日々、海外からのゲストを相手にするお酒のプロが“今飲みたい”国産蒸留酒を厳選して紹介。【特集 ニッポンのSAKE】
増え続ける国産スピリッツ&リキュール市場
クラフトビール同様、クラフトスピリッツ(蒸留酒)やクラフトリキュールにも酒税法上の厳密な定義は存在しない。一般的に、小規模で職人的、原材料や製法へのこだわりを追求した商品や、つくり手を指す場合が多いと言えるだろう。
「2010年代後半からジャパニーズウイスキーブームに追随する形で、国産のスピリッツやリキュール類が出現し始めました。ウイスキーはどうしても熟成期間が必要になりますが、スピリッツやリキュールは蒸留・浸漬(しんし)後にすぐ商品化できるのがメリットです」と話すのは、お酒を扱う立場からお薦めの銘柄を厳選してくれた片岡昌弘氏。
特に製法上の自由度が高く、個性や地域性を反映しやすいクラフトジンは、日本のみならず、世界的にブームを巻き起こしている。
また、ジンから派生したプロダクトも数多い。日本の蒸留文化をリードしてきた焼酎蔵や泡盛蔵が手がけるケースもあれば、好きが高じて個人で蒸留所や酒造所を立ちあげるケースもある。人気銘柄はなかなか市場に出回らないほどだ。
「我々でも追いつけないくらいの勢いで増え続けています。ギフトなど、お酒選びに迷ったら、当店にお越しいただき、我々スタッフにご相談ください」
1.沖縄・那覇|瑞穂酒造「THE OKINAWA ISLANDS RUM」
黒糖伝来400周年を祝す沖縄ラム
黒糖の製糖工場がある、沖縄の離島8島(粟国島、伊江島、伊平屋島、西表島、小浜島、多良間島、波照間島、与那国島)の黒糖からつくったラムをブレンドした贅沢な1本。発酵には自社のサトウキビ畑からの分離に成功したONERUM酵母を使用するなど、随所にクラフトラムらしいこだわりが光る。
2.新潟・上越|越後薬草蒸留所「YASO SPIRITS LEMON」
国産無農薬レモンをまるごと!
健康をテーマに野草酵素の研究を40年以上重ねてきた越後薬草が手がけるレモンスピリッツ。80種類の野草類に、国産無農薬レモン、マーガオ、リコリス、タイムを加えた計84種類のボタニカルを使用している。「レモン本来の果実味や甘さが際立ち、これでレモンサワーをつくったら最高!」
3.岩手・二戸|南部美人「南部美人クラフトウォッカ」
岩手の酒米と白樺が生むピュアな味
海外でも人気の高い日本酒「南部美人」の蔵元が、コロナ禍に開発・リリースした新機軸のウォッカ。言うまでもなく、原料は米。また岩手県久慈市平庭高原の白樺による活性炭で濾過することで、驚くほど透明感のある味わいに。「お米のふくよかな甘味があるので、ロックでもイケます」
4.北海道・ニセコ|ニセコ蒸留所「ohoro GIN JAPANESE PEPPERMINT」
ニホンハッカの清涼感たっぷり!
