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2024.09.17

「イヤなことする人はスベらせる」ぼる塾のパワハラ対処法

放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。ゲーテwebでは仕事術や生き方をテーマにしたコラムも人気を呼んでいるが、新たに対談連載がスタートする。今回のゲストは、NSC東京校18期(田辺智加、酒寄希望)、NSC東京校20期(きりやはるか、あんり)で桝本さんの教え子だった、ぼる塾。新しい女性芸人のカタチを体現するぼる塾ならではの生き方・仕事論を、全4回にわたって聞いた。第3回。#1回目 #2回目

ぼる塾の田辺さん

「女性だから目立てる」という“やりやすさ”に目を向ける

桝本 女性が増えてきたとはいえテレビ局もお笑いの世界もまだまだ男社会だけど、僕はこの業界で一度もぼる塾の悪い評判を聞いたことがないんですよ。

あんり えーっ! 本当ですか? 嬉しい!

桝本 「忙しすぎてスケジュールが取れない」くらいかな(笑)。4人には「男性社会のなかでうまくやっていくコツ」みたいなものはありますか?

ぼるじゅくと桝本さん-2
ぼる塾/Borujuku
酒寄希望(さかよりのぞみ/写真中央)と田辺智加(たなべちか/写真右)のコンビ「猫塾」と、きりやはるか(写真左中)とあんり(写真右中)のコンビ「しんぼる」が、2019年12月に合流して結成。酒寄が産休・育休を経て2022年11月に復帰し、2023年の『THE W』では4人体制で初の決勝進出を果たした。

あんり 男社会で女性が生きづらいってよく聞くんですけど、私は女性芸人であることに得しか感じたことがないです。例えば、テレビのひな壇でも男性芸人がほとんどなので、女性として発言を求められるターンが必ず来る。だからうまく発言ができない状況でも、「いつかこっちに質問が来るから、そこで頑張ろう」と思えます。他の女性芸人さんもみんな、「やりにくさ」よりも「やりやすさ」をうまく探している印象ですね。

桝本 はるちゃんから聞いたけど、あんりはNSCに入った時に「毎日楽しい!」って言ってたらしいね。

あんり そうです、そうです。芸人になるまでこんなに自分が目立つことなかったので、本当に日々楽しくて。芸人になった瞬間にちやほやされて、何か売れるためのレッドカーペットが目の前に敷かれていて、「いいんですか? このまま売れちゃいますよ」みたいな感覚でした(笑)。

はるか 私はあんりとふたりでNSCに入ったんですけど、他の生徒の女の子があんりに「よかったら組んでください」って次々と声をかけてくるんですよ。隣に相方の私がいるのに。その頃からあんりにはオーラがあったんでしょうね。

悩ましい下ネタ。女性を見下す先輩を嫌いになった過去

桝本 「やりにくさ」と感じたことはない? 例えば下ネタとか。

あんり 正直、私は嫌ではないんですけど、「嫌な顔をしていた方がおもろいかな?」とかは考えますね。男性に混じって一緒に笑うよりも、「何言ってるの!」とツッコむ方が目立てますから。

田辺 私には「いい女の田辺」というキャラがあったので、酒寄さんの助言も受けて、下ネタには絶対に乗らないと最初の頃から決めていました。

ただ、楽屋で聞く下ネタは結構しんどかったですね。周りの男性芸人が、近くでそういう話をしているのが超イヤで。女性のことを下に見ている感じがあったし、それで大好きだった先輩を「気持ち悪い!」と嫌いになったこともあったくらい。

でも最近は、男性芸人はみんな楽屋で美容の話ばかりしているんです(笑)。時代は変わったなと思います。

桝本 これまでパワハラ的なことは経験しませんでした? 僕がテレビ業界に入った頃のディレクターさんとかは本当に厳しくて、罵詈雑言浴びたこともあったんだけど。

あんり 芸人からのパワハラはないですけど、スタッフさんからの無茶振りみたいなのはありましたね。

テレビに出始めた頃の私ってキレキャラのイメージだったので、ディレクターに「とりあえず怒ってください」みたいな指示を出されやすくて。とある俳優さんと私たちでグルメロケしていて、俳優さんは普通に食レポしている時にそのカンペを出されて、「何に怒ったらいいんだろう」って困った(笑)。

実際、私はそのロケで爪痕を残すことができていなかったし、撮れ高もなかった。でも俳優さんは真剣に食レポしているから怒れない……。そう迷っていると、ディレクターが耳元で「さあ怒って怒って」と追い打ちをかけてきたんです。

そこで咄嗟に発想を変えて、「なんでお前が入ってきているんだ!」ってディレクターのほうを怒ってみたんです。そうしたらドッと笑いが起きたので、その後はなんとか乗り越えられました。

桝本 うまく機転を効かせたってことですね。はるちゃんや酒寄さんはどうですか?

桝本さん-2
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

はるか 私は「はい」と言いつつちょっと渋るというか、イヤイヤオーラを露骨に出すようにしますね。

酒寄 (女性が男性社会のなかで)うまくやっていくコツかは分からないですけど、男性が手伝ってくれそうな時は、どんどんやってもらっちゃった方がいいのかなと思います。必ず女性の味方をしてくれる男性はいますから。優しくしてくれる人や、助けてくれる方の存在をちゃんと認識して、頼ることも大事なのかなと。

桝本 田辺さんはどう?

田辺 一般社会でも、男性から変なイジリをされた時に適当に流しちゃう人も多いと思うんですけど、それはやめた方がいい。はっきり「イヤ」と言った方がいいと思います。

桝本 ただ受け流すんじゃなくて、空気が悪くなってもいいから「やめて」と言うべきだと。

田辺 そうです。前に変なイジリをしつこく何回もしてくるディレクターがいたんですけど、その時、私怒っちゃって。「今の時代、こんなのやめるべきですよ」ってハッキリ言いました。

昔は私も「どっちでもいい」が口癖の優柔不断な女でしたけど、最近は「イヤ」をハッキリ言えるようになって、そこからすごい生きやすくなった気がします。

桝本 前に話をした時に、「私は自己肯定感が低めの女ですから」と言っていたのをすごく覚えてる。

田辺 NSC在学中も、「酒寄は面白いけど、田辺は何もできない」と周りからずっと言われ続けてました。でも、自分を見つめ直す時間を取るようになってから、「私にだって得意なことがある」と思えるようになりましたね。

あんり 私の場合は、イヤなことを言ってきたそいつをスベらせますね(笑)。変なイジリをされても「ははっ。そうですねー」って冷たくいなす。そうすると、「何かあの人、必死にいじってるけど、あんりちゃん全然相手にしていないじゃん。ダサっ」って周りは思うので。

田辺 あと、実際には絶対やらないですけど、心のなかではイヤなヤツに中指立ててます(笑)。

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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