政治家として世に出た頃から、杉村太蔵氏には「軽薄でお調子者」というイメージがつきまとってきた。だが実際は、投資家として大成功を収め、地方創生にも力を注ぐ実業家という顔も持つ。杉村氏が今の成功を手にするために実践してきたことを探る。連載第3回。【その他の記事はこちら】

杉村太蔵が考える、AI時代に絶対必要な力
2011年にコメンテーターとして初めて『サンデー・ジャポン』(TBS)に出演してから今年で16年目になる杉村太蔵氏。現在、同番組と『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)の準レギュラーのほか、『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)にレギュラー出演している。いずれも生放送だが、驚くことに、これまで一度たりとも「発言の訂正」をしたことがないという。その理由は、「どんなテーマも一次情報にアクセスし、その内容を頭に叩き込んで臨む」ためだ。
「たとえば、『2月24日にトランプ大統領が議会で一般教書演説をしました』というニュースが発表されたとします。これは、二次情報です。二次情報は、どこを切り取り、どうまとめるか、発信者によって加工されたものなので、その情報だけを鵜呑みにするのは非常にリスキー。なので僕は、必ず一次情報である一般教書演説そのものに目を通します。
元ネタは“加工”されていないので正しい情報がとれますし、理解も深まりますからね。二次情報は『トランプ大統領が一般教書演説を行った』という一次情報のリソースを得るために使うもので、そこで満足してはダメだと思いますよ」
世の中の原則は何か、問題の根本は何か、本質はどこにあるのか。「原則・根本・本質という3つの視点を大事にしている」とも杉村氏。
「僕の専門分野は経済と金融なので、よく『高市政権の誕生で、今後の日本経済はどうなると思いますか』と聞かれます。それは、原則を考えれば予測できること。自民党が圧勝したので、自民党が掲げた政権公約が実現する可能性が極めて高まります。では、自民党はどんな政権公約を掲げていたのか。ご存じない方が多いと思いますが、実は自民党の公約って“359”もあるんですよ。僕はそのすべてに目を通し、頭に入れています。
ついでに申し上げると、内閣総理大臣は、国会の冒頭で必ず施政方針演説を行います。で、これに基づいて経済財政諮問会議が開かれ、そこで、これからの日本経済どうしようというのが議論されるわけです。この議事録はすべて公開されていますし、それをまとめたのが『骨太の方針』。だから、『骨太の方針』を読み込み、根本や本質が何かを理解すれば、誰でも、日本経済の先行きがある程度読めるはずですよ」
「活字を読めるかどうか」が大きな差を生む
「骨太の方針」は、表紙や目次を除き、第1章から4章まで全50ページで構成されている。論文ほど難解ではないものの、ぎっしりと文字が並び、硬い表現が目立つあたり、いかにもお役所文書といった様相だ。全文に目を通すことを想像しただけでも、正直、怖気づいてしまう。
「すでに兆候はありますが、今後さらにAIが台頭すれば“要約時代”に入ります。目にする文章の多くが要約バージョンとなれば、長い文章を読む力のない人が益々多くなるでしょう。一次情報ではなく、誰かがまとめた二次情報、それも超短いバージョンのものに、さらりと触れただけで良しとする人が増えるなか、元ネタにアクセスし、長文を読み解ける能力のある人は貴重な存在になることは間違いありません。
同年代を見て実感するのは、格差が生まれる大きなポイントのひとつは、長い文章が読み、理解できるかどうかだということ。これからの時代、活字を読めるかどうかは、さらに大きな差を生むと思いますよ」
では、その力はどうすれば身に着くのだろうか。
「これはもう、トレーニングするしかありません。マラソンを走れるようになるのだって、まずは短い距離から始め、体力をつけながら少しずつ距離を延ばしいきますよね。それと同じです」
掘れば掘るほど、杉村氏からは意外な一面が伺える。第4回は、「フリーランス界の頂点」と自負する理由と「飲み会や会食に参加しないわけ」を語ってもらう。
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杉村太蔵/Taizo Sugimura
1979年北海道生まれ。筑波大学中退後、オフィスビルの清掃員を経て、外資系証券会社に勤務。2005 年、自民党公認候補として衆議院議員選挙に立候補、当選(2009年7月で任期終了)。2010年7月、参議院議員選挙に立候補するも落選し、その後はタレントとして活動する一方、投資家としても手腕を発揮。2022年、地元である北海道旭川市に「旭川はれて屋台村」をオープン。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程所定単位取得退学。自身の投資術を綴った著書『杉村太蔵の推し株 「骨太」投資術』(文芸春秋)も好評。

