新規訪問数は年間100軒以上。世界の次世代バーカルチャーを追うお酒ライターが、アジアの新興国が塗り替える「Asia’s 50 Best Bars」の勢力図をリアルレポート! インドネシア・ジャカルタ編。

アジアで最も勢いがあるジャカルタ
インドネシアの首都であり、東南アジアでも有数の巨大都市であるジャカルタ。多文化、多民族が共存し、発展途上と最先端が同時に存在するようなダイナミックな街だ。
そんなジャカルタが、カクテルの世界ではアジアで最も勢いのある都市だと言うと意外に感じるかもしれない。だがここは、宗教的な制約がある一方で、いま若い世代がカクテル文化に目覚めつつあり、酒離れという言葉とは無縁の状況。ローカルの若者層がバーに押し寄せ、その新しい文化を享受している。
その勢いは数字にも表れており、Asia’s 50 best barsのランキングでは、ジャカルタは東京に並び、50位以内に4店舗がランクイン。その多くがこの3年以内にオープンしたお店であるということからも、街の勢いが伺える。
今回は「Asia’s 50 best bars」でランクインしたジャカルタの4軒をご紹介したい。
ジャカルタのカクテル文化を牽引する「セントレジス ジャカルタ」

ジャカルタのバーシーンを海外に広げる牽引力のひとつとなっているのは、「セントレジス ジャカルタ」の存在。Asia 50 best bars 2024の88位から、2025年には22位にランキングを上げ、存在感を示している。セントレジスのブランド力とネットワークをいかし、有名バーテンダーのゲストシフトも世界中から活動的に受け入れており、ジャカルタのバー文化の底上げをしている。
セントレジス ジャカルタは、ニューヨークで創業したセントレジスらしく、バーのコンセプトはニューヨークのジャズバー文化とインドネシアの感性を掛け合わせたもの。バーカウンターの上部にはトランペットを思わせるモチーフが下がり、また壁には、インドネシアの伝統的なワヤンの人形が現代の楽器を奏でる姿が描かれ、音楽を通じた伝統と革新の融合が表現される。現地のミュージシャンを招いた生ライブも定期的に開催しているが、その際はスタンディングのゲストも多くいるなど、ホテルバーとは思えないほどの賑やかな盛り上がりだ。

現在のカクテルメニュー「The New York-inspired Cocktails Vol.3」は、すべてジャズにまつわる人物や、場所、曲をモチーフとしたもの。「The First lady」はジン、ピーチバター、フルーティなグリーンティ、レモン、バニラで味わいのバランスをとったもの。イメージソースは エラ・フィッツジェラルドの曲から。デューク・エリントンのバラードがイメージソースの「IN A SENTIMENTAL MOOD」は真夜中の静寂を感じさせるような一杯だ。
ジャカルタの街に立つセントレジスならではのエキゾチックとエレガンスが混じったバー体験ができる。

ジャカルタの新世代を象徴する「Modern haus」

最新のAsia‘s 50 Best Bars のランキングで最上位の12位に位置するのが、「モダンハウス」。2024年オープンの新世代のバーだ。業界のもうひとつの有力ランキングTALES SPIRITED AWARDSでもアジア地域の「ベスト インターナショナル カクテル バー」にも選出されるなど、熱い注目を集めている。
ミッドセンチュリー調のインテリアや、ソファやローテーブルなどリビングルームのような内装の中で象徴的なのが、中央に設けられた対面式のカウンター。ここではバーテンダーも一緒に並び、テーブルを囲みながらカクテルを作る。バーテンダーとゲストの間に壁がなく、まるで知り合いの家に招かれたようなリラックス感と、クリエイティブなカクテルとのギャップが面白い。

メニューはRoots / Fruits / Leaves / Flowersと分かれており、ローカル食材を中心につかうもので、インドネシアの自然そのものを飲むような体験ができる場所だ。発酵、ローカル酒、ハーブを多用し、廃棄を減らすためのゼロウェイストの考え方が、若い世代のみならず、世界から注目をされている理由のひとつであろう。
現代のジャカルタを示すショーケース的な役割のバーと言える。
勢いのあるバーグループの新店舗「Cosmo pony」

シンガポールのバーグループ「Jiggar & Pony」の展開する新店として、オープン当初から注目を受けていた「Cosmo Pony」も、現在Asia‘s 50 Best Bars2025では38位と評価を受けている店舗だ。
グランドハイアットの中にあるという環境から、ホテルバーの上質さがあり、かつ都会のリビングルームのようなカジュアルさも共存。スタッフのホスピタリティは世界水準といえる。
「Jiggar&Pony」で築き上げたカクテルのクリエイション力は、ここでも発揮されている。カクテルは「Rising City」や「Cocktail Power」など都市やカクテルの力をテーマにしたもの。
テキーラやアガヴェスピリッツなど、世界的に人気のスピリッツを多く用いながら、ローカルフルーツを使い、わかりやすい美味しさの中にジャカルタらしさを忍ばせているのがポイントだ。

席でシェアできるパンチカクテルも多く揃うのも、席数の多い店舗ならでは。
シンガポールの「Jiggar&Pony」とは一味違う、エネルギー溢れる「Cosmo Pony」の魅力は、現地で感じてほしい。
地下駐車場に現れるシークレットバー「Carrots Bar」

一風変わったスピークイージースタイルで注目を集めているのが、地下駐車場の一角にある「Carrots bar」。ランキングでは34位と上々の評価を得ている。駐車場から繋がる扉をあけると、現れるのはネオンサインで照らされたポップなバー空間。中央の8席の大きなテーブルはゲストが向かい合うスタイルで着席し、初めてのゲスト同士の会話が自然に促される仕組みになっている。喫煙可が主流のジャカルタにおいて、非喫煙での営業をしているのも、この国の文化では先進的な取り組みだ。

カクテルは、インフュージョンや発酵を使った料理のようなアプローチ。インドネシアや中華系の要素も取り入れて、重層的に味と香りが重なるカクテルをクリエイトする。
スモークを使ったハイボールなど、見た目も面白いカクテルは会話のきっかけにもなるもの。ここのバーテンダーはコミュニケーターでもあり、ゲスト同士をうまく繋ぎ、人と人を出合わせる場所としてこの場を機能させている。
エネルギーと実験精神に溢れ、進化を続けるジャカルタのバーシーン。そのエネルギーは、これからのアジアのシーンを確実に揺り動かしていくだろう。

お酒ライター 児島麻理子
出版社、洋酒会社勤務を経て、酒にまつわる執筆やプロデュースを行い、酒の魅力を発信し続ける。2025年には酒に特化したPR会社TOASTを立ち上げた。年間に訪れる新規バーは100軒以上。世界中の蒸留所も巡っている。

