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2025.07.31

2025アジアのベストバー50発表。ランクインした日本のバーと後閑信吾の香港の最新バーとは

世界中のバーホッパーが注目する2025年版「アジアのベストバー50(Asia’s 50 Best Bars)」のアワードセレモニーが7月15日夜、マカオのIR「Wynn Palace」で華やかに開催された。アジアのベストバー(第1位)に輝いたのは香港の「Bar Leone」だった。

アジアベストバー1

世界が注目するバーアワード

名店と呼ばれるバーの入口で「50 BEST BARS」のプレートを見たことはないだろうか。これはバーテンダーやバージャーナリストなど有識者投票によるランキングを受賞したことを示すもので、このアワードは近年バー業界の動向にもっとも大きな影響を与えるといわれているものだ。

世界のバーを対象にした「THE WORLD’S 50 BEST BARS」と「NORTH AMERICA’S 50 BEST BARS」、「ASIA'S 50 BEST BARS」など地域でのバーを対象にしたものがあるが、マカオ「Wynn Palace」で開催されたセレモニーで、今年も「ASIA'S 50 BEST BARS 2025」が発表された。

「世界のランキングの後発で始まった“ASIA'S 50 BEST BARS”ですが、地域単位で行うことで、その地のバー界の結束感が強くなって、盛り上がりがすごい。ASIA’S BESTが始まったことで、逆にTHE WORD'S BESTがさらに注目され、影響力があるようなものになってきたと感じます」

こう語るのはバーテンダーであり、世界5ヵ国でバーを展開する後閑信吾氏だ。

後閑氏
香港「GOKAN」のバーチームと後閑信吾氏(中央)。

後閑氏が率いるSG Groupは、2016年にスタートした「ASIA'S 50 BEST BARS」に「Speak Low」(上海)をはじめとする店舗を初年度からランクインさせてきた。THE WORLDを含め、SG Groupが受賞した50 BEST BARSの数は56回。ひとつのバーグループとしては最多を誇る。

長年ランキングと関わってきた後閑氏は、近年のランクに対する変化を知るひとりだ。

「50 BEST BARSのランキングが以前に増して、影響力を持つようになってきたと感じています。ランクインするかで、国内外からの集客が変わってくるし、スタッフのモチベーションにも関わってくる。ビジネスに直接するので、バー経営者には重要な指標のひとつになっています」(後閑氏)

また、「ASIA'S 50 BEST BARS」では4年連続で日本最上位を意味する“THE BEST BAR IN JAPAN”を受賞する鹿山博康氏(Bar BenFiddich)はその影響力をこう語る。

「THE BEST BAR IN JAPANになると、そこを目指して訪れる海外のお客様がすごく増えるんです。東京にいいバーが多いなかで自分のバーが窓口になるという感覚はある意味プレッシャーですね」(鹿山氏)

「Bar BenFiddich」チームと鹿山博康氏(中央)。

アジア各地からのスターバーテンダーが一堂に会し、会場が熱気に包まれるなか、2025年のASIA'S 50 BEST BARSが発表された。20ヵ国からの選りすぐりが登場したランキングを振り返りたい。

THE WORLD’S 50 BEST BARSと比べ、アジア各都市のローカルバーが選出されやすいASIA'S 50 BEST BARSだが、2025年の傾向はより顕著だ。

リスト

シンガポールやバンコク、香港などのメジャーシティのみでなく、ネパールのカトマンズ、インドのバンガロール、スリランカのヒリケティヤなど、地方都市からも魅力的なバーのランクインがあり、またこの1年でオープンしたバーも20店舗がリストに入った。

50 BEST BARSの投票者は実際にこの一年で訪れたバーを対象に投票を行うことから、この結果はコロナ禍を経て、バーラバーが世界を旅していることが感じられるものでもあり、また場所に関係なく意欲的なバーを増えているということの表れであろう。

2025年、1位を獲得したのは2024年から2年連続の受賞となる「Bar Leone」(香港)。イタリア人バーテンダーのロレンツォ・アンティノーリ氏が共同オーナーを務め、ローマの街中にあるようなバールの雰囲気を香港の街中に出現させているエキゾチックさが魅力だ。

2年連続での1位を獲得した「Bar Leone」(香港)。

看板メニューであるネグローニをはじめとするシンプルながらモダンなツイストを効かせたカクテル、フレンドリーかつ行き届いた接客、イタリアらしいチャーミングさやユーモア、そして名物のパニーニをはじめとする充実したフードメニューがあり、毎日でも通いたくなる“ネイバーフットバー”で、1位としての貫禄は十分だ。

