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2024.06.28

「いつでもLAで収録」椎名林檎、GLAY…をプロデュースする亀田誠治が驚く、次世代デバイスと音楽制作の可能性

スマホに代わる次世代デバイスとして注目されるApple Vision Pro(以下AVP)が2024年6月28日、遂に日本上陸した。AVP初の解説書『スマホがなくなる日』を上梓した、ITベンチャーSTYLYの渡邊信彦COOは、「近い将来スマホを持つ人はいなくなり、人類はメガネ型デバイスをかけて生活も仕事もすようになる」と断言する。今回はそんな渡邊氏と、VTuberや最新技術を先進的に音楽業界へ取り込んでいる、音楽プロデューサー/ベーシストの亀田誠治氏と対談! 亀田氏が実現したい、未来の音楽制作環境とは。※本記事は、『スマホがなくなる日』より、内容を一部抜粋、再構成したものです。

亀田誠治氏

空間は広ければ広いほど人生は豊かになる

これまで椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAYなど、数々の日本を代表するアーティストをプロデュースし、ベースプレイヤーとしても第一線で活躍し続ける亀田誠治氏。面白そうなものはとにかく吸収したいという亀田氏が次に目をつけたのが空間コンピュータだ。XR技術を活用したミライの音楽シーンは、これからどう面白くなっていくのか?

渡邊 亀田さんは、VTuberなどともコラボされたり、メタバースの世界に積極的な印象を受ける一方で、自身の音楽活動やプロデュースなど、アナログな活動も数多くされてますよね。一見対極のものに感じるのですが、それぞれどんな気持ちで取り組まれているんですか?

亀田 アナログがいいとか、デジタルがいいとか、メタバースがいいとかっていうことは、あまり僕の中では境界線がないんです。発表したり活動をしたり、出会ったりっていう場の数が大きければ大きいほど、僕らの作っていく音楽であったり、もっと言えば、人生すらも豊かになっていくんじゃないかという、めちゃくちゃシンプルなところです。

渡邊氏と亀田氏の対談の様子
亀田誠治/Seiji Kameda(右)
音楽プロデューサー/ベーシスト。1964年ニューヨーク生まれ。椎名林檎、スピッツ、GLAYなど数多くのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に東京事変を結成。2007年、2015年の日本レコード大賞にて編曲賞、2021年に日本アカデミー賞優秀音楽賞、2024年には第19回渡辺晋賞を受賞。

渡邊信彦/Nobuhiko Watanabe(左)
STYLY 取締役COO 。1968年千葉県生まれ。2016年 Psychic VR Lab(現STYLY)の設立に参画し取締役COO 就任。XR クリエイターの発掘や育成を目的としたプロジェクト「NEWVIEW(ニュービュー)」を立ち上げたほか、グローバルに活躍できる人材を輩出するために尽力している。

渡邊 なるほど、全部吸収したい感じですね?

亀田 そうですね。今日、空間コンピューティングのことを深く知って、自分もその世界に飛び込もうと思っています(笑)。AIって、情報をどんどん入れていくことによって磨かれていくじゃないですか。僕は本当にそれこそアナログレコード、アナログテープの時代から音楽を作っているので、そんな僕が最新の領域、未来の領域に入ることで、吸収するだけじゃなくて、こちらから何か提供できればとも思っていますね。

空間コンピューティングを体験してみて

亀田 引き込まれるというか、没入感がすごい。目線がカーソルになる、目線で意思決定できるなど、基本動作がシンプルでいいですね。私たち音楽家は耳の感覚に集中したいので、操作がシンプルなのは嬉しいです。

渡邊 体験していただいて「空間コンピューティングはこんな使い方ができそう!」など、何かピンと来たものはありますか?

亀田 例えばウォークマンって、自分の好きな音楽をどこにでも連れていけるという良さがありましたよね。自由を手に入れたというか(笑)。空間コンピュータでは、その幅がもっと広がるなと思いました。そして空間を自分なりにカスタマイズすることができ、好きな音楽、聞きたい音楽、観たい映画、それらを自分に一番フィットした状態で見られる。最高にリラックスして没入できるということですよね。

渡邊 カスタマイズって、昔からしてましたよね。カセットテープにマイリストを作って、好きな子にあげたりしませんでした?

