放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
今回は、先週に続く後編です。
「お金がないので、イライラしたり、お金持ちに嫉妬したりします。よい対処法ってあるんでしょうか?」という相談を、引き続きほぐしていきたいと思います。
日経平均株価が史上最高値を更新したこともあり、相談者さんと同じように、「株をやっている人はラクして稼いでいる」「お金を右から左に転がすだけで生活できるなんてズルい」などという声がSNSでも目立っているようです。
では、そういった「お金持ちに嫉妬してしまう感情」には、どのように向き合い、対処すればよいのでしょうか?
嫉妬は「平常運転」、叩くのは「あおり運転」
まず、お金持ちに嫉妬するのは、人として「平常運転」。やきもちや妬みは、明日を生きるガソリンにもなるので、どんどん嫉妬していいと思っています。
しかし、心の中での嫉妬はいいのですが、当該者を直接SNSで叩いたり、怒りをぶつけたりすることは「あおり運転」です。
お金持ちを叩いても、あなたの貯蓄は1円も増えませんし、“お金に縁がある人は被害者意識を持たない人”でもあるので、「叩こう」に移る感情は、なるべく手放したほうがいいんですね。
「お金持ちへの嫉妬」と似たような感情に、「お金持ちの子供への嫉妬」があります。
たしかに、SNSで散見される「親ガチャ当たり」「何もしないで勝ち組」などのワードを真に受けると、「努力も苦労もしないでラクをしやがって」という怒りもわいてくるでしょう。
ですが、SNSは有益な情報だけでなく“負の感情もシェアしてくる装置”です。
他者への偏見・さげすみは、感謝・誉め言葉よりも伝播する力が強いことを知ったうえで、あなたなりの感情を生成することが大切です。
ちなみに、芸能界に30年いる僕は、二世タレントほどトラブルや薬物などの諸問題が多く、親御さんも苦労をされているので、一概に「お金持ち=幸せとは限らない」と思っています。
ネットの経済記事に踊らされるか、共にダンスするか
「SNSを見極めたうえで自分の心持ちをつくる」。このポイントが分かってくると、次のステップは、ネットにあふれている「儲け話」と「経済記事」との付き合いかたです。
お金持ちに嫉妬しやすい人は、前述したように“他者の感情に乗りやすい側面もある”ので、おいしい儲け話には注意が必要です。
とくにお金がないときは、防御IQも下がるので、ネットに蔓延る「おいしい話」に引っかかりやすくなりますし、最近は、あまり豊かでない若者をターゲットにした投資詐欺が増えていることも事実です。
さらに、金融教育を受けなかった私たち世代は、経済に疎い世代でもあるので、天気予報のように「経済予測」を信じてしまいがちです。
もちろん、綿密な分析やエビデンスに基づく有益な記事もありますが、経済系のニュースがピンからキリまで大量生産されている現状と、「有料」でも、中身は「優良」でない記事があることも知っておかなければなりません。
僕の場合、経済系のニュースや記事は、いつも頭に置いている次のフィルターを通しながら拝見しています。
米国のデータですが、300人の専門家(経済、政治、選挙、軍事など)の過去20年間の「予測」、約8万の的中率を調査したところ、的中は1割未満。ちなみにリーマンショックを予測できた専門家は全米で1人だったそうです。
この的中率を、高いと見るか低いと見るかは個人のものさしで良いと思いますが、僕は「すべてを鵜呑みにしないでおこう」をデフォルトにしていますし、記事に踊らされるのではなく、「こんな見方もあるのか」「逆の見立ての識者はいないかな?」など、予測を楽しみつつ一緒にダンスをする感覚で接しています。
そう、大切なのは、次々に流れてくる「経済予測」「うまい話」「負の感情のシェア」に惑わされることなく、あなたはあなたの人生の運転席に座って、平常運転をしていくこと。これが重要なポイントなんですね。