友人宅に急にお呼ばれした場合やちょっとしたプレゼント、自宅でのカジュアルなランチ会などの際に、近所のスーパーやデパートなどで5,000〜1万円で買える“ちょっといいワイン”を知っておくと大変便利なもの。おいしいのは絶対条件で、ちょっと蘊蓄も語れると最高ですよね。そんな「街中で買える、1万円以下の“お宝ワイン”」を、年間1000種類近いワインをテイスティングし、つねにおいしいワインを探し求めているワインブロガー・ヒマワイン氏がご紹介。
単なる“セレブワイン”と侮るなかれ
東京、神奈川、埼玉、千葉など首都圏を中心に160店舗以上を展開するスーパー、オーケーをご存知でしょうか。いかにも庶民の味方といった印象のスーパーですが、ワインにも力を入れています。
そして今回、そんなオーケーで私が発見したのが「y by シャルドネ“アンコール”カリフォルニア2022」です。X JAPANのリーダーであり世界的アーティストとして知られるYOSHIKIさんがプロデュースするワイン。まさか庶民的スーパーでセレブワインが入手できるとは……！
「芸能人がプロデュースするワイン」というとちょっと軽い印象を受けますが、y by YOSHIKIは極めて本気度の高いワインです。YOSHIKIさんが組んでいるのはロブ・モンダヴィJr.。カリフォルニアワイン好きなら知らない人のいないワイン界の大物、ロバート・モンダヴィの孫にあたる人物です。
ロバート・モンダヴィといえばカリフォルニアの高級ワインの代名詞的存在である「オーパス・ワン」の生みの親。カリフォルニアを世界的ワインの名産地に育てた立役者です。そのDNAを継承する名門一家と手を組んで、最高品質のワイン造りを目指しているのがy by YOSHIKIなんです。
そのトップキュヴェはカベルネ・ソーヴィニヨンの聖地、オークヴィルのぶどうで造る赤で価格は50,000円超。オーケーで売っていたのはさすがに廉価レンジのもので、販売価格は5,000円ちょっと。年末年始のプチ贅沢にはまことに相応しいと、その日の気分で白の「シャルドネ アンコール2022」を購入しました。
さて、カリフォルニアのシャルドネというと樽香をガンガンに効かせたバニラハチミツ味の白ワインを想像される方もいるかもしれませんし、実際そのようなワインも多いのですが、最近ではフランス・ブルゴーニュのようなエレガントなスタイルのものも増えています。
私はそのどちらのスタイルも好きなので、YOSHIKIさんの造るワインはどちらのテイストだろうとワクワクしながら抜栓しました。
グラスに注いでみると、まず驚かされるのが香りのボリュームです。レモンタルトのような、清涼感と甘やかさの双方を感じる良い香りがグラスからふつふつと立ち昇ってきます。私はこの瞬間が好き。「このワインは“正解”だ」と確信できる瞬間で、心のなかで小さくガッツポーズです。
飲んでみると、香りの印象通りの涼しげな酸味をまずは感じます。しかし、そこはさすがカリフォルニア。親しみやすい果実味が忘れ物を届けに来た人のように追いかけてきて、酸味と和合しています。
印象はYOSHIKIさんの造るワインらしくエレガント。ドラムを演奏するYOSHIKIかピアノを演奏するYOSHIKIかと問われれば、明らかに後者の印象のシャルドネです。それでいて、YOSHIKIさんがバラエティ番組で見せる意外なお茶目さの要素もある……といったところ。要するにとてもおいしい白ワインです。
私はこのワインを、せっかくいいワインだしと奮発して和牛ステーキと合わせてみましたが、塩とワサビだけで食べる我が家スタイルのステーキとy by シャルドネ“アンコール”カリフォルニア2022の相性は控えめにいって最高。酸がステーキの脂を中和し、肉の旨みをワインの豊かな果実味がまるでソースのように引き立てる。ワサビの爽やかな辛みもどういうわけだかマッチングに深く寄与し、今年自宅で味わったベストペアリングかもしれぬ、という味わいでした。
お正月の特番でワイン通としての姿も見せてくれるYOSHIKIさん。そんなYOSHIKIさんの活躍を見ながら、y by YOSHIKIを飲む。そんな楽しみ方も悪くなさそうです。あと、塩とワサビで食べる和牛ステーキとのペアリング、本当においしいのでぜひ。
ヒマワイン
年間約1000種類のワインを飲み、「ヒマだしワインのむ。」というブログを運営するワインブロガー。高いワインも安いワインも、地球上で造られるすべてのワインが好き。
