CAR

2025.04.01

クラウンが復活! オーナーの平均年齢が10歳も若返った理由

トヨタ・クラウン(エステート)が発表され、クラウンの4つのスタイルが勢揃いした。一時は先行きが危ぶまれたクラウンというブランドが蘇った要因を考える。

トヨタ・クラウン(エステート)

車中泊にも対応する広いラゲッジスペース

2025年3月13日、トヨタ・クラウン(エステート)が発表された。2022年にクラウン(クロスオーバー)が発表された際に、トヨタは4つのスタイルでクラウンを展開すると発表したけれど、これですべてのクラウンが揃ったことになる。

4つのスタイルが勢揃いしたこのタイミングで、クラウン(エステート)を紹介するとともに、クラウンが進めてきた変革についてまとめておきたい。

クラウン(エステート)は、SUVとエステート(ステーションワゴン)を融合させたモデル。SUVの高い走破性と広いラゲッジスペースを組み合わせることで、都市生活者が週末に大自然と親しむようなライフスタイルに対応している。

クラウンはすべてのモデルが「全席特等席」というコンセプトで設計されているけれど、クラウン(エステート)はその考えを荷室にまで広げている。後席を倒すと、全長2メートルにおよぶフルフラットなスペースが現れるのだ。

車中泊にも対応するし、そこまで本格的でなくても、サーファーやスノーボーダーが身体を横たえて夜明けを待つような使い方が想定できる。

トヨタ・クラウン(エステート)
長さ2メートルの広大な空間はさまざまな使い方ができる。実車に接すると、フロアにあたる部分の手触りのよさに驚かされる。

快適に長距離移動をするために、足まわりのメカニズムにも工夫が凝らされている。まず、しなやかな乗り心地と高速走行時の安定性を両立するために、きめ細やかなチューニングを施した電子制御式サスペンションを採用している。また、車速に応じて後輪も舵を切る後輪操舵を採用、市街地では小回りが利き、高速走行ではレールの上を走っているかのように安定する。

パワートレインはハイブリッドとプラグインハイブリッド(PHEV)の2種類。ハイブリッドはクラウン(クロスオーバー)やクラウン(スポーツ)に比べてフロントのモーターの出力が大幅に引き上げられ、PHEVはWLTCモードで89kmのEV走行が可能となっている。

PHEVは、買い物や送り迎えといった普段使いであればEV走行だけでまかなうことができるし、森の中のキャンプ場に入ったら無音・無振動のEV走行で自然と一体化するような使い方が想像できる。

ハイブリッドの燃費は20.3km/ℓ、PHEVは20.0km/ℓと公表されている(いずれもWLTCモード)。

新型クラウンのキーワードは“多様性”

こうして、セダンとSUVの融合という斬新なコンセプトのクラウン(クロスオーバー)、官能的な走りとデザインで乗る人の感性を刺激するクラウン(スポーツ)、新しい時代のフォーマルを提案するクラウン(セダン)、そして今回のクラウン(エステート)と、クラウンのラインアップが完成した。

クラウン(エステート)の発表会で登壇したクラウンチーフエンジニアの清水竜太郎氏は、クラウンが4つのスタイルを揃えるようになった理由について、次のように語っている。

「初代クラウンが発表されたのが1955年なので、今年は誕生してから70年目という節目の年となります。現行のクラウンは16代目になりますが、どのようなクラウンが喜ばれるのか、そもそもクラウンとはなにかを考えたときに、『革新と挑戦』がこれまでのクラウンのキーワードだったことに立ち返りました。新しい時代のクラウンを考えると、多様化する価値観に対応すべきだという結論に至りました」

トヨタ・クラウン(エステート)
手前からクラウン(クロスオーバー)、クラウン(スポーツ)、クラウン(セダン)、クラウン(エステート)の4つのスタイル。

クラウンチーフデザイナーの宮﨑満則氏は、新しいクラウンのデザインについて、こう述べた。

「デザインチームには、若くて多様なメンバーに入ってもらいました。たとえば、昔だったらスーツとネクタイで職場に向かったけれど、いまはジーンズとスニーカーで通勤する人も多いよね、といった話をしながら、若いデザイナーが自由に発想できるような環境を整えたつもりです」

つまり、クラウンのカギとなるのは、多様性という言葉になりそうだ。事実、エクステリアのスタイリングだけでなく、ハイブリッド、PHEV、そしてFCEV(燃料電池)というように、パワートレインも乗る人の好みやライフスタイルに応じて選べるように多様化している。

前出の清水チーフエンジニアによれば、クラウンのオーナーは20代から40代が増えており、平均年齢は約10歳も低下、輸入車からの乗り換えも従来の2倍に増えているという。

一般社団法人日本自動車販売協会連合の資料によると、2024年の1年間でクラウンは対前年比145.5%の6万2628台を売り上げ、乗用車部門の第15位。ちなみに14位が同門のアクア、16位がホンダ・フィットというコンパクトカーだから、高額モデルのクラウンがこの順位にいるということは大成功といっていいだろう。

一時は「おじさんが乗るダサいクルマ」というイメージだったクラウンが蘇った。復活した理由は、デザインでもメカニズムでも価値観の多様化に対応したことだろう。自動車業界だけでなく、さまざまな分野の方が、この事実からインスピレーションを得るのではないだろうか。

トヨタ・クラウン(エステート)
トヨタ・クラウン(エステート)RS
全長×全幅×全高:4930×1880×1625mm
ホイールベース:2850mm
パワートレイン:2.5ℓ直列4気筒ガソリン+プラグインハイブリッドシステム
システム最高出力:306psm
駆動方式:フルタイム4輪駆動
価格:810万円〜(税込)

問い合わせ
トヨタ自動車お客様相談センター TEL:0800-700-7700

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

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