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2024.12.07

「毎日腹筋200回」80歳・草野仁はなぜ、元気なのか?【精神科医・和田秀樹が分析】

アーハハッと元気な草野仁さんの笑い声に、撮影現場の全員が思わず笑顔に。お茶の間で愛され続ける“太陽のようなパワー”はどこから生まれるのか。東大の先輩・草野氏と後輩・和田秀樹氏が“人間のエネルギー”に迫る。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。1回目。

笑顔の草野仁氏と和田秀樹氏

トレーニングを地道に続ける

和田 草野さんは知的な司会者の一方でマッチョのイメージがあります。こうして間近で対面してもスーツの上から筋骨隆々なのがわかります(笑)。

草野 いやいや(笑)。もうだいぶね。トレーニングも軽めにしていますから。

和田 毎日されるんですか。

草野 はい、毎日やります。

和田 どれくらいの量を?

草野 腹筋は一応200回やろうということで。

和田 すごい(笑)。

草野 あとは15キロのダンベルを持って、自分で工夫した「組み合わせ体操」を6種類くらいやっています。エアロバイクはできれば30分ぐらいはやりたいんですが、短めで終わる日も結構あります。有酸素運動をきっちりやらなきゃ、ということで。

和田 失礼ながら80歳の方のトレーニングとは思えない。

草野 以前と比べると、だいぶ軽めになりました。

和田 そもそも、なぜ筋トレをやり始めたんですか?

草野 50代後半くらいだったでしょうか。年齢とともに運動量が減っていくなかで、背中の皮を引っ張ってみると、ちょっと厚く取れるようになったんです。それで「運動しなきゃいけない」と思い、最初はジムに通ったんです。ところがジムの休館日と私の休日が合致すると行けない。それで最低限の機材を自宅に持ちこむことにしたんです。家ならやりたい時にできますからね。そこからだいぶ熱心にやって、結構、重たいものも含めてやっていたんですね。

和田 面白くなっちゃった?

草野 はい。ところが60歳を過ぎた頃でしたね。東京都知事の石原慎太郎さんにインタビューした際に「草野君、まだ重いのやってるのか?」と聞かれ、「やってますよ」と答えました。すると「おまえな、人間、60歳を過ぎたら血管がプチッといくぞ。重たいのはやめておけ」と言われたんです。それで「わかりました」と。

和田 そこから軽量化した?

草野 はい。別に大会に出て競ってるわけじゃありませんからね。そこから量も時間も軽めにして、ある程度必要なことはきっちりやろうと。

和田 やはり健康を意識されるんですか。

草野 高齢化すれば、筋力は落ちていきます。それによって、認知症も含め、心身にはいろんな問題が起きてきます。だから最低限のことぐらいはやっておきたいと思いまして。なるべく休まずに、コツコツやっています。

和田 いいですね。例えば普段はまったく運動せず、週1だけゴルフをする人がいます。もちろん何もしないよりはマシですが、本当は毎日歩いたりするほうがいい。立場上、外を歩けない人は、室内運動だけでもいい。急に動いて転倒し、骨折する人も多いんですよ。

草野 ですね。

和田 若い頃との違いは“運動溜め”ができるか、できないか。若者は週1でガッツリ運動し、他の日は何もしなくても平気です。だけど年をとったら、少量でも毎日やることが大事です。

草野 やりすぎはダメですか。

和田 やりすぎて危険、ということはありません。だけど見習える人と見習えない人がいます。草野さんはたぶん家系的にも丈夫な人です。だから腹筋を200回やっても大丈夫(笑)。でも、それを見習おうとしても、できない人は多いでしょうね。

結局は意欲の問題

和田 結局ね「運動をする」か「しない」かは、意欲があるかどうかなんですよ。僕は患者さんに「歩かないと歩けなくなりますよ」と言うんですね。すると「頑張ります」と口では言うものの、やらない人が多い。

草野 意欲の低下ですね。

和田 はい。一般的に、認知症は物忘れから始まると思われているけど、その前に意欲が低下して活動量が減る。草野さんは真逆ですね。今日、会った瞬間から意欲がみなぎってる(笑)。

草野 いやいや(笑)。私もね「今日は休みたい」と思うことはあるんですよ。でも、もともとが怠け者の体質なので、休むと続かなくなる。だからやり続ける。

和田 なるほど。でも、ダンベル15キロは楽じゃないですね。

草野 15キロは大きな負荷ではありません。あ、面白い話を思いだしました。浜口京子さんの家に取材に行った時に30キロのダンベルが置いてありましてね。オリンピアンですから軽々とやるのは当然としても、お母さんは「京子はね、困るのよ」と言うんです。「え、何が?」と聞くと「朝、カーテン開けてと言ったらカーテン引きちぎったことがある。しかも2回もよ」って(笑)。

習慣化するとやるようになる

和田 毎日やることは習慣化につながるんですね。習慣になると、やらないと気持ち悪くなる。例えば、夜にシャワーを浴びるのが習慣になっている人は、浴びないと気持ち悪くて寝られない。やらないと気持ち悪い状態をつくることは、とても大事です。いかに習慣をつけるか。

草野 仰るとおりです。

和田 例えば、子供に勉強させる時に一番賢いやり方は、学習習慣をつけることです。学習習慣がつくと、勉強しない日は頭が悪くなった気がする。強制的にやらせるのではなく、習慣化すれば自発的にやるようになるわけです。

草野 それはいいですね。

和田 はい。だけど、年をとってくると困ったことが起こります。せっかく身につけた習慣がポツリポツリと抜けてくるんですよ。だからやはり、草野さんが筋トレの習慣を貫いているのは、素晴らしいのです。

ポーズを決める草野仁氏と和田秀樹氏
和田秀樹/Hideki Wada(左)
精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。現在、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

草野仁/Hitoshi Kusano(右)
キャスター。1944年旧満州生まれ。東京大学文学部社会学科卒業後、NHKに入社。1985年に退社しフリーに。『太陽生命 Presents 草野仁の名医が寄りそう! カラダ若返りTV』(BS朝日)でMCを務める。『「伝える」極意』(SB新書)が発売中。

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=筒井義昭

HAIR&MAKE-UP=田中潔

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