終了時点で46試合に登板し、2勝4敗1セーブ、32ホールド、防御率1.83。最優秀中継ぎ投手は、ホールドとリリーフで登板した勝利数を足したHP(ホールドポイント)の数によって決まる。椋木は現在34HPでパ・リーグ3位。トップの松本裕樹(ソフトバンク)と鈴木昭汰(ロッテ)の35HPとは、わずか1HP差につけている。
十分タイトル獲得は射程圏内といえるだろう。
そんな椋木は山口県出身で、高校は地元の強豪・高川学園に進学。2年夏には山野太一(現・ヤクルト)の控え投手として甲子園に出場したが、登板機会はなく、チームも初戦で履正社に敗れている。
高校3年時もドラフト候補という評判ではなかったが、一気にその名が知られるようになったのは、強豪・東北福祉大への進学後だ。
力のある選手が多いチームのなかで、1年春からリリーフとして投手陣の一角に定着。いきなり9試合に登板して3勝0敗、防御率0.00という見事な成績を残し、チームの優勝に大きく貢献した。
しかし、その後の大学生活は決して順風満帆ではなかった。
2年春には右肩を痛めて手術を受け、長期離脱を余儀なくされた。さらに3年春のリーグ戦は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、公式戦に復帰したのは3年秋だった。
特に印象に残っているのが、2020年10月13日に行われた東北学院大との試合だ。1点リードの9回から登板すると、わずか10球で三者凡退、2奪三振。見事に試合を締めた。
当時のノートには、こんな記述が残っている。
「故障前と比べて明らかに体重移動のスピードが増し、腕の振りも鋭くなった。ゆったりと右足に体重を乗せてからステップし、左足の着地も安定している。ストレートは高めも低めも勢い十分で、打者は完全に振り遅れる。短いイニングであれば球威は大学生全体でもトップクラス」
ストレートの最速は153キロをマークし、アベレージでも150キロ近くに達した。
このシーズンは故障明けということもあり、5試合、8イニングの登板に終わったが、15奪三振で無失点と圧巻の成績を残している。この頃から、2021年のドラフト上位候補として椋木の名前が頻繁に聞かれるようになった。
「先発でもいける」最速154キロ。大学時代から見えていた非凡な才能
4年時には先発にも転向した。
最後に実際の投球を見ることができたのは、2021年5月29日に行われた仙台大との試合だった。この日は中盤につかまり、5回途中まで投げて6失点で負け投手となっている。
それでも、投球内容自体は決して悪いものではなかった。当時のノートにも、賞賛する言葉が多く並んでいる。
「立ち上がりからコンスタントに150キロ前後をマーク(この日の最速は151キロ)。リリーフの時と比べても出力が大きく落ちることなく、特に高めのボールはホップするような球筋で勢い十分。横に鋭く滑るスライダー、小さく落ちるフォークもしっかり腕を振って投げられ、勝負球として使える。
(中略)
3回に辻本倫太郎(現・中日)に甘く入ったスライダーをスタンドに運ばれてからリズムが崩れる。コースを狙いすぎてカウントを悪くし、勝負球が甘くなる。先発としての経験不足が原因か。ただボール自体はストレート、変化球ともに一級品で、投げる以外のプレーも素晴らしい」
春のリーグ戦後に出場した大学選手権では、リリーフで2回を投げて1失点ながら、ストレートの最速は154キロを計測。
この成長ぶりが高く評価され、2021年のドラフト1位でオリックスに入団した。
故障、低迷を乗り越え、今季は「ストレート」で再び勝負する
プロ入り後も、2試合目の先発となった2022年7月30日の日本ハム戦で、9回ツーアウトまでノーヒットピッチングを見せるなど、いきなり実力の片鱗を示した。
しかし、その後は度重なる故障に苦しめられる。
2025年も12試合の登板にとどまり、防御率6.93という成績に終わった。
それでも、大学時代に故障から復帰した後、さらにスケールアップした姿を見せていたように、4年目となる今季は開幕から抜群の安定感を発揮している。
特に注目したいのが、三振の6割以上をストレートで奪っていることだ。
大学時代に最速154キロを計測したストレートを武器に、今季はリリーフとして存在感を発揮。初めて個人タイトル争いに加わるまでになった。
このままの調子を維持し、初タイトルを獲得することはもちろん、投手陣に故障者が続出しているオリックスにとって、来年2027年以降も長くブルペンを支える存在としての活躍を期待したい。
■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

