放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を2025年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

「32歳の企画職です。大きなミスをして、上司やチームの信頼を失ってしまいました。今後、信頼を取り戻していくには何をすべきでしょうか?」という相談をいただきました。
分かります。信頼を失ってしまうと、何をどうしたらいいのか? 身体がフリーズしてしまいますよね。
- ▼ミスを帳消しにする行動か? コツコツ挽回するか?
- ▼申し訳なさげに振舞うか? これまで通りでいくか?
- ▼仕事量を増やすか? 再発防止のために減らすか?
――などなど、困難な問いで頭がいっぱいになる方も多いのではないでしょうか?
僕の周りにいる芸人さんも、「おもしろい人」であるがゆえに、大切な現場に遅刻したり、天然ボケ級のミスをやらかしたり、「口は禍のもと」を地でいったりと、信頼を失くしてしまうことが多々あります。
しかし、彼らは、信頼を失くしがちな性分がゆえに、信頼を取り戻すリカバリー力が高い人たちだったりもします。
一体、どんなコツがあるのか? 今回は、僕が日ごろ芸人の卵たちに伝えているメソッドも踏まえて、「失った信頼を取り戻す芸人ハック」をシェアしていきたいと思います。
信頼を取り戻すキーワードは「ちょっとだけ」
私たちビジネスパーソンは、ミスによって信頼を失ったとき、ミスを挽回するために「ハリキリ」がちです。
マイナスを取り戻そうと、いつもの何倍も手足を動かしたり、発言したり、愛想よくしたり、パフォーマンスによって挽回しようとします。
きっと皆さんは、「芸人もそうだろう」と思われるでしょう。
ですが、普段から明るく、口数が多く、リアクションがデカい芸人さんは、この「ハリキリ」を選択しない人が多いのです。
約1万人の芸人さんを観察してきた僕は、売れていく人ほど、信頼を取り戻すために“相手の期待をちょっとだけ超える行動を続ける”ことに気づきました。
例えば――
- ▼大切な現場に遅刻した→次からは、集合時間のちょっとだけ早く来る。それを続ける。
- ▼授業中にやらかして叱られた→次からは、一列前に座って授業を受ける。それを続ける。
- ▼お酒の席で先輩に失礼をした→次からは、焼酎でなくサワーにする。それを続ける。
仕事場における「信頼」は、つねに“相手の「期待=こうであってほしい」を、ちょっとだけ超えること。それを続けることで獲得できるもの”です。
この「ちょっとだけ超える」は、起死回生のパフォーマンスよりも修復力があり、「誰もが再現可能」でもあります。
メールをちょっとだけ早く返す、企画案を1つだけ増やす、声を1トーンだけ明るくしてみるなど、ハードルを上げずに、上司やチームの期待を“ちょっとだけ裏切っていく”感覚で、しばらく継続してみてください。
信頼を取り戻すには「こちらも信頼する」
10代~20代の若手と膝を突き合わせていると、信頼を失ったとき、「もう終わりだ」「もういいや」と、自分で終了ボタンを押してしまうケースが多いなと感じます。
なので僕は、芸人の卵たちに「トークのメカニズム」を例に出して、こんな話をしています。
「大勢を魅了する、話し上手な人ってどんな人だろう? より多くの人に注目される人は、より多くの人の目を見て話せる人なんだ。人間は、目を向けてくれない人には、目を向けようとしないからね」
生徒たちから納得を得たあとで、こう続けます。
「信頼も同じだよね。相方にしろ、プロデューサーにしろ、相手に信頼されたいと思ったら、こちらが相手の知性を信頼してみないとね」と。
私たちが、信頼を取り戻していくときの障壁は、「自分の心持ち」でもあります。
「元には戻れないかもしれない」「見放されたに違いない」といった感情が駆動し、自らチームや上司との溝を深くしてしまうことがあるのです。
しかし、こちらから目を合わせなければ、注目してもらえないトークの構造と同じで、こちらが上司の知性を信頼し、「きっと理解されるはず」という心持ちにならなければ、信頼を寄せられることもないのです。
何をすべきか分からず、身体がフリーズしてしまったときこそ、「ちょっとだけ」と「こちらから信頼」、この2つのキーワードを思い出してみてください。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
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