PERSON

2023.10.30

「この仕事に向いてないよ」その真意と受け止め方、教えます【吉本の人気NO.1講師の解】

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位の桝本壮志のコラム。

鋭利な言葉には「思考の剣」で立ち向かおう

「お前、この仕事に向いてないよ」

そんな鋭利な言葉をあびた経験はありますか?

ここのところ話題の中古車販売メーカーをはじめ、令和の世になっても、耳を疑うようなデリカシーなき言葉を口にするリーダーは、まだまだ存在しています。

そこで今週は、「お前、向いてないよ」と言われたりして、仕事で凹んでいるみなさんに“思考の剣”を届けてみたいと思います。

「実力不足」は「情報不足」でもある  

もしあなたが、突然「米をつくれ」と言われ、うまくできなかったら、「この仕事に向いてない」と思いますか? 思わないですよね。

モラハラ上司や先輩の「お前、この仕事に向いてないよ」発言は、このパターンがけっこう多いんです。

お米をつくるには、土づくり、苗の選定、田植え、除草、追肥など「88の手間」が必要だと言われていますが、そういった情報を知っていないと畑仕事はできません。

そう、畑仕事もオフィス仕事も、世の中の「仕事」はみんな同じ。“実力不足”の正体は“情報不足”でもあるのです。

裏を返せば、仕事に必要な情報を与えず、あなたの実力を値踏みしている人もいるということ。情報を知らないあなたがフリーズすることを想定ずみで、マウントを取ろうとしている人もいるということ。

そんな意地悪に負けないでください。

自分の実力を疑う前に、情報の足りなさを疑いましょう。そして足らなければ調べてみましょう。そんな時のための「情報社会」なのです。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。

「お前じゃムリ」の種あかしは「あなたがムリだった」 

僕は作家のキャリアを劇場(ほぼ住み込み)からスタートさせましたが、「いつかテレビでやりたい」と思い、アイデアをためていました。

しかし、先輩のなかには、いかにテレビ界が厳しいか、レベルが高いかを、とうとうと語る人がいました。僕のアイデアを見て「向いてない」「お前じゃムリ」と言ってくる人もいて、自分じゃダメなのかな……と凹みました。

ところが、いざテレビ界に飛び込み、同じアイデアを見てもらうと「おもしろそう」「ためしてみよう」と言う人だらけだったのです。

それから約20年テレビ界にいますが、「お前じゃムリ」の種あかしは簡単でした。先輩方は、劇場からテレビに挑戦するには年齢的に厳しく、僕はまだ若かっただけなんです。

世の「先輩」や「上司」は、自分が行きたくても行けなかったポジションに、後輩や年下がステップアップすることを嫌い、無意識に阻止してしまう生き物だったりもします。

「お前じゃムリ」と凹ませてくる人の言葉は「あなたがムリだった」に変換してやり過ごす。そして自分がリーダーになったら禁句にする。これをデフォルトにしましょう。

ブレイクスルーの鍵は「横移動」にもある

最後に、“仕事は合っているが、組織が合わない”という場合。これは大いにありうるケースです。

吉本NSCでも、毎年1000人を超える芸人の卵が入学しますが、「吉本っぽくないかもな」と感じる生徒が、必ず一定数います。

なので、僕は毎年「横移動の選択肢もあるよ」と伝えています。

日本人は、序の口からはじまり横綱を目指す「相撲番付」の精神が好きですし、一般社員にはじまり、主任、係長、課長と昇進していく“組織内での縦の移動”を目標にしがちです。

吉本興業でも、卒業した1000人は劇場ライブでしのぎを削り、実力や人気に応じてピラミッドを形成。売れるためには“縦移動”しないといけません。

ですが、本来の目標は、吉本内で縦移動することではなく“芸人として活躍すること”のはず。吉本は数多あるプロダクションの一つなので、別の事務所に“横移動”してもいい。実際、他事務所に移って売れた教え子もいるからです。

上昇志向は素敵ですが、横移動してつかむ高みもある。これも頭の片隅に置いてみてください。

それでは、また来週お逢いしましょう。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

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