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2023.01.26

WBCメンバー・源田壮亮(西武)が日本一のショートストップになるきっかけとは

ダルビッシュ有、大谷翔平、鈴木誠也が選出されるなど、歴代最強との呼び声が高い2023年WBC(ワールドベースボールクラシック)の侍ジャパン選出メンバー。なかでも話題に上がるのが、守備の花形・ショートを任されるであろう西武ライオンズの源田壮亮(げんだそうすけ)だ。今回は、5年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得している守備職人、源田がスターとなる前夜に迫る。連載「スターたちの夜明け前」とは……

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写真:長田洋平/アフロスポーツ

5年連続ゴールデン・グラブ賞! 西武・源田の知られざる社会人時代

2023年の野球界で最初の大きなイベントと言えば3月に行われるWBCである。1月12日までに13人の日本代表選手が発表されたが、内野手の要として期待されているのが源田壮亮だ。源田は2016年のドラフト3位で西武に入団。1年目から全試合フルイニング出場を果たして新人王に輝くと、その後も不動のレギュラーとして活躍し、2年目の2018年からは5年連続ゴールデングラブ賞を受賞するなどパ・リーグを代表するショートへと成長しているのだ。特にその守備は球界でもナンバーワンの呼び声が高く、2018年にマークした526補殺はショートとしてのプロ野球歴代最多記録である。

そんな源田だが、大分商時代は全国的には全く無名の存在で、本格的な野球は高校までで終わりにしようと考えていたという。実際にプレーを初めて見たのは愛知学院大進学後、1年秋に出場した明治神宮大会の対佛教大戦だったが、この試合で源田は3打数ノーヒットに終わり、当時のノートにも源田のプレーについては何もメモが残っていない。この大会でチームは決勝進出を果たしたものの、源田自身は4試合で11打数1安打と結果を残すことはできなかった。

ようやく源田のプレーに注目するようになったのは大学4年になってからだ。春のリーグ戦では攻守にわたる活躍でチームの優勝に大きく貢献し、自身もMVPを受賞。リーグ戦後に行われた全日本大学野球選手権でも準々決勝の対福井工大戦では先制ソロを放つなど、4試合で5安打、5盗塁を記録し、チームを準決勝進出に導いた。当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「シートノックから一人だけ動きが違い、一つ一つのプレーに躍動感があるのが素晴らしい。打撃も昨年までは非力で合わせるだけという印象だったが、しっかり振りぬけるようになった。重心を前に移動しながら体の前でさばくスタイルだが、右肩がギリギリまで開かずトップの形が安定しているので外の逃げるボールにもついていくことができる。体の近くから振り出し、スイングの軌道も悪くない。走塁もただ足が速いだけでなく、スタートの思い切りと判断の良さも光る。走攻守高いレベルで三拍子揃う」

華麗な守備と俊足を磨いた社会人時代

続く4年の秋も愛知・東海・北陸三連盟王座決定戦で敗れて明治神宮大会出場を逃したものの、リーグ戦では春を上回る成績を残している。本格化したのが4年からということもあってプロ志望届は提出せず、トヨタ自動車に進むこととなったが、この時点でもプロ志望なら指名されていた可能性は高かっただろう。
しかし社会人ではそのまま順風満帆でプロ入りしたわけではない。大学4年時にだいぶ力強さが出てきたと感じたバッティングが、再び非力な印象に戻っていたのだ。

1年目から試合には多く起用されていたが、都市対抗予選では6試合に出場してわずか2安打に終わり、本選では代走でと守備固めの出場のみとなっている。ドラフト指名解禁となった2016年は3試合プレーを見たがそのうち2試合は9番で出場。放ったヒットは2本で、バントをする機会は4度を数えていることからも、完全に守備を期待されての起用だったことがよく分かる。当時の担当スカウトもプロではレギュラーというよりも、二遊間のバックアップ要員として考えていた球団が多かったようだ。

ただそんな中でも3位という高い順位での指名を勝ち取ったのは、守備と走塁に関して更にレベルアップを果たしていたことも大きかったのではないだろうか。2年目の都市対抗本選、対七十七銀行戦のノートには以下のようなメモが残っている。

「足は見る度に凄みが増しており、普通のショートゴロがあわや内野安打。ショートの守備も社会人の中でもプレーのスピード感が他の選手とは圧倒的に違う。完全に内野安打かと思われた打球を驚くべき出足と持ち替えの速さでアウトに。守備と走塁はプロでも勝負できる」

ちなみにこの試合で源田が放ったショートゴロの一塁到達タイムは3.76秒をマークしている。一塁到達タイムは4.00秒を切ればかなりの俊足と言われており、3.7秒台というのはなかなか見られる数字ではない。少し走り打ちになっていたこともあるが、足をアピールしようという意識が強かったことも確かだろう。

侍ジャパンでは長年ショートのレギュラーだった坂本勇人が故障も多く苦しくなっているだけに、源田がショートの一番手となる可能性は極めて高い。2021年の東京五輪では内野の控えとしての扱いだったが、2023年のWBCではレギュラーとして攻守に躍動する姿を見せてくれることを期待したい。

Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

連載「スターたちの夜明け前」とは……
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てる!

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TEXT=西尾典文

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