PERSON

2025.09.11

巨人・泉口友汰、首位打者争いとオールスターで存在感を示すショート

首位打者争いとオールスター選出で躍進の年。巨人ショート泉口友汰(いずぐちゆうた)が、スターとなる前夜に迫った。

青山学院大時代の泉口友汰。

セ・リーグで首位打者争い

首位の阪神に大差をつけられ、セ・リーグ連覇は絶望的になっている巨人(2025年9月5日現在)。

しかし、そんなチームでも明るい材料がある。特に野手で2025年最もブレイクした選手といえるのが、2年目の泉口友汰だ。

開幕一軍入りこそ逃したものの、今季初スタメンとなった4月9日のDeNA戦でいきなりホームランを放つと、その後はショートのレギュラーに定着。7月に行われたオールスターゲームにも監督推薦で選出され、後半戦も調子を落とさず、現在セ・リーグで首位打者争いを繰り広げている。

大阪桐蔭時代から光った守備力

そんな泉口は和歌山県の出身で、高校は全国トップの強豪である大阪桐蔭に進学。2年秋からレギュラーに定着している。

初めてそのプレーを現地で見たのは、2016年10月2日に行われた秋の大阪府大会の対汎愛戦だった。泉口はこの試合で2番、セカンドで出場。3回の第2打席にライト前への先制タイムリーを放つと、5回の第3打席ではライトへのツーベースで追加点の足掛かりとなり、チームの勝利に貢献した。

打撃でも光ったが、それ以上に目立っていたのが守備だ。シートノックからその動きの良さと正確な送球は、レベルの高い大阪桐蔭のなかでもひと際目立つ存在だった。

当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「背番号6だがセカンドで出場。左右のフットワークの良さが目立ち、余裕を持って打球を処理することができている。ハンドリングも柔らかく、捕球から送球の流れもスムーズでスナップスローも上手い。

(中略)

打撃は少し非力な印象だが、タイミングをとるのに無駄な動きがなく、スムーズに振り出してミート力は高い。ツーベースで二塁到達7秒台(7.86秒)と脚力も備えている」

ちなみにこの試合でショートを守っていたのは1学年下の根尾昂(元・中日)。肩の強さなどは根尾のほうが目立っていたものの、全体的な守備については明らかに泉口の方が上だったことをよく覚えている。

大学・社会人での苦難と成長

3年時には春夏連続で甲子園に出場し、春は全国制覇も経験。守備は相変わらず素晴らしいものがあったものの、打順は下位を打つことが多く、最初に見た時の非力な印象は変わらなかった。

高校卒業時点ではプロ志望届を提出せず、青山学院大へ進んだ。

大学でも1年春からその守備力が買われてリーグ戦に出場し、秋にはショートのレギュラーに定着。レベルの高い東都二部リーグで2年春秋、3年秋と3季連続で打率3割をマークするなど着実にレベルアップを果たす(3年春は新型コロナウィルスの影響でリーグ戦が中止)。

しかしこの後、泉口は大きな挫折を味わうことになる。

4年時にはドラフト候補として注目される存在となっていたが、初めて昇格した東都一部リーグで打率1割台に低迷したのだ。

4年秋には巻き返して一部でも3割近い打率を残してベストナインも受賞したが、結局大学卒業時にもプロ志望届を提出することなく社会人へ進むこととなった。

NTT西日本はチーム数の多い近畿でも常に都市対抗に出場している強豪だが、泉口はそんなチームでも入社早々にショートのレギュラーに定着。公式戦でも2年続けて3割を超える打率をマークするなど活躍し、2023年のドラフトでついに巨人入りを果たした。

ちょうどこのドラフトが終わった後、巨人の水野雄仁スカウト部長と現場で話す機会があった。泉口を評価したポイントを聞くと、大阪桐蔭、青山学院大、NTT西日本と高校から社会人まで一貫して強豪といわれるチームでプレーしており、そこでレギュラーを守り続けた点が大きかったとのことだった。

巨人という注目度の高いチームで活躍するためには、そのような経験は大きなプラスとなったはずである。

侍ジャパン候補としての将来性

そして泉口についてもう一つ印象深いエピソードがある。

侍ジャパントップチームの井端弘和監督がNTT東日本のコーチを務めていた時のことだ。オープン戦で対戦した当時青山学院大の泉口のグラウンドに入ってくる様子を見て、この選手は只者ではないと感じたというのである。

実際にスカウトも選手の何気ない所作もチェックするというが、泉口には一流に通じる雰囲気があったのだろう。

侍ジャパントップチームのショートといえばここ数年は源田壮亮(西武)が担ってきたが、2025年は大きく成績を落としている。2026年のWBCでは他の選手が任せられる可能性も高い。その有力候補の一人に泉口がなることは間違いないだろう。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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