放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
「悩みは、どうすれば消えますか?」
そんな相談を読者の方からいただきました。
職場の人間関係、仕事のプレッシャー、お金のこと、恋愛について、自分の才能や適性……、私たちの悩みは尽きませんよね。
そこで今週のテーマは、約1万人の生徒に僕が伝えてきた、「悩み」との向き合い方、思考法です。
夜中に悩まず”体調や気分がいいとき”に悩む
芸人学校には10代から70代、高校生、主婦、元校長先生まで様々な人種がいますが、みんな平等に悩みを持っています。
そう、悩むことは「若者の特権」ではなく、幾つになっても悩みますし、幾つになっても心が痩せるものなんです。
僕は、そんな生徒に「夜中に悩むなよ」と伝えてきました。
よくベッドの中でクヨクヨしたり、夜ふかしをして未来に怯える人がいますが、悩みの「深さ・浅さ」は“体調とタイミングによって変わります”。
平日に風邪をひくと「学校休めるかも」「ラッキー」ですが、受験の日だと「落ちるかも」「詰んだ」など、負の感情に変わるのがそれです。
なので、丸1日仕事をして、わざわざ体や脳みそが一番疲れている夜中に悩むのは“自分で悩みを深くしていく行為”だし“後ろ向きになろうとするナイトルーティン”なんです。
「どうせ悩むなら、すっきり目覚めた翌朝や、友人や恋人との待ち合わせ場所に向かう電車内とか“体調や気分がいいとき”がええよ」と、僕は伝えています。
消し忘れた電気は、一部屋ならラクだけど家じゅうの電気を消すのは一苦労。「悩みを消す」には、まずは“余計な悩みを生まない”ことにも目を向ける必要があるんですね。
悩みは「反応」で起こるので「対応」で消す
悩みは“あなたの反応”から起こります。
上司が放った言葉が気になったり、暗い未来を予言する動画を見たり、幸せなカップルを見たり、すべては「反応」です。
そして、この反応が生成する悩みは、よくよく考えると「悩んでも仕方がないこと」が多いのです。
なので僕は、「反応」が作る悩みは“悩むのではなく「対応」する”ことにしています。
例えば、悩みが起ったときは“悩みの「核の部分」だけをクローズアップ”することにしています。
もしも、上司に「プレゼンが下手だ」と言われクヨクヨした場合。核は「プレゼンの仕方」にあるのに、上司の過去の言葉や人格、自分の企画力、次の会議への不安などを混在させると、心はかき乱れるばかりです。
周辺の負の感情は切り離し、「プレゼンの仕方」という核だけに傾注すれば、「日ごろの会話から見つめ直してみよう」「自信ありそうな姿勢をとってみよう」といった打開策が見えてきます。
さらに僕の場合、悩みがあるときは、とにかく歩きます。“頭でなく足に考えてもらう”のです。
体を動かしていると「あ、大したことないわ」となったり、「あれ? 何であんなことで悩んでたんやろ?」と気づいたりしますし、科学的にも「体を動かすと不安はやわらぐ」ことが証明されているので、こちらもおススメです。
そして僕たちは「悩み」と共生していく
余計な悩みを生まず、悩みを消すことがうまくなっても、悩みはどんどん浮かんできます。
もはや“悩んでいるからこそ生きている”とも言えるでしょう。
生前、樹木希林さんがこんなことをおしゃっていました。
「病はダメで、健康であることをいいとするだけなら、こんなつまらない人生はない」と。
とても励まされる言葉です。多い、少ないはあれど、誰にだって持病の1つや2つはあるもの。それを「悪い」と決めつけるのは浅はかな考え。
大切なのは“病みながら生きること”だと教えられました。
これは、そっくり「悩み」にもスライドできます。何歳になっても悩みは尽きないのだから、“大切なのは悩みを消すことでなく、悩みつつ生きる”ってことではないでしょうか。
悩みを抱えたときは、またこのコラムを開いてみてください。一緒に向き合っていきましょう。それではまた来週。