人気グループのメンバーとしても、そして、表現者としても。岸優太は、日々変化する自身の「空間」と真摯に向き合い続ける。ステージ上で、自宅のリビングで、そして仲間と過ごす時間のなかで。彼の鋭敏な感覚と柔軟な思考はそのすべてにしなやかに宿っている。

仲間でつくり上げる空間、岸優太の自然体
撮影場所となったのは、モダンアートが並ぶ気鋭のギャラリー。その洗練された空間に、最新の装いに身を包んだ岸優太が、静かに歩みを進める。ふっと視線を空に漂わせたその刹那、物語の輪郭がふわりと立ち上がる。
今や名実ともにトップを走る人気グループ、Number_iの最年長。結成からここまでの月日について岸は「音楽制作やクリエイティヴにはじめから深く関わりながら、自分たちの表現を研ぎ澄ませてきた日々でもありました」と振り返る。ニューアルバムを引っさげての全国ツアーを目前に控えた今、カメラのレンズ越しに見せた眼差しには、グループの未来を見据える清冽な光が宿っていた。

1995年埼玉県生まれ。2023年に、平野紫耀、神宮寺勇太とともにNumber_iを結成。翌年元旦に、1stデジタルシングル「GOAT」でデビュー。現在、2ndフルアルバム「No.Ⅱ」が好評発売中。2025年10月からスタートのライヴツアー「Number_i LIVE TOUR 2025 No.Ⅱ」も、12月25日のフィナーレまで絶賛爆走中。
3人の濃密な空間がクリエイションの発火点に
「例えば楽曲制作ひとつをとっても、コンセプトの立案から歌詞にいたるまで、メンバー3人で深く濃く関わることができたのは、大きな発見の連続でした。もちろん、支えてくれるスタッフの皆さんの尽力があってこそですが、細部まで意見を出し合い、その手でカタチにしてきた積み重ねが、“自分たちの空間”を築いてきたという確かな実感につながっています。華やかな表舞台だけでなく、その裏側までも含めて、チームでつくり上げてきた、かけがえのない空間です」
インタビューの冒頭に投げかけた「この2年を振り返ってどうだったか」というざっくりした問いにさえ、控えめな語り口のなかに、岸らしい信念がしっかりと息づく。自分の立ち位置は「どうでもいい」と笑ってみせるが、常にグループのために力を惜しまない姿勢は、言葉の端々に滲んでみえる。岸の姿を見て一般的に語られるのは、「面白い」「カッコいい」といったイメージであるが、その奥に秘められた「俠気」と「まっすぐな信念」を抱く素の部分が、こうした瞬間にチラリと顔を覗かせる。
2025年9月にリリースされたセカンドフルアルバム『No.Ⅱ』は、平野紫耀、神宮寺勇太ら、個性豊かなメンバーそれぞれの感性が高い次元で融合した傑作だ。本格的なヒップホップサウンドはもちろん、スキットを取り入れた新たな試みにも挑戦し、枠に収まらない独自の表現を確立。キレのあるダンスパフォーマンスもさらに磨かれ、満を持して迎える全国ツアーでは、最高峰のステージがオーディエンスに約束されている。
「想像を超えるものをお見せしたいと、常に考えています。今回のツアーも、観に来てくださる方にはサプライズでしかない内容が満載です。ライヴ空間は、自分にとっては最も充実感を得られる場所なんです。やりきった! と思える瞬間の積み重ねが、仕事を続けるうえでの原動力にもなっています。終わったあとはまるでビールを飲んだような身に染みわたる爽快感がありますね」
仕事のモチベーションとして、もうひとつ欠かせないのが、Number_iの他のメンバーとの自然な関係性だと岸は語る。
「平野と神宮寺とは、一緒にいる時間が圧倒的に多くて、もはや家族みたいな存在になっています。気負わずにいられるからこそ、ふとした雑談などから生まれるアイデアも多い。頭に浮かんだことを話すだけで、あれよあれよと盛り上がって、実現に向かって広がっていく。無理に説明せずとも通じ合える、そんな空間があることも、僕にとってはありがたいことです」
未来へ拓く空間をどこまでつくっていけるか
Number_iは、3人それぞれが役割を担いながら、独自の道を切り開いてきたグループでもある。そのなかで、年長である岸優太の存在は、やはり特別な重みを持っている。作編曲にも関わる楽曲の完成度、パフォーマンスの精度、そのひとつひとつに個人としての底しれぬ可能性も感じられる。そんな岸が描く、Number_iの未来とはどんな姿なのか。
「そうですね、それは“どこに行くか”ではなく、“どこまでの空間を自分たちでつくりだせるか”だと思っています。目指すのは到達点や規模ということではなく、自分たちが何を生み出していけるのかということ。よく3人で将来の作戦会議をするんですが、目の前の一曲に正面から向き合って、自分たちもワクワクしながら、すべてをつなげていく。僕たちはこれからもそういう表現をしていくと思っています」
丁寧に言葉を選びながらも、迷いのない口調で断言する。その眼差しの奥にあったのは、何かを証明するためでもない、自らがつくり上げていくという静かな意志だ。岸のいるNumber_iという唯一無二の空間は、今後も絶え間なく進化を続けていくに違いないだろう。岸優太のまっすぐな感性とともに、未来へとしなやかに。









