2025年、製薬企業との利益相反の医師が多い日本高血圧学会が血圧の治療目標値を“年齢に関係なく”「130/80mmHg未満」に下げると発表した。これにより高血圧との診断を受け、薬を飲む人の激増が予想される。本当にそれでいいのか。“医学常識のウソ”に鋭く切りこんだすべての国民必読の対談、6回目。【他の記事はコチラ】

ご飯を少なく、おかずは多めに
和田 糖尿病は今、2型がほとんどですよね。
大櫛 はい。95%くらいが2型で、1型糖尿病はごくわずか。
和田 なのに1型と2型で同じ治療をしている。僕はこれ、おかしいと思うんです。1型はインスリンが出なくなる病気ですから、インスリンを足さないといけない。
大櫛 そうです。基礎インスリンは絶対いりますからね。
和田 だけど2型はインスリンのレセプターが壊れていて、基礎インスリンはあるけど追加分泌がされないとか、分泌されてもあまり効果がない状態です。この2型に対して、1型と同じようにインスリンを足していくと、どんどんインスリンが増えてしまう。なのに足し続ける。これおかしいでしょ。
大櫛 おっしゃる通りです。それなら追加分泌がいらない生活をすればいい。ということで糖質制限食がお勧めなんです。
和田 論理的ですよね。
大櫛 ケトン体生成食はアメリカが発祥なんですが、彼らは突き詰めて考えますからね。糖質を1回ゼロにしてみようとやってみた。そしたらケトンが出てきて燃えてるとわかった。ケイヒル教授の理論が実証されたんです。そこで、ケトジェニックダイエットという形で定着するようになった。
和田 なるほど。僕はそのケトジェニックを意識したつもりはないんだけど、実際の食事では主食は少なくて、おかずがすごい多いんです。
大櫛 いいですね。
和田 カロリー的には、脂肪は1グラム当たり9カロリーだから、僕の食事はカロリーが結構多いことになる。糖質は少量しか食べないからカロリー的には少ない。とはいえ、摂取カロリーは欧米人並みに多いと思うんですよ。3000kcalくらいかな。そんなに多くて本当に大丈夫なんですか。
大櫛 大丈夫です。

