PERSON

2026.03.06

「『接吻』は寝る間もない時期に必死に作った曲」オリジナル・ラブ田島貴男35周年を振り返る

35周年を迎えたOriginal Love。デビューから周年を祝う新曲にいたるまで、その歴史を語った。

田島貴男氏
ジャケット¥50,600、ベスト¥42,900(ともにエンジニアド ガーメンツ TEL:03-6419-1798) パンツ¥33,000(ニードルズ/ネペンテス TEL:03-3400-7227)

Original Love田島貴男35年の軌跡、現在と未来…

メジャー・デビュー35周年を迎えるOriginal Loveの田島貴男と、創刊20周年を迎えた『GOETHE』がタッグを組み、書き下ろしの新曲「ワイルド・ヒューマニティー」をリリースする。その発売日は、『GOETHE創刊20周年特別号』の発売日でもある2026年2月25日(水)だ。約半年前から静かに始動していた待望のプロジェクトが満を持して結実したものとなっている。

撮影スタジオに大音量で響きわたっていた完成したばかりの新曲は、思わず踊りだしたくなるとびきりご機嫌なダンス・ナンバーだ。

「ʼ80年代のプリンスみたいな雰囲気もあって、ライヴで皆さんに盛り上がってもらえるような曲にしたかったんです」

ここ最近は新曲や自身が主催するイベント「Original Love presents Love Jam Vol.9」の開催が重なったこともあり、多忙な日々が続いているというが、35周年アニバーサリーにキャリア初となる武道館公演を行うことも発表された。

「まさか武道館でライヴをすることになる日が来るとは自分でも驚きです。これまでマイペースに活動してきましたが、35年も続けてきた記念に、自分に負荷をかけるような大きいことをしてみようかと」

「SOUL POWER BUDOKAN〜あれから、そしてこれから〜Dancin - The 35th Anniversary Live」と冠したタイトルからは、過去から未来へ向かう今の田島貴男の熱きソウルと凛とした姿が見えてくる。

ソウル・ミュージックが決定づけた音楽人生

1991年のデビュー以来、ソウル、ジャズ、ロックなどのルーツに深く根ざした濃密な音楽を追求し続け、35年の歳月を駆け抜けてきた田島貴男。高校時代に音楽の道を志して以来、あらゆる音楽を貪るように吸収し、自身の糧としてきた。

「僕らはパンク/ニューウェイヴの影響をダイレクトに受けた世代。Original Loveも結成当初はそういう音楽を志向していましたが、ʼ80年代半ばからそれが急速に色褪せてきて、自分の軸を一過性のムーブメントではなく、長く残っていく音楽に置きたいと思うようになった。そこでソウル・ミュージックに出会ったことがその後の自分の音楽人生を決定づけました」

ヒップホップが登場し、レア・グルーヴと呼ばれたʼ60~ʼ70年代のソウルやジャズが注目され、新しいスタイルの音楽が次々生まれた時代、Original Loveのデビューは鮮やかで衝撃的だった。

「メジャー・デビュー作『LOVE! LOVE! & LOVE!』は自分の音楽のイメージが猛烈に膨らんでいた時期だったので、いろんな音楽の要素をぶちこんでみたんです。まだ25歳の右も左もわからない若造でしたが、それゆえの型破りの面白さもあって」

以降も毎年のようにアルバムをリリースし、ʼ90年代を席巻したアシッド・ジャズやクラブ・ミュージックとも共鳴し、ミュージック・ラヴァーを熱狂させる豊潤な音楽をクリエイトしていく。今では日本のソウル・クラシックとなった「接吻」がヒットし、アルバム『風の歌を聴け』はチャートの首位に輝いた。

「あの頃はがむしゃらに突っ走っていましたね。『接吻』はドラマの主題歌だったので、時間に追われながら必死に作った曲なんです。夜中にスタジオで歌を録り、TVの収録をして、また戻ってミックスダウンと、寝る間もないほどでした。ただ、火事場のバカ力じゃないけど、切羽詰まったときに出てくる不思議なエネルギーはあったのかもしれないですね。ヒット・ソングは往々にしてそんな逸話があるようで、後にカバーされて浸透していったのも大きかった。自分が今やっている音楽の基盤もその時期にできたと思います」

