デビューから20余年、今なお輝きを失うことなく第一線を走り続けている俳優・上戸彩。映画にドラマ、CMなど幅広く活躍する彼女が選んだ最新作は、Prime Videoで独占配信中の完全版ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』だ。ロングセラーコミックが原作の大作に賭けた想いとは。
240の国や地域で配信されるビッグスケールの話題作
「ずっと配信サービス系の作品に挑戦したいと思っていました。その記念すべきデビュー作が、スケールが大きくて、見応えがあって、しかも、世界中で視聴される作品ということが、本当に嬉しい」と、満面の笑みを浮かべる上戸彩。
その作品とは、かわぐちかいじ氏の大ヒットコミック『沈黙の艦隊』を原作とし、2024年2月9日から240もの国や地域でPrime Videoで独占配信されている『沈黙の艦隊 シーズン1 ~東京湾大海戦~』。
2023年秋、同じ制作陣・キャストで一足先に映画として公開され、大ヒット。その劇場未公開シーンを含め、東京湾で勃発する海戦までを描いた全8話からなる完全版ドラマだ。
原子力潜水艦「シーバット」を軸に、日本とアメリカ、そして、独立国「やまと」が、それぞれの信念と思惑を抱いて相対。
迫力満点の戦闘シーンに緊迫の交渉劇、複雑な人間模様といったおもしろさに加え、自衛隊や防衛省協力のもと、日本映画として初めて実際の潜水艦を撮影に使用するなど、度肝を抜くスケールが早くも話題となっている。
加えて注目されているのがキャストの豪華さ。
日米が極秘で建造した最新の原子力潜水艦「シーバット」を奪い、独立国「やまと」を宣言した艦長、海江田に大沢たかお、「シーバット」を追う海上自衛隊の潜水艦「たつなみ」の艦長、深町に玉木宏、日本を守るために次第に成長していく総理大臣、竹上に笹野高史、内閣官房長官の海原に江口洋介、防衛大臣、曽根崎に夏川結衣と、そうそうたる顔ぶれだ。
「現場の雰囲気は和やかで、とても良かったですね。私自身は他の方々と一緒のシーンは少なかったのですが、夏川さんとは久しぶりの再会だったのでとても楽しみでしたし、笹野さんとは何度も共演させていただいていて、大好きな俳優さんですし。江口さんとは23年前、私が14歳の時にご一緒させていただいているのですが、『昔に戻ったみたいだね』と懐かしがってくださって。すごく居心地がいい、アットホームな現場でした」
原作が描かれた30年前と現在との橋渡し役
今回上戸が演じたのは、日本政府の陰謀とシーバットの核搭載を訝(いぶか)る報道キャスター。
映画からのオリジナルのキャラクターゆえに原作のファンの目にどう映るか不安は抱いたものの、「こんなにもスケールが大きく、深みのある作品に携われる喜びの方が大きくて、思い切って挑戦させていただきました」と、打ち明ける。
「原作が生まれたのは30年以上なので、(コミックに登場する)艦隊乗組員も政府関係者も男性がほとんどです。私が演じる市谷裕美は、今の時代に合わせて生まれた、30年前と現代をつなぐ役どころ。海江田が何を考え、何を目指しているのかを追っていく、ある意味、視聴者の目線に近い存在でもあります。なので、市谷をとおして、皆さんが作品に違和感なく、すっと入り込んでくだされば嬉しいです」
もっともテーマに古臭さはまるでない。むしろ、核や戦争、国同士の同盟の在り方など、今の時代を予見していたかのような問題提起がなされている。
「私自身、この作品に出演させていただいたことで、戦争や平和について改めて考えるようになりました。もちろん、これまでも関心は持っていましたし、ニュースなどで戦争の悲惨な状況を目にするたびに胸を痛めてはいました。それが、さらに自分事として捉えられるようになりました。
私が出演した作品や役柄で、人生が変わったとか救われたとかいう声をいただくと、『この仕事をしていて本当に良かった!』と、心の底から嬉しくなります。この作品も、みなさんが平和や核、戦争について考えるきっかけになればいいなと思っています」
目指すのは「みんなが平和で幸せでいられること」
世界の平和を目指し突き進む海江田に日本の防衛を念頭に闘う深町、そして、上戸演じる、真実を追求するために奔走する市谷など、この作品の登場人物は、いずれも“信念”に突き動かされて生きる者たちだ。では、俳優・上戸彩の信念はなんだろう。
「市谷が原稿を無視して、視聴者に自分の考えを伝えるシーンがあるのですが、その姿勢は報道キャスターとしてとても頼もしいですし、意志の強さを感じます。でも、私の仕事に対する向き合い方は、それとはちょっと違うかもしれません。
自分の考えをとおすより、周りに求められていることに応えたい。たとえ自分とは違う意見でも、みんながそちらを望むなら、すぐに流されちゃう(笑)。
役づくりにしても、最初に自分で固めずに、監督のイメージをうかがってから、どう演じるか考えるようにしています。現場の方だけでなく観てくださっている方も含めて、皆さんが、『幸せだ』『楽しい』と思えるように、自分が動く。この信念は、お仕事を始めた頃から変わっていません」
12歳の時に、母が応募した『第7回 全日本国民的美少女コンテスト』審査員特別賞を受賞し、14歳で俳優としてデビュー。15歳で演じた『3年B組金八先生』の性同一性障害を抱える中学生役でブレイク後現在に至るまで、さまざまな役柄を見事に演じ切ってきた。
「右も左もわからずに入ったので、演技がどういうものかすら、初めはまるでわかりませんでした。だから、監督が求めることを精一杯やるしかなかったですし、それで周りが喜んでくれることを嬉しく思いました」
求められていることを素早く、正確にキャッチし、十二分に応える。この柔軟性が、俳優としての引き出しを増やし、奥行きを深めているのだろう。
後編では、3人の子供の母というプライベートについて語ってもらう。