肉はいくら食べてもいい
大櫛 いろいろ実験しましてね。例えば焼肉をガンガン食べる。でも最後に締めのご飯とか麺とかさえ食べなければ大丈夫です。
和田 糖質さえ摂らなければ肉はいくら食べてもいい?
大櫛 はい。締めに糖質を食べるとインスリンが出てくる。すると血液中にたまっていた脂肪が一気に脂肪細胞の中に入っちゃうんですね。ところが締めの糖質をやめれば、余った脂肪はうんちになって出ていく。便通もよくなりますよ。
和田 肉だけですか?
大櫛 いえ。別にバターでも脂肪系のものでも大丈夫です。カロリーは多いけど、全部吸収されるわけではない。余分な脂肪は排泄されるんです。
コレステロールもどんどん摂っていい
和田 コレステロールはいかがですか。肝臓で8割くらい合成するでしょ。食品から摂るのは2割くらいです。
大櫛 その通りです。食事から摂らないと肝臓が頑張って作らなきゃならない。逆に食品でコレステロールをたくさん取れば、肝臓は休まるわけですよ。だから酒のツマミは、高コレステロールのものが多いんです。
和田 アルコールを分解するのに肝臓に負担がかかるから、せめて高コレステロールのものを食べて負担を減らす。酒飲みにはうれしい仕組みです(笑)。
大櫛 人類が経験を重ねるうちにそうなったんでしょうね。
和田 時代と共に変わりますからね。食べ方も少し前までは野菜から先に食べるベジファーストが推奨されていました。ところが最近は糖尿病の先生が「最初に肉から食べましょう」とテレビで言ってました。
大櫛 よく勉強されている医師ですね。たいていの医師はまだ肉はカロリーやコレステロールが多いから減らせと言っていますからね。
間違いを修正するアメリカ。間違いを認めない日本
和田 日本の医学界は旧態依然というか、考え方を改めようとしない。そこが日本の医療の悪い部分だと思っていまして。
大櫛 同感です。例えばかつてアメリカでは、カロリーの多い食事が糖尿病を引き起こすと医学の教科書にずっと出ていたんです。しかし2004年に修正した。そうやって間違いを正すところは偉いと思いますね。
和田 コレステロールもそうですよね。長い間コレステロールをダメだと言っていたのに、結局コレステロールが高めの人のほうが長生きしてる。それがわかったらあっさりと修正しましたからね。
大櫛 2015年にはアメリカの食事摂取ガイドラインがガラッと変わりましたよね。コレステロールは減らさなくていい、中性脂肪も減らさなくていいということになりました。
和田 医学の進歩って、本来そういうもんでしょ。だけど日本の医者って本当に変えないから。先輩に対する敬意や忖度とかもあるんだろうけど。
大櫛 利益相反。既得権益ですよ。政治の世界と一緒です。
和田 変えていくには統計学がすごく大事だと僕は思っていましてね。数字は嘘を言いませんから。
大櫛 データに基づく解析で間違いが分かったら、改革をやってみたらいいんですよ。それでも間違いと分かれば、また変えればいいんです。
正しいものは省かれる。でも正しいと主張し続ける
和田 僕は状況を変えるためにいろいろ本を出したり、幸齢党という政党をつくって活動したりしていますが、なかなか壁は厚い(笑)。
大櫛 私も何千人も集まるような臨床学会のシンポジウムでひな壇に乗って、貴学会のガイドラインは統計的解析の結果と異なっていると議論をやるんですよ。すると次はもう呼んでくれない(笑)。
和田 自分たちに都合の悪いことは封印されてしまう。
大櫛 マスコミに出てしゃべるでしょ。最初はちやほやしてくれますがスポンサーが言うわけです。「あいつを呼ぶな」と。
和田 テレビ局のスポンサーは薬屋さんが多いですからね。僕もテレビには呼ばれますが、自分が正しいと思う意見を言うと呼ばれなくなる(笑)。だから本を出すんです。
大櫛 私は医者向けの講演を多くやっていますよ。医者の中にもやっぱりボスの言うのはおかしいんじゃないかと気づいて小さな研究会をつくっている人たちがいるんです。そういう人たちから講演に来てほしいと。
和田 大学の若い医師は研究費を稼がないと生き残れないからボスの顔色を見る。
大櫛 学会を取り仕切るような教授と違う研究をしたり、結果的に批判につながる研究テーマを出すと研究費がつかない。そう言う私もね、実は大学医学部では研究費を稼いでいたほうなんです。だけど最後の5年間は研究費はいらないと断った。その代わり好きなこと言わせてもらって、今に至る(笑)。
和田 だから難しいですよね。批判するのも。
大櫛 本当にそう思いますね。でも20年前くらいかな。お菓子業界で講演を頼まれたことがあるんです。糖質制限とは真逆の業界だから大丈夫かなと思ったけど話をした。少し経ってから「糖質オフのお菓子を作りましょう。これからは絶対必要です」と相談を受けまして。センスのある経営者はいるんですね。糖質オフのビールもそうですけど。早々にそれをやった会社は伸びています。
和田 やっぱり言い続けることでしょうね。僕も今日は改めてそう思いました。ありがとうございます。
大櫛 私こそ話す機会をいただいてありがとうございます。

東海大学名誉教授・大櫛医学情報研究所所長。1947年徳島市生まれ。大阪大学大学院工学研究科修了。大阪府立の複数病院で研究をした後、1988年より東海大学医学部教授。2012年より現職。著書に『高血圧の9割は正常です』『長生きしたければ高血圧のウソに気づきなさい』『「血圧147」で薬は飲むな』など著書多数。
和田秀樹/Hideki Wada(右)
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。当対談連載をまとめた『80歳の壁を超えた人たち』をはじめ、『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

