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2024.11.05

89歳現役! 元オリックス社長・宮内義彦、驚異的な若さの秘訣とは【和田秀樹が聞く】

規制に守られ既得権益を死守したい組織に対し“規制改革”を挑み続け、社員13名のベンチャーをグローバル企業に育て上げた宮内義彦氏。片や医療の壁と闘い続ける和田氏。和やかな対談から、ふたりに共通する“折れない、しなやかな”生き方が見えてくる――。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。1回目。

和田秀樹氏と元オリックス社長 宮内義彦氏、座り

若さの秘訣

宮内 『ゲーテ』は私も時々拝見します。ちょっとお高い雑誌だなと(笑)。「年をとった」ということでの取材は初めてですが、まあ、お手柔らかに。

和田 私は一風変わった医師でして、医療、とくに高齢者医療に関しては、大いに疑問を持っています。医者の言葉を信じてもロクなことはないのではないかと。それよりも、実際に元気で長生きをしてる方の話のほうが学びは多い。という理由からこの連載を始めたんです。

宮内 なるほど。理論より実践、論より証拠ってわけですね。

和田 はい。宮内さんとは、私が日大の常務理事をしていた時に何度もお会いしています。で、感動したんですよ。見た目の若さが驚異的なんです。しかもやることがアクティブです。年齢をまったく感じさせない。

宮内 いや、やっぱり老いは感じますよ。自分の年を考えて、びっくりすることもある(笑)。

和田 老年医学では「見た目が若い人は老化が遅い」という指摘があります。老化が遅いから見た目が若いのか、見た目を若くしてるから老化が遅いのか、真相はわかりませんが。

宮内 私は若く見られたいとは思わない。意図して、若くあろうともしてません(笑)。

和田 食事はどうですか? 昔の『週刊新潮』に宮内さんの食生活の記事を見つけました。「定番の朝食はグレープフルーツを半分、紅茶、ヨーグルト、パンにハチミツとごまペーストを合わせたものを塗る。昼は野菜が主体。夜の会食は多いが、酒を飲まない日も設ける。基本的に粗食」とあります。

宮内 30年も前の記事。よく見つけられましたね。今もほとんど変わりません。近頃はグレープフルーツをジュースにして飲むのと、フルグラを食べるようになりました。パンとフルグラは1日交替です。カルビーの社外取締役をしていましてね、そこの製品なんです。

和田 さすがですね。さりげなく宣伝もされる(笑)。

宮内 今日の昼はロータリークラブで会食でした。あそこの食事はカロリーが表示してありましてね。さすがに「これは食べ過ぎだ」と半分くらいにしました。少し空腹を感じるくらいが、私としてはコンフォタブルなんです。

和田 お酒は?

宮内 好きです。だけど酒量はかなり落ちましたね。お酒を飲みたいと思える時は、やっぱり健康なんです。毎日でも飲めますが、今は原則1日おきにしています。弱くなりましたよ。

和田 お酒を代謝する能力は加齢とともに落ちますから。

宮内 その分、経済的です。

和田 夜は会食が多い?

宮内 今はあまりないです。昔はお客さんを呼んだり呼ばれたり。嫌な酒を飲まにゃあいかん時もありましたね。現役を離れ、コロナ禍もあり、家での食事が増えました。

和田 専属のお料理人が?

宮内 いませんよ(笑)。家内が用意してくれます。今どきは出来合いのものや、インスタントのものも美味しくなりました。

和田 実は、医学的にもいいんです。家で作ると食材の品目が少なくなりがちですが、年を取るほど足りない害が増えてくる。外で作ったものは食材の数も多いのでお薦めなんです。食事以外の健康法は? 運動とか。

宮内 僕は不精ですから、気が向いたら散歩にいく程度です。それと週に1回のゴルフは続けています。きっちり何かをするようなことは、あまり好きじゃないんです。

和田 それがいいと思います。ムリせず、ぶらぶらと。

宮内 フラフラと歩く(笑)。

一番の健康法は仕事

和田 実は、私が一番の健康法だと思っているのは仕事です。世間では「年を取ったら引退しろ」と言う。でも仕事をできる間は、続けたほうが脳的にも身体的にも、絶対にいいはずです。

宮内 私は若い頃、「70歳を超えたら経営はやっちゃいかん」と言ってました。どんな立派な人でもちょっとした狂いが生じてくるのを見たり、聞いたりしましたからね。ところが自分が70歳になったら「俺、元気やないか」と(笑)。

和田 まだ引退は早いと?

宮内 いや。「早く辞めにゃいかんな」とか「自分もおかしくなったらいかんな」という強迫観念はありました。だけどリーマンショックなどもあって辞めるわけにいかず、結局78歳まで続けました。

和田 以来11年。89歳の今も現役ばりに働いている。

宮内 シニア・チェアマンというよくわからん肩書をつけて仕事をしています(笑)。

和田 会社とは一線を画しておられると。

宮内 はい。自分ではイニシアティブを握らず「頼まれ仕事だけをする」と決めました。そしたら「宮内は暇だろう」と思われるのか、あちこちから頼まれるので結構忙しい。今はかなり整理して、数社の社外役員と学校関連や公益法人の役員をしています。

和田 やはり、忙しいことが宮内さんの若さの秘訣なんだと思います。もちろん無理はよくありません。だけど日々、新たな問題に取り組むので、脳も身体も衰える余地がないのです。

宮内 ありがたいことです。少しでも皆さんのお役に立っているなら誠に幸いと思います。

和田秀樹氏と元オリックス社長 宮内義彦氏、立ち
和田秀樹/Hideki Wada(左)
精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。現在、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

宮内義彦/Yoshihiko Miyauchi(右)
オリックス シニア・チェアマン。1935年兵庫県生まれ。1960年ワシントン大学経営学部大学院でMBA取得後、日綿実業(現・双日)を経て、1964年オリエント・リース(現・オリックス)入社。社長・グループCEO、会長・グループCEOを経て現職に。著書は『諦めないオーナー』など多数。

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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