連日熱戦が続くプロ野球ペナントレース。そのなかで強烈なインパクトを残しているのが、巨人のドラフト1位ルーキー・竹丸和幸だ。エース山崎伊織の離脱を受けて新人ながら開幕投手に抜擢されると、阪神戦で6回1失点の好投。巨人で新人が開幕投手を務めるのは64年ぶり、勝利投手となったのは球団史上初の快挙だった。無名の大学投手は、なぜここまで急成長を遂げたのか。

巨人64年ぶりの新人開幕投手――竹丸和幸が残した強烈なインパクト
連日熱戦が続いているプロ野球のペナントレース。各球団、新戦力の活躍が目立つが、ルーキーで最も強いインパクトを残しているのが巨人にドラフト1位で入団した竹丸和幸だ。
キャンプ、オープン戦で結果を残すと、エースの山﨑伊織が右肩の不調で離脱したこともあって開幕投手に抜擢。阪神を相手に6回を投げて1失点の好投で見事初登板初勝利をマークしたのだ。
ちなみに巨人で新人選手が開幕投手を任されるのは1962年の城之内邦雄以来64年ぶりであり、勝利投手となったのは球団史上初の快挙である。
続くDeNA戦では負け投手となったものの5回を投げて自責点1と好投。さらに2026年4月10日のヤクルト戦でも6回途中まで投げて1失点と試合を作り、早くも2勝目をマークした。
高校・大学では無名だった男――スカウト注目のきっかけとなった“腕の振り”
そんな竹丸は広島県の出身。高校時代は強豪の崇徳でプレーしているが目立った実績はなく、全国的には無名の存在だった。
進学した城西大でも当時は首都大学野球の二部に所属していたこともあって、プロのスカウト陣から話題に挙がることはなかった。本人も野球は大学までで辞めるつもりだったという。
その存在を筆者が認識したのは大学4年春のシーズン、武蔵大との入替戦だった。この試合で竹丸は2点をリードした7回途中からリリーフで登板。8回に3安打と味方のエラーもあって4点を奪われて逆転を喫し、負け投手となっている。
それでも鋭い腕の振りは目立ち、当時のノートにも以下のようなメモが残っている。
「細身だがシャープな腕の振りは出色。指先の感覚が良く、楽に腕を振ってもボールの勢いがある。全体的なフォームのバランスも良く、制球力も悪くない。上手く体ができてくればまだまだ速くなりそうな雰囲気は十分」
当時のプロフィールを見ると178cm、62kgとなっており、かなり細いことが分かる。またストレートの最速もこの試合では142キロと少し物足りないものだった。
結局、この入替戦は2勝1敗となり一部に昇格。続く秋のシーズンでは146キロをマークするなどさらなる成長を見せていた。ただ、プロのスカウト陣が熱心に見ている様子はなく、この時点で既に内定の決まっていた鷺宮製作所に進むこととなる。
社会人で覚醒、スカウト42人が集結──ドラフト1位へ評価を決定づけた試合
ようやくドラフト候補として本格的に竹丸が注目され始めたのは社会人2年目のシーズンだった。この年の最初の公式戦となったJABA東京スポニチ大会では、強豪のENEOSを相手に5回を投げて無失点と好投。
この時のピッチングについて当時のノートにはこう書かれている。
「社会人としてはまだ細いが、それを感じさせないボールの勢いがある。力みなくゆったりとしたモーションで楽に腕が振れ、リリースに力が集中。フォームとボールの勢いのギャップが大きく、そのせいで打者は差し込まれる。
ここ一番でギアを上げると140キロ台後半をマーク。フォームの動きにメリハリがあり、しっかりためを作ってからスムーズに体重移動できる。無駄な動きがなく、球持ちも長い。左右のコントロールも安定。
(中略)
110キロ台後半のカーブ、120キロ台中盤から後半のスライダー、120キロ台前半のチェンジアップすべてでカウントとれる。二回り目から140キロ近いカットボールも。もう少し内角に厳しく投げ切れるとなおよし」
この頃から竹丸の名前はプロのスカウト陣からも頻繁に聞かれるようになった。そしてその評価の高さを確信したのが2025年6月17日に行われた都市対抗予選のHondaとの試合だった。
会場となった大田スタジアムのバックネット裏は右を見ても左を見てもスカウトだらけという状況で、確認できた限りでもその数は42人にも達していたのだ。これは甲子園などの全国大会を除けば異例の多さである。
なかでも熱心だったのが巨人で、合計10人ものスカウトが姿を見せていた。その前で竹丸は6回途中まで1失点と好投。チームを勝利に導いている。これだけ注目される前で結果を残したことで、高い評価は不動のものとなったと言えるだろう。
阿部巨人のキーマンへ──優勝争いを左右するルーキーの可能性
実際にドラフトでは巨人が早々に1位指名を公言。結果的に単独での指名に成功し、ここまではその期待通りのピッチングを見せている。
2026年の巨人は阿部慎之助監督の契約最終年。優勝が義務付けられていると言われるが、そのキーマンの一人として、今後も見事な投球を見せてくれることを期待したい。
■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