日本酒「八海山」で有名な八海醸造が2021年に開業した蒸溜所による、数量限定のジン。メインボタニカルは地元ニセコ産のニホンハッカ。清涼感たっぷりの抜けるような飲み心地は、思わずクセになるほど。「定番のジントニックよりも、ニホンハッカの個性を楽しむなら流行りのジンソーダで」
5.岐阜・八幡|辰巳蒸留所「Alchemiae First Essence 6th Anniversary」
生産本数934本、ジン好き垂涎(すいぜん)の1本
日本のクラフトジンの草分け的存在として2017年に開業した辰巳蒸留所の6周年記念ボトル。吟香露(ぎんこうろ) 、グラッパをはじめとする7種類のベーススピリッツと、ジュニパーベリー、桃、国産烏龍茶、山椒など72種類のボタニカルを使用し、ハーバル&フローラルなエッセンスが複雑かつ重層的に響き合う。
6.千葉・大多喜|mitosaya薬草園蒸留所「113 LOOT ROOT」
ゴボウを使用した日本版スーズ
ゲンチアナの根を原料にしたフランス産のリキュール、スーズをイメージして開発された意欲作。主原料として選んだのは、日本の根菜、ゴボウ。北海道産の有機ゴボウとmitosaya薬草園蒸留所で収穫したテンダイウヤクやヤブカンゾウ、さらにはウコンを使用し、大地を感じさせる滋味深い味わいに。
7.千葉・市川|JCCエージェント「The Japanese Liqueur YUZUKOSHO」
ハイボールのための純国産リキュール
バーテンダーであり、酒造家でもある山﨑勇貴氏が、オーガニックの国産原材料のみでつくり上げた柚子胡椒リキュール。柚子のなかでも特に香り高いとされる徳島産の木頭柚子と国産唐辛子を使用し、柚子胡椒の爽やかな辛味をリキュールで完全再現。ソーダで割るだけで、ピリ辛ハイボールが完成。
8.沖縄・那覇|瑞穂酒造「KOKUTO DE LEQUIO」
オール沖縄産の黒糖リキュール
東京、上海、NY、沖縄でバーを展開するSG Groupファウンダーの後閑信吾氏が、泡盛の老舗蔵である瑞穂酒造と共同開発した、泡盛と黒糖と黒糖ラムを原料とした世界初のリキュール。「まるでシェリーのペドロヒメネスのような深いコクと甘みがあり、牛乳やコーヒーで割るだけでも美味しい」
9.北海道・積丹|積丹スピリット「BOUQUET LIQUEUR
HAMANASU」
ハマナス香るフローラルリキュール
積丹半島の専用ボタニカルガーデンで約100種類の植物を栽培する蒸留所、積丹スピリット。そこで育てられた花をテーマにしたブレンデッドジンBOUQUETに、さらにバラ科のハマナスやハイビスカスの酸味を加えた深紅のリキュールは、華やかな香りのなかに、海のニュアンスも感じさせる。
10.神奈川・相模原|伊勢屋酒造「SCARLET Aperitivo」
すべて手づくりの日本版アマーロ
アマーロとはイタリア語で「苦い」を意味し、苦味を帯びた薬草系リキュールの総称。「スカーレット」は元バーテンダーの元永達也氏が相模湖近くの古民家と畑を借り受け、畑仕事から仕込み、瓶詰めまでを行う日本版手づくりのアマーロ。1800年代の伝統アマーロのレシピを参考にしている。
11.鹿児島・指宿|大山甚七商店「ACOU CASSIS 2021」
この1本で最強のカシスウーロンを
和甕(わがめ)を使った芋焼酎で知られる老舗焼酎蔵が、オーガニック糖蜜と鹿児島産黒糖でつくったホワイトラムに、青森産「あおもりカシス」を漬けこんで仕上げた純国産カシスリキュール。カシスの抽出期間は2年4ヵ月。「果実味とスパイス感、バルサミコのようなニュアンスまで感じられます」
12.【番外編】 熊本・あさぎり|堤酒造「極上 堤」
球磨焼酎のシングルカスク
熊本県球磨産の米焼酎をシェリー樽で長期熟成させ、いっさいブレンドせずに、ひとつの樽から汲みだした原酒をそのまま瓶詰めした逸品。米焼酎にもかかわらず、樽由来の琥珀色に染まり、芳醇な香りと豊かなコクを纏う。酒税法上、本格焼酎には色の規制があるためリキュール扱いとなる。ボトルに記されるのは貯蔵樽のナンバー。ひと樽数百本限定。「米焼酎の概念を超えたダークラムのような豊潤さです」
この記事はGOETHE 2024年1月号「総力特集: ニッポンのSAKE」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら