大人になって何かにハマったり、何かを習うことは、刺激的で日常を鮮やかに彩るもの。もしかしたら生き方がガラッと変わるかもしれない! これから始めたい趣味、嗜みを、その道のプロから最上&最新の品とともに教わる。今回は「ハードリカー」を学ぶ。 【特集 人生を変える最強レッスン】
料理人やバーテンダーが世界のローカル酒に注目
酒類業界歴17年を超え、洋酒から和酒まで精通する児島麻理子氏。食後酒と捉えられがちな蒸留酒、ハードリカーだが、食中酒として楽しむ文化もあって、それを知ると「ガストロノミーのシーンがより味わい深いものになる」と言う。
食事に合う蒸留酒の特徴は、原材料由来の風味を残した酒であること。樽の風味が強いウイスキーや、ボタニカルで風味を強調させるジン、複数回の蒸留でクリアな味わいのウォッカと比べ、蒸留する材料自体の自然な風味があることが、食事との合わせやすさにつながってくる。
「国よっては蒸留酒で食を楽しむ文化がもともとありますが、世界の食のトレンドが混ざり合う時代になったことで、そうしたお酒が地域を超えて楽しまれるようになってきました」
例えば、ガストロノミーとしてのペルー料理の台頭で、世界的な認知を得たのが、葡萄の蒸留酒であるピスコ。
「特に卵白とライムジュースを加えた『ピスコサワー』は、葡萄がベースであることの味への親しみもあり、欧米のダイニングシーンでオンリストされるカクテルとなっています」
また、メキシコのローカル主であるテキーラやメスカルも勢いは止まらない。
「西海岸のセレブ層を中心にプレミアムテキーラに火がつき、アカデミー賞の乾杯がプレミアムテキーラになるほど一般的な存在です。今ではメキシコ料理のみならず、ファインダイニングにはテキーラが欠かせない存在となってます」
そして、最も身近な伝統的蒸留酒である日本の本格焼酎も存在感が増していると言う。
「麹由来の独特な風味がある本格焼酎は今、その価値が見直されています。海外では新たなタイプの蒸留酒として、日本でもバーテンダーや料理人から注目を集め、高級業態での本格焼酎提供のシーンも増えています」
古くて新しい蒸留酒と食の組み合わせ。食に合う蒸留酒を活用することで、食のシーンはより豊かになるはずだ。
1.ピスコ|味わいがなじみ深い葡萄の蒸留酒
葡萄を原料にした蒸留酒。フルーティでクセがない味わいで、食中酒としての支持を得ている。原産国であるペルーとチリでは定義が分かれ、ペルーは単式蒸留で樽熟成を行わないが、チリでは連続式蒸留や樽熟成も行うなど、つくられる風味は異なる。いずれも葡萄の香気成分を存分に生かした味わいが特徴だ。
“ピスコ×食”が楽しめる店 ▶︎ Sophie at EDITION
「ソフィー アット エディション」は、伝統的なブラッスリーに日本食材を加え、多様な食体験を提供するレストラン。ブラッスリーならではのシェアスタイルで提供する。料理に合わせる選択肢として、ピスコをはじめ、グラッパやべルモットなど、葡萄由来の蒸留酒のカクテルを豊富に揃える。
2.テキーラ|良質なアガベ由来の甘みと香りが特徴
プレミアムのカテゴリーが確立されたことで、合わせる料理が世界のファインダイニングに広がったテキーラ。原材料は、中南米に分布する多肉植物のアガベ(リュウゼツラン)。5~8年かかり栽培したものを、加熱、搾汁したあとに蒸留。良質なテキーラは、大地の恵みが凝縮された甘さと香りが高く、余韻が長く続く。
“テキーラ×食”が楽しめる店 ▶︎ 宇田津鮨
中目黒の路地裏に佇む人気鮨店。アートが飾られるモダンな店内で、江戸前鮨をベースにした個性ある鮨を表現。2024年8月には香港、9月にLAでの出店を予定している。国際派の鮨店らしく、テキーラは熟成年数別に5つのタイプが揃う。
3.焼酎|麹と原材料が香る日本古来の蒸留酒
日本で伝統的に飲まれてきた本格焼酎。麹を使った発酵や、1回蒸留による芋・麦・米などの原材料の香りを生かしたつくりなど、そもそも食事と合わせるために誕生した蒸留酒だ。本格焼酎の進化で生まれたさまざまな香りを生かし、これまでの日本料理に限らない多彩なダイニングシーンで本格焼酎が広がっている。
“焼酎×食”が楽しめる店 ▶︎ The SG Tavern
SG Groupが丸の内に出したレストンバー「The SGタバーン」。幕末期に日本の未来を切り開くべく英国を目指した“薩摩スチューデント”。その旅路から創造を広げた料理とカクテルを展開する。バックバーには薩摩焼酎を中心とした本格焼酎が揃い、本格焼酎ベースのカクテルと各国料理を楽しめる。
この記事はGOETHE 2024年10月号「総力特集:人生を変える最強レッスン」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら