断言しよう。今、自分のレストランリストに入れておくべきはカウンターの店だ。なかでもクリエイティヴなカクテルを提供するバーは絶対に行きつけにしておきたい。通えば通うほどパワーチャージできる、唯一無二のカクテルバーから、今回は新宿の「BAR BENFIDDICH(バー ベンフィディック)」を紹介する。
自家農園の植物や果実を調合した唯一無二のカクテル
天井から吊り下がるフウセンカズラやニガヨモギの枝。壁に挟まる木の皮からは、謎のココナッツの香りが漂う。扉を開けた瞬間から唯一無二の世界観を見せてくれるのが『ベンフィディック』だ。その独自性が評価され、著名なバーの世界ランキング「Best Bars 50」の常連であり、オーナーの鹿山博康氏は「酒類業界に影響を与えた世界の100人」に選出されるなど、海外のバーファンからも注目を集める名バーだ。
その影響はバー業界にとどまらない。「世界ベストレストラン50」で世界一に輝いたデンマークのレストラン「noma」のシェフが来日時に連日訪れていたことからも、その味覚体験が特別なものだったことがわかる。
世界からのゲストが『ベンフィディック』での一杯を求めて集まる理由。それは鹿山氏自らが育てた植物や果実を調合して作る唯一無二のカクテルを味わいたいため。
自らを“ファーマー(農家)バーテンダー”と名乗る鹿山氏は、地元である埼玉県比企郡に畑を持つ。畑で育てるのは、ニガヨモギやジュニパーベリー、アニスやフェンネルなど、自生するものも含めて40種以上。“farm to glass(農場からグラスへ)”をコンセプトに、農園で採取した植物でカクテルを作る。畑の季節ごとの香りを表現したジンのカクテル「The Forest」は、店のシグネチャーカクテルのひとつだ。
時に古書を読み解きながら、アブサンなどリキュールの調合も自ら行う。江戸時代に使われた薬研でスパイスを砕いたり、素焼きの壺でネグローニを熟成させたり、農場の土で作った土器でカクテルを出したりと、その様はカウンターというステージ上で奇術を披露するかのよう。
そんな鹿山氏のもうひとつの顔はスピリッツハンターの一面。各国のバーからゲストバーテンダーとして招聘される鹿山氏は、この取材当日もインドネシアから帰国したばかり。現地で交渉し、入手したローカルのお酒やスパイスは、鹿山氏の手を通してモダンなカクテルとして供される。
「現地で美味しかったのに、日本に持ち帰ると美味しくないというものもあったりするんですよ。でも、美味しいかどうかでなくて、体験する価値とか、ロマンみたいなものがお酒にはありますよね」と鹿山氏。
カウンターは新しい世界の発見を共有したい店主とゲストで今日も溢れている。
バー ベンフィディック/BAR BENFIDDICH
住所:東京都新宿区西新宿1-13-7 大和家ビル9F
TEL:03-6258-0309
営業時間:月〜土曜18:00〜翌1:00
定休日:日曜、祝日
座席数:14席
料金:カクテル ¥1,600〜、チャージ料なし、サービス料10%