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2025.07.07

年間300企画を生む放送作家の情報収集メソッド──ビジネスにも活きる発想術

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

NSC人気講師・桝本壮志

「企画がなかなか通らず、自信を無くしています。上司には『もっと新視点を持て』『アイデアがありきたりだ』と言われるのですが、放送作家さんは、どのように情報収集をして企画にしているのでしょうか?」という相談をいただきました。

ビジネスパーソンにとって「アイデアを捻る」は、「呼吸をする」くらい重要な生命活動。社会動向やトレンド情報を吸い込み、企画に変換して、吐き出し続けなければなりません。

でも、うまく情報を取り入れられないと酸欠になるし、アウトプットに追われると過呼吸になってしまいますよね?

そこで今回は、年間300以上の新企画を提案している僕が実践している、「良質なアイデアを生む情報のインプット法」をシェアしていきたいと思います。

情報は「掃除機&ドライヤー」のようなもの

最近の若手クリエーターたちは、「企画の種はすべてネットにある」と考え、昼夜スマホをさわり、情報の洪水をうけています。

大量の情報を吸引する体力はすごいと思いますが、「吸い込んでばかり」の人が多いので、僕は彼らに「まず、自分をそうさせている情報を疑ってみよう」と投げかけています。

ダイソンは掃除機で有名ですが、ドライヤーも高品質。これは「吸い込む力」だけでなく「吐き出す力」の両方が優れているから世界的メーカーになれたということ。

アイデアも同じで、漫然とネットの情報を吸い込むだけではアウトプット力はつきません。

情報は“正しく入力しないと、正しく出力されない”ということを知らなければいけないのです。

日ごろ生徒たちに伝えているのは、情報源をネットに偏らせず、読書、テレビ、対人などで“調和をとる”こと。つまり「中庸」の大切さです。

ピンとこない方は、「情報」を「人間」に置き換えて考えてみましょう。

一人だけと親密にしていると、その人の考えに染まったり、思考が偏ったり、洗脳されてしまうこともある。それと同じ。

ビジネスの肝は、「多くの人が欲しているもの」を捉え、企画化していくことなので、様々なツールや人種にふれて、世間のニーズを感知していくことが大切なんですね。

では、どうすれば情報の調和がとれるのでしょう?

僕が日ごろ意識しているのは、“浅く、広く、時に深く”という感覚です。

例えばネットニュースなら、洪水のように流れてくる情報を「ライト(浅く)に閲覧」し、AIがおすすめしてくるニュースでなく、さほど興味のない分野やカテゴリーのニュースを「自分からキャッチ(広く)」しにいく。

そして、企画につながりそうなものが目に入った時だけ「掘り下げて読んでみる(時に深く)」といった塩梅です。

では、僕が実践している具体的なインプット法をさらにシェアしていきましょう。

「好き」を「情報化」したら出力が変わる

放送作家は「企画屋」なので、とにかく時事とトレンドに強くないと食べていけません。

しかし、前述したように、1つの媒体だけでニュースを見ると情報弱者になるので、僕は毎日、ネット、YouTubeの情報に目を通すだけでなく、報道番組、ワイドショーも録画して見ています。

これは、多くの放送作家がやっていることですが、僕はそれに加えて、「自分が好きなものを情報化する」ことで企画力をつけてきました。

例えば、僕は映画鑑賞と読書が好きなのですが、週末に味わう映画と読書は「娯楽」、平日の夜に味わうものは「情報」と“感情の棲み分け”をして接しているんです。 

平日は、「ネットフリックス終了カレンダー」というサイトにまとめてある「配信終了予定」の作品を、終わるものから順番に鑑賞したり、本屋で普段はまったく読まないジャンルの本をあえて購入したりしています。

これを5年続けてみると、それまで思いつかなかったコントやドラマの設定を思いつくようになったり、それまで書けなかったビジネス書の書評連載(月刊誌『GOETHE』)が可能になったりと、日々のインプットが緩やかながら着実に受肉し、使える筋肉になっていたことを実感しました。

「好きなもの」は、抵抗感なく始めることができるので、まずは1週間の1日を「情報化」してみてはいかがでしょうか?

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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