35年の間にはさまざまなチャレンジと試行錯誤を重ねてきた。音楽シーンの目まぐるしい変化のなかで、メジャー/インディーズのどちらも経験しながらサバイブしてきた実感もあると語る。

「独立して、自分の意思で動くようになってからのほうが自由度が高くなりましたね。イベントやフェスなどで音楽を通して若い世代から年長者、アジア圏の人ともコミュニケーションできるのは刺激になります。去年、韓国の野外フェスに初めて出演した時、お客さんが僕の曲で踊りながら、『タカオ!』と声援を送ってくれたのは、音楽をやってきてよかった、と感じた瞬間でした」

時代の波に流されず、ブレずに活動を継続する田島の姿勢は、求道的ともいえる飽くなき探究心とパッションに支えられている。

「僕が目指しているような音楽はたまたまちょっと難しかったというか、10年、20年じゃ到底たどりつかない。30年以上続けてようやくわかってきたところがあるんです。特にグルーヴやリズムに関して、自分なりに摑んだかなと感じるようになったのはつい最近ですから。そういう気づきがあるから、歳を重ねるのが面白くてしかたがない。自分はまだまだ発展途上にいると思えることが楽しいんです」

ターニング・ポイントを超え、自分を更新していく意義

音楽の聴き方も年齢とともに変化していく。若き日に出会ったソウル・ミュージックの計り知れない魅力を、田島は今も“発見”し続けているという。

「僕が影響を受けたソウルのミュージシャン、カーティス・メイフィールドは昔から聴いていましたが、彼が何をどう感じ、伝えてきたのか、歌詞のメッセージや生き方も含めて、今のほうがより深く理解できるんです。あの頃の“好き”より、断然深いリスペクトを感じるし、神聖な気持ちにさえなる。そんな音楽がこの世界にあるというだけで救いになるし、力をもらえるんです」

ミュージシャンとして息の長い活動を続け、自分の音楽のクオリティの向上に心を砕いてきた彼が、現在にいたる道筋のなかでターニング・ポイントとなったと語るのは、2011年からスタートしたひとり多重奏ライヴ「ひとりソウルショウ」。

「バンド編成と違い、ひとりで身軽にライヴができるという理由から始めたんですが、自分の歌とギターだけでパフォーマンスを成立させるためには、いろんな創意と工夫が必要でした。ブルース・ミュージシャンの教則本や映像を参考にしたり、ジャズ・ギターを師匠に習いに行ったり、ひとりでもソウル溢れるライヴにしようとトライ&エラーと鍛錬を重ねていくうちに理解してくれる観客がついて、動員も増えていったんです」

現在は、熟練のメンバーを揃えたバンド編成、「ひとりソウルショウ」、「弾き語りツアー」、「Original Love Jazz Trio」と、スタイルの異なるライヴを全国各地で積極的に展開。狭いカテゴリーに収まりきらない爆発力のあるパフォーマンスは幅広いオーディエンスを魅了している。

「ある時期、落語にハマって寄席に通っていたんですが、落語もひとりの芸と話術でその世界観と景色を見せてくれるじゃないですか。僕が敬愛する柳家喬太郎師匠なんて、それは見事なもので、『ひとりソウル』をやっていくうえで芸と技を磨き、エンターテインすることの意味をあらためて捉え直したことは大きかったですね」

落語のみならず、ボクシング、オフロードバイク、カメラに凝ったこともあり、一度夢中になるととことんのめりこむタイプ。キャリアを重ねていけばいくほど、自分をフレッシュに保つ好奇心は重要だと説く。

「音楽に対する姿勢も同じなんです。情報だけでわかったつもりになっても知識だけ得ても本質には近づくことができない。自分で感じて、考えて、身体に入れていかないとわからない。そういう欲求が強いんでしょうね。だから、自分は常に変化しているし、更新していると思える。ホントは今のスキルと考え方でもう一度デビューしたいくらいなんです(笑)」

