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2025.12.16

岸谷蘭丸「金持ちの“ボンボン”だからこそ、実現できることがあると信じたい」【岸博幸対談】

慶應義塾大学教授・岸博幸先生が、各分野で活躍するいま気になる人と対談する不定期連載企画「オトナの嗜み、オトコの慎み」。今回の対談相手は、MMBH COOの岸谷蘭丸氏。

岸谷蘭丸氏と岸博幸氏

嫌なお金の稼ぎ方は絶対にしたくない

 今回の対談相手は岸谷蘭丸さんです。

蘭丸 2001年生まれの現在24歳です。早稲田実業中等部を卒業し、ニューヨークの高校に進学しました。大学受験でアメリカのフォーダム大学に受かりましたがそこには行かずに、1年浪人してイギリスのユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンとイタリアのボッコーニ大学に合格。今はボッコーニ大学に在籍しながら、事業を進めています。

 興味を引く学歴ですね。早稲田は中高一貫校。なぜ、高校からニューヨークへ?

蘭丸 僕は同じ場所に止まっていることがすごく苦手。このままエスカレーターで高校に行くと、思考力が低下してしまうんじゃないかと恐怖を感じました。両親は走り続けるタイプ。僕も物心ついた時には同じようになっていたんです。

 ボッコーニ大学はヨーロッパでトップクラスのビジネススクールですね。実際に住んでみて、イタリアの印象は?

蘭丸 日本に似ているなという印象。日本人が手で握ったおにぎりが好きなように、イタリア人はおじいちゃんおばあちゃんが手仕事で焼き上げたパンが好き。農業も家族を中心にした小規模経営が多く、価値観がすごく似ているなと。日本の農業政策は大規模化、効率化によるオランダ型を目指していますが、イタリア型のほうが合うと思う。

 イタリア留学は大きな財産ですね。蘭丸さんは大学に在籍しながら事業にも乗りだしています。

蘭丸 2023年2月に専門塾「MMBH」を設立。日本人に向けた、海外の高校、大学、大学院など国際教育機関に合格するための受験対策や教育指導、TOEFL、IELTSなどのスコアアップ戦略などを行っています。

 どうして教育という分野を選択したのでしょうか。

蘭丸 教育の現場には嫌なお金の流れ方が横行しています。例えば英語の資格取得試験。特に我々が扱うTOEFLやIELTSなどの高レベルのテストではまだまだ対策機関や情報が少なく、一括で100万円前払いの講座などが平気で存在します。そして対策法が確立されていないが故に目標点達成のために5回も10回もテストを受けることも普通。そうした搾取ともいえる構造を変え、僕のように無駄なサービスにお金を払ってしまう被害者を減らしたいし、幅広い経済状況からアクセスできる教育環境にしたい。そんな思いでMMBHを立ち上げました。まあこれも最近になってようやく固まってきた事業方針ですが(笑)。

 正義感に満ちた正しい事業の進め方ですね。

蘭丸 みんな、こんな大人になりたいという「かっこいい自分像」を持っていますよね。それは僕のなかにもあって、その理想像に近づきたいし、ゆくゆくは自己満足だけではなく傍から見てもかっこいいと思われる人間になりたい。美学みたいなものを持っている人たちに憧れちゃっているのかもしれません。

 理想の自分像とは?

蘭丸 大きなこだわりに「嫌なお金の稼ぎ方はしない」というのがあります。人を欺いたり、搾取したりしてまで、お金を得たくはない。そんな思いは「ボンボンの甘い遊び」と言われます。確かにそうかもしれません。でも、金銭的に不自由のないボンボンだからできることがあると信じたいです。

 お金を稼ぎたいという意識はない? 

蘭丸 お金はめちゃめちゃ稼ぎたいです。けれども、お金だけのために働くのでは頑張れない気がします。今の事業は生活のためではなく、ライフワークに近い気がします。儲けたいだけなら、近道はたくさんある。でも、愛情の持てない分野で働いて儲けても、あまり気持ちはよくないだろうなと。

 蘭丸さんが偉いのは、その考え方や頑張っている姿を動画やSNSで発信し、ロールモデルになろうとしていること。出る杭はすぐに打たれてしまう時代に、腹が据わっている。

岸谷蘭丸氏
岸谷蘭丸/Ranmaru Kishitani
MMBH COO。2001年東京都生まれ。イタリアのボッコーニ大学に在籍しながら、海外トップ大学受験の専門塾「MMBH」を設立。「Liberty English Academy」特別講師も務める。インフルエンサー、タレントとしても注目を集める。

30歳になったら東京都知事選に出馬します

蘭丸 今の日本に必要なのはロールモデル。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクがいなかったら、IT業界へ進む人はこんなにいなかったはず。成功者が成功者として社会のなかで扱われ、かっこいい存在にならないと未来はない。

 蘭丸さんは「将来、東京都知事になりたい」と表明しています。その理由は。

蘭丸 政治家には国会議員という選択肢もあるが、「自民党に入って五期生まで行ったら大臣になれます」のようなJTCノリだと、早稲田にも3年しかいられなかった自分には絶対向いてないだろうなと思います(笑)。その点、東京都知事は一発勝負。それでいて裁量権は非常に高い。30歳になって被選挙権を得られたら、即、都知事選挙に出馬します。

 アメリカ、イギリス、イタリアといろいろな国を見てきて、最終的に日本を拠点にしたいと考えた?

蘭丸 僕がニューヨークにいた2016年から2020年までの4年間はBLM(ブラック・ライブズ・マター)の全盛期。同時にLGBT運動も活発化し、「左じゃない者、人にあらず」という感じでした。人種やジェンダーによる差別をなくし、多様性を認められる社会に、といえば聞こえはいい。でも同時にアメリカでは白人男性を頂点に黒人、ヒスパニックで構成されるピラミッド構造があり、アジア人の存在は無視されている。それもあってか、僕はBLMやLGBTの流れに共感できず、ちょっと僕は隅っこから見ていようかなと(笑)。

 それで蘭丸さんは左には行かなかった。

蘭丸 僕というより、日本が踏みとどまったと思います。アメリカは伝統的な文化や経済が壊れてしまったが、日本はまだギリギリのところで戻れる状態。日本は“ラストマンスタンディング”になれる可能性があると感じます。

 日本は神道をベースにした国で、地域社会を重視する傾向が強い。人々に日本独自のいいものを守っていこうという感覚が根づいているのでしょうね。

蘭丸 そのとおりです。伝統を守りつつも、いい意味で現状維持を図っていくことが、今の日本にもっとも必要なことだと感じています。

岸博幸氏
岸博幸/Hiroyuki Kishi
1962年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。経済財政政策担当大臣、総務大臣などの政務秘書官を務めた。現在、エイベックスGH顧問のほか、総合格闘技団体RIZINの運営にも携わる。

TEXT=川岸徹

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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