亀田 やりましたね(笑)。私はレコードをたくさん持っていて、「亀ちゃんつくってよ!」と友人に頼まれたりなんかもして、マイリストが自分のアイデンティティだったりしたんですよね。空間コンピューティングで自分だけの空間をつくって、みんなを呼んで、飲みながらマイリストを聞いてもらい、「昔っぽいセンスを伝える」みたいなことを、やってみたいな。

亀田氏にAppleVisionProの説明をする渡邊氏

空間コンピューティング時代のクリエイティブ活動

亀田 今のアーティストやクリエイターってめちゃくちゃ進化しているんですよ。演奏も上手いし、ハートもあって、自分の推しポイントもちゃんとあって。たくさん吸収しているから、幹が太い。現代は情報がたくさんあるので、クリエイティブの掛け算が起こって、素晴らしい作品が音楽に限らず色々なところで生まれてくるんじゃないかと思います。

渡邊 なるほど。空間コンピューティングでは他のクリエイターと一緒に作品づくりをすることもできると思うのですが、実際の音楽現場って今どうなっているんですか?

亀田 デジタルを使ったオーディオ作成は行われていますが、「やっぱり同じ部屋で顔を付き合わせて音を鳴らさなきゃね」というのがあります。僕も時々言います(笑)。でも、空間コンピューティングなら、同じ部屋でクリエイティブの環境も同じにすることができますよね。

渡邊 そうですね!

亀田 コロナ前から、複数人で楽曲制作をするコライトセッションをやっていたんです。ジャスティン・ビーバーの楽曲などで、作家の名前が20人くらい載っているやつ。私、あのひとりになりたくて……。月1回ロサンゼルスに行って、気持ちのいいリビングルームに、マイクを立てて、ピアノがあって、そこで1日で曲が完成するみたいな、素敵な空間があるわけですよ。それが空間コンピューティングなら、世界中どこにいてもコライトセッションができる。音楽やジャンルの国境もなくなってきそうですね。

渡邊 場所の制約が一気になくなりますからね。

亀田 昔はよく、ロスから帰ってくる飛行機の中で一曲作り上げたんだ! みたいなことを自慢してたんだけど(笑)、場所の限定もなく曲が作れるようになる。どこでもスタジオになるし、そのスタジオは自分のお気に入りの環境にできる。そこに仲間のミュージシャンを呼んで……。これはめちゃくちゃ楽しみ!

AppleVisionProを装着する亀田氏

ライブパフォーマンスでやってみたいことは?

渡邊 ライブの演出などでは、どんなことが変わる思われますか?

亀田 私のやっている日比谷音楽祭でも生配信をやっているのですが、リアルなライブと配信のハイブリッドのような、そんな楽しみ方ができそうですよね。それにステージ上で提供する選択肢も無限大に広がるし、受け取り方も無限大になる。

渡邊 舞台演出って結構コストがかかるんじゃないですか? 空間コンピューティングで補える部分も結構あるかと思うのですが。

亀田 そうですね。やはり力強い表現をしていくには、コストがかかります。大規模なスタジオ照明装置や、大規模なコントローラーが必要だとか。アイデアが必要ですが、ローコストで感動体験の可能性が広げられるということには、ものすごく意味があると思います。

渡邊 具体的にやってみたい演出とか、何かパッと思い浮かぶものありますか?

亀田 うーん、なんでしょうね。あっ! 実は私、あらゆるダンスの先生がお手上げ状態になるくらい、ダンスがダメなんですよ。なので自分のダンスの完成形をぜひ動かして欲しいですね。

渡邊 亀田さんを撮影して、思った通りに動かすことは可能ですよ! ぜひやりましょう。

亀田 ミュージックビデオを撮影していて、自分のせいでNGが続いてしまうとすごく申し訳ない気持ちになる。そういう不安から解放されるのは嬉しいですし、技術が人の生活を楽にしてくれる、不安から解放してくれる瞬間って、私は好きなんですよね。

渡邊 「人の不安を減らせる」、まさしくそういうために広がって欲しい技術ですよね。今まで物理的にできなかったことが、空間で表現できるようになる。無理してやっていたことをやらなくてもよくなる。自分の活動の背中を押してくれて、気持ちが今よりも楽に日々過ごせるようになれば私も嬉しいです。今後軽量化、小型化もどんどんされていくと思います。

亀田 不具合やバグに寛容にならないとですよね。昔コンピュータでクリックという音をカチカチ鳴らす設定をいれるだけで、4時間かかったことありますから(笑)

スマホがなくなる日、どんなことをしてみたい?

亀田 スマホがなくなる日、僕はその時の気持ちをメロディーに込めて動画で撮って、一切消さずにタイムカプセルにします! 何十年後とかに、「こんなミュージシャンがいたんだ、こんなおっちゃんがいたんだ。この人、ベース弾きながらなんか歌ってるぞ! こんな楽器があったんだね!」そんな風に思ってもらえたら。

渡邊 亀田さんらしいですね。コライトセッションといい、その場の雰囲気をそのまま空間に閉じ込めて保存しておく。どんどん一緒に貯めていきましょう!

遂に日本上陸するApple Vision Pro初の解説書!

TEXT=ゲーテ編集部

PHOTOGRAPH=廣瀬順二

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