THE BIOGRAPHY OF ORIGINAL LOVE

1985年|田島貴男を中心に、Original Loveの前身となるRED CURTAINを結成。1987年にバンド名をOriginal Loveに変更。

1988年|Original Loveの活動と並行しながら、ピチカート・ファイヴに加入(1990年まで在籍)。インディーズで アルバム『ORIGINAL LOVE』をリリース。

1991年|1stシングル「DEEP FRENCH KISS」、1stアルバム『LOVE! LOVE! & LOVE!』リリース。 渋谷公会堂にて初のワンマン・ホール・ライヴを開催。

1993年|アルバム『EYES』リリース。シングル「接吻」がスマッシュ・ヒット。1994年のアルバム『風の歌を聴け』は、オリコンチャートで初登場1位を記録。

1995年|レコード会社を移籍し、1996年のシングル「プライマル」はオリコンチャート初登場5位を記録。アルバム『Desire』リリース。

2000年〜2005年|コンスタントにアルバムを発表しながら、東京スカパラダイスオーケストラの「めくれたオレンジ」、はっぴいえんどのトリビュート・アルバムなどに参加。

2006年|カヴァー・アルバム『キングスロード』、岡本太郎の壁画『明日の神話』の再生プロジェクトから生まれた同名曲を発表。1966年生まれのアーティストが集結するイベント「ROOTS66 ~DON’T TRUST OVER 40~」に出演。池上本門寺のイべントで弾き語りを初披露。

2010年|CMソング「ボラーレ!」を含むベスト・アルバムをリリース。全国ツアーを継続しながら、「GREENROOM FESTIVAL」など各地の野外フェスに出演。

2011年|弾き語りによる「ひとりソウルショウ」がスタート。自身のレーべルWONDERFUL WORLD RECORDSを設立し、アルバム『白熱』リリース。「ひとりソウル・ツアー『白熱』」を全国で開催。バンド、弾き語り、「ひとりソウル」のライヴ形式が定着。

2015年|ʼ90年代にタッグを組んだ佐野康夫(Dr.)、小松秀行(B)が参加したアルバム『ラヴァーマン』を発表。NHKの音楽番組『The Covers』に出演。2016年からは「Original Love presents『Love Jam』」を開催し、ペトロールズ、ceroと共演。

2019年|PUNPEE、渡辺香津美、長岡亮介、角銅真実らをゲストに迎えたアルバム『bless You!』リリース。「FUJI ROCK FESTIVAL ’19」に初出演。

2021年|30周年記念全国ツアー「Don’t Forget Your Soul Power」、22年ぶりの日比谷野外音楽堂 ワンマンを開催。30周年のプロジェクトとして初のカバーアルバム『What a Wonderful World with Original Love? / V.A.』、オールタイム・べスト・アルバム『Flowers bloom, Birds tweet, Wind blows & Moon shining』リリース。

2022年|20枚目となるアルバム『MUSIC, DANCE & LOVE』リリース。

2026年|35周年記念の日本武道館公演「SOUL POWER BUDOKAN 〜あれから、そしてこれから〜 Dancin’- The 35th Anniversary Live」開催を発表。キックオフシングル「ワイルド・ヒューマニティー」リリース。

田島貴男/Takao Tajima
1966年東京都生まれ。1985年にOriginal Loveを結成。以後、作品のリリースやライヴなど、多方面で精力的に活動。今年でOriginal Loveが35周年を迎え、2026年11月23日(月・祝)には、キャリア初となる日本武道館公演「SOUL POWER BUDOKAN 〜あれから、そしてこれから〜 Dancin’ - The 35th Anniversary Live」の開催が決定している。

TEXT=佐野郷子

PHOTOGRAPH=HIRO KIMURA

STYLING=大久保篤志

HAIR&MAKE-UP=谷森正規(M TANIMORI LABO)

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