GOLF

2025.12.16

ついつい「インパクトで止まる」「当てにいく」スイングを改善して、方向性を安定させる方法

2025年PGAツアー最終戦は、わずかな一打が選手の未来を分ける極限の舞台となった。そのなかで初優勝を飾ったサミ・バリマキのスイングには、アマチュアゴルファーが抱えがちな「当たるのに安定しない」悩みを解決するヒントが隠されている。フェデックスカップ・フォールで交錯した希望と絶望、そしてショットの精度を高める“肩の縦回転”の使い方を解説する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン番外編/「なぜ当たっても曲がる?」PGA最終戦で見えた“肩の使い方”と安定ショットの答え

PGAツアー最終戦で交錯した希望と絶望

2025年のPGAツアー・フェデックスカップ・フォール最終戦、RSMクラシック(ジョージア州シーアイランド)が終了し、PGAツアーの年間スケジュールがすべて幕を閉じた。

来季の出場権を巡る「最後の椅子取りゲーム」は、まさに選手たちが人生を懸けて挑む戦場。

最終日、首位でスタートしたサミ・バリマキは、追い上げ勢の猛攻に耐え抜き66でスコアをまとめて、通算23アンダーでPGAツアー初優勝を飾った。フィンランド勢として史上初のツアー覇者となり、ランキングを74位から51位へ大きく押し上げてフィニッシュ。

優勝者に与えられる2年間のシード権に加え、フェデックスカップ・ポイントランキング51位から60位に与えられる翌シーズン序盤のシグネチャーイベント2試合の出場権もつかみ取った。

一方、最終ホールのパットがわずかボール1つ分カップ手前にショートし、痛恨のバーディ逃しとなったリー・ホッジスは4位タイで競技を終え、最終ランキングは101位。

最終戦スタート時は122位だっただけに、100位以内への“大逆転シード”まであと一歩のところで手が届かなかった。まさに、一打が選手人生を変えた瞬間だった。

フェデックスカップ・フォールが分けた明暗

フェデックスカップ・フォールは、プレーオフ終了時にフェデックスカップ・ポイントランキング51位以下だった選手にとっての“最後のチャンス”の場である。

制度変更により、従来125位まで認められていたシード枠は100位までに縮小され、選手たちは秋の7試合で自らの運命を切り拓くしかなくなった。まさに“生存権を争う舞台”であり、期待と不安が交錯する日々となった。

その象徴的存在となったのがマイケル・ブレナンである。

3部相当のPGAツアー・アメリカズで3勝を挙げ、推薦出場したバンク・オブ・ユタ選手権でいきなりツアー初優勝し、2年間のフル出場権を一気に勝ち取った。3部ツアーから1部優勝、そしてシード獲得――まさに現代版アメリカンドリームと言えるだろう。

飛躍を遂げたのはブレナンだけではない。アダム・シェンクはフォール初戦時133位というシード圏外の厳しい位置から69位までジャンプアップし、スティーブン・フィスクも140位から73位へ大きく順位を押し上げた。

どちらも圏外スタートという崖っぷちの状況から初優勝をつかみ取り、見事に2年間のシードを確保した。ビンセント・ウィーリー、チャド・レイミー、チャンドラー・フィリップス、トービヨン・オルセンらも100位圏外からシード権内への滑り込みに成功した。

さらに、フェデックスカップ・フォールで大きくブレークしたのがリコ・ホイだ。

プロコア選手権から長尺パターへスイッチするとパッティングが劇的に向上し、バンク・オブ・ユタ選手権の2位をはじめ4度のトップ10入りを記録。

ランキングをフォール初戦の106位から54位まで押し上げ、シード獲得だけでなく、ランキング51位から60位以内の「エーオン・ネクスト10」入りを果たし、序盤のシグネチャーイベント2試合の出場権まで引き寄せた。長尺パターにキャリアを救われたプレーヤーの系譜に、またひとつ名前が刻まれたと言っていい。

日本勢では、金谷拓実がバミューダ選手権3位をきっかけに順位を大きく伸ばし、フォール初戦時の134位から99位までジャンプアップ。最終戦で土壇場のシード獲得に成功した。

もちろん、美しい物語ばかりではない。実力者のマット・ウォレス、マックス・ホーマ、トム・キム、アダム・スコットらでさえ100位圏外に沈んだ。

実績も経験も一切通用せず、結果だけがすべてという残酷な現実が突きつけられた。光と影を併せ持つフォールを経て、来季、栄光をつかんだ者はさらなる高みを目指し、傷を負った者は再起をかけて挑むことになる。

バリマキのフォローに学ぶ、ショットが安定する「肩の縦回転」

RSMクラシックを制したサミ・バリマキのスイングで象徴的なのが、フォローで右肩が下がりながら前に出ていく“肩の縦回転”だ。

この動きは、アマチュアゴルファーが陥りがちな「インパクトで止まる」「当てにいく」スイングを改善する大きなヒントになる。

多くのアマチュアゴルファーはフォロースルーまで意識が回らず、インパクトで「ボールに当てにいく」動きになりやすい。いわゆる“点”でのインパクトだ。

しかし、バリマキのように肩を縦に回転させてフォロースルーまで振り切れるようになると、インパクトを“ゾーン”でとらえられるようになり、ショットの方向性は大きく向上する。

ポイントは、右肩を「下げながら回転させる」感覚である。

切り返しで左足に踏み込み、その後の左サイドの抜重動作に合わせて右肩が下がりながら前へ回転する。この一連の連動によってインパクトゾーンは低く長くなり、フェース面の安定性が増すぶん、ショットの精度が飛躍的に高まる。

練習法としては、右手でクラブを握り、左手で右肩を押さえたままアドレスし、左サイドの抜重に合わせて右肩が下がりながら回転する感覚をつかむのが効果的だ。左手で右肩を軽く押し下げつつ、前へ回転させるようにアシストしてもよい。

インパクトで動きを終わらせないように、フォローで右肩が下がりながら前へ出て、回転し続けていく意識を持つことが重要だ。この動きが体に定着すれば、バリマキのような切れ味鋭いアイアンショットに一歩近づくことができる。

ショットの精度を高める“肩の縦回転”の使い方の動画解説

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=AP/アフロ

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