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2024.09.18

同期のネタで笑ってOK!? ぼる塾、吉本NSC講師に感謝していること

放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。ゲーテwebでは仕事術や生き方をテーマにしたコラムも人気を呼んでいるが、新たに対談連載がスタートする。今回のゲストは、NSC東京校18期(田辺智加、酒寄希望)、NSC東京校20期(きりやはるか、あんり)で桝本さんの教え子だった、ぼる塾。新しい女性芸人のカタチを体現するぼる塾ならではの生き方・仕事論、NSC時代の思い出などを、全4回にわたって聞いた。第4回目。#1回目 #2回目 #3回目

桝本さん-4

「オチのない恋愛相談」も許された自由な授業

桝本 NSC時代の僕の授業で覚えていることを聞かせてもらえますか?

あんり 桝本さんは講師のなかで、一番生徒と近い距離感にいた存在だったと思います。他の講師の授業は「同期のネタで笑っちゃいけない」というルールがあることが多かったけど、桝本さんの授業は笑ってOKだったし、いい意味で緊張感がなかった(笑)。ネタ見せが終わった後にも、「何か話したいことある人いる?」みたいにみんなの前で雑談をする時間もありましたから。

それも、笑いを取るためのエピソードトークを披露するとかじゃなくて、内容は本当に何でもよかった。だから、私は当時好きだった男の子のことを桝本さんの授業で話しました。何のオチもなく、始まってすらいない恋の話(笑)。「たまたま同じ小説家が好きで、小説の貸し借りしているんです」と言ったら、桝本さんが「小説はええよ。読んでいる本を知ることは、相手の心のなかを見ているようなもんやから」と素敵な言葉をくれた。私の個人的な相談を他の生徒全員が聞いている、不思議な時間でした。

桝本 僕は「授業中は何してもええよ」と言っているからね。なぜか「俺は永遠に牛丼が食えます!」と言っている生徒がいて、「じゃあ、この金で神保町じゅうの牛丼買ってこい!」って2万円渡して、70杯の牛丼を授業が終わるまでずーっと食べ続けてもらったこともあったなぁ(笑)。

※NSC東京校が神保町にある

あんり 桝本さんの授業で話したのは本当にただの雑談でしたけど、芸人の仕事ってガッツリ準備してきたエピソードトークはもちろん、「ぼる塾さん、いつもの感じでしゃべってください」みたいにフリートークを求められることも多い。

劇場とかでMCをやらせてもらう時も、「自然に雑談をする」というのが最近少しはできるようになってきました。その原点には、間違いなく桝本さんの授業があると思います。

田辺 うちら(田辺と酒寄)はお互いに人見知りだったから、同期ともあまり話してませんでした。でも、桝本さんの授業で雑談をしたことで、みんなに自分たちを分かってもらえたのはありますね。

桝本 僕の授業ではネタ見せ終わりで、「ふたりはどんな人なの?」みたいに雑談をしていたけど、そこで猫塾(当時の田辺と酒寄のコンビ名)がしゃべってくれる内容が面白かったのを覚えてます。猫塾はネタのほうでも、僕の選抜クラスに入ってもらっていましたもんね。

ぼる塾の4人-2
ぼる塾/Borujuku
酒寄希望(さかよりのぞみ/写真左)と田辺智加(たなべちか/写真右中)のコンビ「猫塾」と、きりやはるか(写真左中)とあんり(写真右)のコンビ「しんぼる」が、2019年12月に合流して結成。酒寄が産休・育休を経て2022年11月に復帰し、2023年の『THE W』では4人体制で初の決勝進出を果たした。

卒業してから実感する、芸人の未来を見据えた授業

桝本 逆に、「桝本はこういうところ気をつけろ!」みたいなのはないの?

あんり あえて言うなら、ネタを見る時の目力が強すぎることですかね(笑)。結構離れた距離にいるはずなんですけど、真剣に見てくれていることもあってか、目の前にいるくらいの圧を感じてました。普段はすごい気さくな感じなので、その時はやっぱり緊張しましたね。

あと、自分たちが売れていない時と売れた後で対応が変わる人って、やっぱりいて。「やっと認めてくれた」と嬉しい場合もあるんですけど、逆に売れてから急にすり寄ってきて、「そんなに関わっていませんでしたよね?」みたいな人もいるんです。

そんななかで、桝本さんは今でもあの頃と変わらずに接してくれる。以前、私たちと桝本さんでごはんに行かせてもらった時に、ぼる塾がやってきた仕事を桝本さんが見てくれていて、「あんりは……」「田辺さんは……」と色々アドバイスをしてくれる姿が、NSCの授業中とまったく同じだったんです。なんだかすごく安心しました。

桝本 僕の一番尊敬している職業が芸人さんだし、NSCに入ってきた生徒全員に対して、「この人たちは絶対売れる!」とリスペクトを持って接するようにしています。

はるか 私は、桝本さんの記憶のなかに私たちがいることだけで嬉しいです。

あんり ねぇ。何千人も生徒を見ているなかでね。

はるか 毎年NSCに入ってくるたくさんの生徒を見続けてきていて、私たちが授業を受けてから十年以上が経っているのに、今もこうやってうちらを対談の企画に呼んでくださっていることが嬉しい。

田辺 環境が変わると縁が切れて、もうそれっきりってなってしまう人も多いのに、桝本さんは縁をとても大事にしてくれていますよね。それに、私たちの個性を認めてくれているというか、桝本さんは「私、このままでいいんだ」と思わせてくれる存在です。

酒寄 桝本さんの授業では、田辺さんの韓国語のネタを絶賛してくれたのを覚えています。その時から、「自分たちだけの強みや個性をどうやって活かそうか」と考えるようになりました。先生に向かって言うのも偉そうな感じですけど、あんりちゃんの雑談の話みたいに、本当に「芸人としての未来を見据えた授業」をしてくださっていたんだなと、卒業してから随分経ちますが実感しています。

桝本 4人がテレビに出ているのを見ながらお酒飲むことが、今は本当に楽しい。田辺さんは「語学に興味がある」って話を前からしているけど、ぼる塾のみんなにはそうやって自分のやりたいことも大事にしながら、これからも活躍していってほしいと思います。

ぼるじゅくと桝本さん-5
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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