また業界アイコンである人物を表彰する「ROKU INDUSTRY ICON AWARD」には香港で人気のバー「COA」の共同創業者で同店のヘッドミクソロジストであるジェイ・カーン氏が選出された。「COA」は近年人気が高まっているテキーラをはじめとするアガベスピリッツにフォーカスしたバーで、本人のアガベ文化への知識やメキシコの蒸留所との繋がりやバーでの表現力が評価され、受賞に至った。

そしてバーテンダー注目の「ALTOS BARTENDERS’ BARTENDER AWARD」には、「Hope & Sesami」のアンドリュー・ホー氏(中国)が選出。香港で生まれ、広州で成功を収めているアンドリュー氏は、中国本土のドリンクシーンを高みに導く存在として注目されている。

バーに関わる人物からバーを深掘りしていくというのも、バーの魅力を探求するのに興味深い方法なので、ぜひ人物にも注目して見てほしい。

日本からは6店舗、後閑氏の香港の新店もランクイン

バー文化の成熟度に加え、海外志向のバーテンダーが増えたことで、ランクインが増えてきた日本。海外のカクテルコンペティションでの優勝などをきっかけに、海外バーテンダーとの交流をする世代が現れたことで、意識的にランクインを目指すバーも多くなってきた。

今年は50位以内に日本からは、「BAR BenFiddich」(9位/東京)、「VIRTÙ」(18位/東京)、「Yakoboku」(25位/熊本)、「Punch Room Tokyo」(36位/東京)、「LAMP BAR」(46位/奈良)、「Bar LIBRE」(49位/東京)の6店舗が選出された。また前述の後閑氏の「GOKAN」(香港)は33位にランクイン。

ここでは、初登場となった4つのバーをピックアップしたい。

GOKAN
オープンから1年でランクインした「GOKAN」(香港)。

世界で名前が知られる後閑信吾氏がプロデュースするのが、2024年のオープンの「GOKAN」(香港)だ。“アイスハウスストリート”と呼ばれる氷屋があった通りに立ち、まさに氷倉庫だった場所を改装して作られたことから、テーマとなるのは“氷”。

世界から注目されるジャパニーズバーテンディングにこだわったバーで、美しいバー技術から生まれる繊細なカクテル、そして後閑さんらしいユニークで発想力豊かなカクテルが味わえる。

そして、日本の五味、五法から発想した調理法から造られる豊富なフードがあるのも特徴だ。香港での唯一無二の飲食体験をしてほしい。

熊本バー
熊本県からの初のランクインになった「夜香木」。

25位に選出された「夜香木」(熊本)は、世界最大のカクテルコンペティション「ディアジオワールドクラス2021」の日本代表となった木場進哉氏がオーナーを務めるバー。

地方都市でありながら、このバーを目指して世界からバーラバーが集まる場所として注目されていたが、今回のランクインでより世界に知られることになるだろう。シグネチャーカクテルである「夜香木」はジャスミンを使った香り高い一杯。このカクテルのために、熊本まで足を運ぶ価値のあるバーだ。

世界で展開する「Punch Room」は東京が初のランクイン。

「Punch Room Tokyo」(東京)は、東京エディション銀座にある“パンチカクテル”をテーマとしたバー。世界のエディションホテルに「Punch Room」が存在するが、50 BEST BARSの受賞は初めて。

パンチカクテルとは、スピリッツ、スパイス、柑橘類、ティー、シュガーの5つの素材で作られる世界最古のカクテルと言われるものだが、「Punch Room Tokyo」はそれをモダンに表現。“日本のスパイスと居酒屋”、“日本の甘味とカフェ”など、テーマごとのパンチカクテルはメニューをみるだけでも楽しく、好奇心が刺激される。

都内3ヵ所で展開する清崎氏のバーは、池袋「Bar LIBRE」がランクイン。

「Bar LIBRE」(東京)は、「ヘネシーミクソロジーコンペティション2015」世界大会優勝など、数々の受賞歴があり、現在バースクールも運営する清崎雄二郎氏によるカクテルバー。2025年でオープン14年目となる「Bar LIBRE」は念願のランクイン。技法にこだわったミクソロジーカクテルを創造しており、日本の陶芸家による器での提供や、チーズや鮨とのカクテルペアリングを行うなど、クラシックを大切にしながらも、新しさを取り込み、カクテル文化の発信に尽力している。

全体のランキングは公式サイトより確認できる。

ベストバーのランキングには、各地の魅力的なバーが掲載されているので、これを機にアジア各国のバーを巡ってみてはいかがだろうか。

TEXT=児島麻理子

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