長い歴史を持つ大企業を率いるJR西日本イノベーションズ・奥野誠と、最先端技術を駆使するベンチャーを率いるPsychic VR Lab(サイキックVRラボ)・山口征浩。ともに関西出身のふたりのエピソードを紹介。連載「相師相愛」とは……
挑戦し続ける人には、魅力的なメンバーが集まってくる
奥野 大変な経歴をお持ちなのに、偉ぶったところがまるでなくて。目指している世界観のレベルの高さに引きこまれました。
山口 最初はオンラインだったので、ざっくばらんに話せなかったんですよね。ただ、その後食事をさせてもらうと、堅い方かと思いきや、まったく違って。ギャップ萌えでした(笑)。
奥野 楽しかったですね。会話についていけるか、と思いましたが、そんなことはなく、情熱的なお話に、一気に近づけた印象でした。関西出身ですから、関西弁も出てきて(笑)。
山口 VR、AR、MRを合わせたXRを、リアルな日常生活で身に纏う時代が来ると思っているんです。これまでは、そのためのハードウェアやデバイスがなかった。この思いに共感をいただけて。
奥野 JR西日本が持つ駅という空間には、多くの人が集まります。その環境をXRで彩っていく。バーチャルな世界とつなげていく。世界中の人とコミュニケーションをする。大きなポテンシャルがあると思いました。
山口 リアルな世界をバーチャルテクノロジーでより豊かにしていくことができるんです。
奥野 しかも、直近で大阪・関西万博がありますからね。世界中の人たちが大阪にやってくる。イベントや体験など、さまざまな仕かけができる。大阪駅もまた、万博の大きな目玉のひとつになると考えています。
山口 大企業の人だと思いきや、けっこう豪快な人だということもわかって。大きな成功の話の一方で、大きな失敗の話も聞かせてもらって、驚きました。
奥野 CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の立場ですから、尖ったことをやらないと。鉄道会社がいきなりXRは難しいかもしれませんが、その触媒になりたいんです。
山口 大企業とベンチャーという環境は違いますが、イノベーションを通して新しい豊かな未来をつくっていく、という考え方は同じですよね。もちろん、生半可ではできないですが。
奥野 でも、山口さんには人間力がある。本当に魅力的なメンバーが集まってきて、素晴らしいチームがつくれている。
山口 いえいえ、奥野さんの会社も、一緒に働く人たちが素敵だったことが強く印象に残っています。トップゆえ、ですよね。
奥野 山口さんは、鉄道会社で働くなかでは出会うことができなかった経験を持っている人。人生そのものを学ばせてもらっています。
山口 いえいえ、いろいろとしくじっていたりしていまして。
奥野 武勇伝をたくさん聞かせてもらえました。
山口 かつて事業を任されていたとき、寝るところがなくて、会社の床で寝ていた話とか、ですね。アメリカに渡ったときは、お金がありませんでしたから、友達の家に長く居候したり、マサチューセッツ工科大学にこっそり住み着いていたこともありました。
奥野 海外での経験を踏まえて、どんどん自分の世界を広げていかれて。すごいと思います。
山口 新しいことをやるときには、うまくいかないことが多いのは事実だと思います。事業にしても、100%賛同されることなんてまずない。6、7割はよくわからなくて、2割は反対。でも、1割は強烈に賛成する。
奥野 そういうものかもしれないですね。
山口 ほとんどの人が信じてくれないなかで、奥野さんのような人がいるから、新しい未来をつくっていけるんです。
奥野 社内でも議論はありましたが、私たちも新しい未来をつくっていかないといけない。ご一緒すべきだと思いました。
山口 この先は世の中が根本から変わっていくと思うんです。大阪万博は、そのなかの大事なタイミング。そしてその先は、長い時間軸を見据えて取り組みたいと考えています。
奥野 鉄道会社にとっても、新しいチャンスだと思っています。長い目線で、末長くお付き合いをいただきながら、私たちも進化していきたいと考えています。
■連載「相師相愛」とは……
師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ、相“師”相愛ともいえるふたりの姿を紹介する。