PERSON

2025.09.20

大沢たかお、大人の色気を支える心と身体の整え方

世界が揺れる今、奇しくも公開が重なった『沈黙の艦隊 北極海大海戦』。主演とプロデュースを担った大沢たかおが語る、他人を動かす変革者の姿、そして自身を支える心と身体の整え方とは──。

大沢たかお氏

「食事、運動、そして良好な精神状態。この3つが揃えば、十分に満足です」

なんという巡り合わせだろう。出口の見えない戦争、安全保障の揺らぎ、そして核抑止の是非──。世界情勢が混迷を深めるいま、『沈黙の艦隊 北極海大海戦』がスクリーンに投げかける国家間の駆け引きや強硬な交渉は、現実のニュースとも重なり合い、観る者の背筋を思わず凍らせるほどのリアリティを帯びている。前作に続き、主演とプロデュースの両輪を担った大沢たかおは、この想定外の符号をこう受け止めた。

「一作目をつくり始めた時は、まさか世界がこんな状態になるとは、正直まったく想像していませんでした。続編の今作も、悪い意味でタイミングが重なってしまったなと。でも、作品としてはそういう運命だったのかなとも思っていて。現実の世界がいい方向に進んでいるとはとても言えない今だからこそ、この作品が発するメッセージや意義が、少しでも多くの方の心に届いて、何かを考えるきっかけになってくれたら嬉しいです」

意思を貫き通す主人公に時代の変革者の姿を重ねて

原作は、かわぐちかいじ氏による同名漫画。1988年から8年間にわたって連載され、当時は湾岸戦争による自衛隊派遣や、憲法9条をめぐる議論が活発化するなかで、作品の影響が国会質疑にまでおよんだ。あれから30年以上が経った今、世界を取り巻く状況は大きく変わっているはずなのに、なぜこの物語が今もなお人の心に深く刺さるのか。大沢は静かに続ける。

「フィクションとはいえ、そこにリアルな重みを感じられることは大きいと思います。でも、それだけじゃなくて、主人公・海江田四郎の姿に、今の時代に必要な“変革者”のイメージを重ねたくなる、そんな気持ちもあるのかもしれません。この作品は、主人公が葛藤しながら成長していく物語ではありません。海江田は揺るがぬ信念を胸に、ひたすらまっすぐに進んでいく。彼の存在そのものが起爆剤になって、周りの人たちが意識を変え、動かされていく物語です。そして今は、なんとなく先が見えづらくて、未来に希望を抱きにくい時代でもある。だからこそ、何かを変えようとする主人公の姿が、多く方の心に届いたのかもしれませんね」

2023年に劇場公開された映画『沈黙の艦隊』と、未公開シーンや“その後”を描いたドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1〜東京湾大海戦』は、配信後まもなく、Amazon MGMスタジオ制作の国内視聴数で歴代1位を記録、大きな話題となった。硬派なポリティカル・アクションでありながら、女性の視聴者も多かったことについても大沢は「意外ではなかったです」と、その手応えを確信していた。

自分の意思で心地よく健康に生きるために

俳優・大沢たかおの魅力は、与えられた役柄に感情や肉体をフィットさせ、精度を徹底的に高めていくスタイルにある。今作で演じたのは潜水艦という閉ざされた空間で、ほとんど動くことなく指揮を執る、極めて静的な役どころ。それでも例えば背中のズームショットひとつとっても、艦長としての存在感を裏打ちするように、ストイックに鍛え上げた筋肉の厚みが、制服越しにもはっきりとみてとれる。俳優としてのキャリアはすでに30年以上。商売道具である身体をどう維持し整えているのだろうか。

「役づくりに関しては、むしろ身体に負担をかけることばかりで不健康そのものですよ(笑)。そのリカバリーを含めて、ふだんの健康管理は極めてシンプルです。食事に気をつけること、運動をすること、そして精神的に楽しいと感じられる状態をキープすること。この3つで十分です。そもそも芝居は、健康じゃないとできないですから。まずは健康であることが、なによりも大事なことなんです」

とはいえ、そのシンプルなことが実行できないのが世の常でもある。だが大沢は、心のメンテナンスに関してもブレない自分なりのルールを持っている。

「何かを成功させたいとか、やり遂げたいというポジティブなストレスは、積極的にかけるようにしています。いいプレッシャーは、前向きな行動につながるような気がするんです。逆にネガティブなストレスは極力省いて、自分の中に入れないように。だからSNSも見すぎないようにしています。どうしても気づけば他人のリズムや人生を生きてしまうので、一日に10分だけでも意識的にひとりの時間をつくることも習慣にしています。自分をコントロールするためにも、不可欠な時間なんです」

俳優とプロデューサーの二刀流をこなすアーティストとして、また、ひとりの人間として。揺るぎない信念と、健やかな自己管理で道を切り拓く大沢たかおの壮健たる色気は、時代のゆらぎの中で生きる我々に、確かな指針を与えてくれる。

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』

『沈黙の艦隊 北極海大海戦』
2023年公開の映画『沈黙の艦隊』、翌年配信されたドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 東京湾大海戦〜』の続編。原作漫画随一のバトルシーンと、連載当時に社会現象にまでなった“やまと”選挙がいよいよ登場。2025年9月26日(金)より全国東宝系の劇場で公開。公式サイトはこちら

大沢たかお/TAKAO OSAWA
1968年東京生まれ。1987年からモデルとして活躍し、1994年にドラマ「君といた夏」で俳優デビュー。以後、数多くの映画、舞台、ドラマに出演。2024年には、人気シリーズとなった映画『キングダム 大将軍の帰還』の王騎将軍役で、第48回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。今後の活躍も期待される。

TEXT=畠山里子

PHOTOGRAPH=HIRO KIMURA

STYLING=黒田領

HAIR&MAKE-UP=EIJI SATO

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