政界から芸能界に転身した後、「薄口評論家」としてブレイクした杉村太蔵氏。この肩書を喜んで享受している裏には、“底辺を生きてきた”からこその哲学があった。連載第2回。【その他の記事はこちら】

政界でも芸能界でも組織の末端を歩んできた
2010年、杉村氏は参議院選挙落選をもって政界を引退した。国会議員としての活動はわずか4年だったが、独特のキャラクターと知名度の高さをマスコミが放っておくはずがない。2011年頃から、政治評論家的な立ち位置で、ワイドショーや情報番組から出演をオファーされるようになる。
そのひとつが、現在も準レギュラーとして出演している『サンデー・ジャポン』(TBS)だ。最初の出演回で、MCの太田光氏から「内容が薄い」と指摘され、翌週から肩書が「薄口評論家」に。これに対し、杉村氏は、「当時は頭にきましたが、それが大ヒット商品になりました」とさまざまな場面で語っているが、実際どう思っているのだろう。
「薄口評論家という肩書のおかげで、メディアに出続けられているのは事実ですからね。いわば、この呼び名はマネタイズの源泉。それに、僕は自分に大満足しているし、常に自信満々なので、人からどう評されようと全く気にならない。認めてもらいたいといった承認欲求なんて、皆無ですよ。
……人間って、他人をバカにしたいというか、下に見たい生き物じゃないですか? 良いとか悪いではなく、これは人間の本質だと思います。杉村太蔵をバカにすることで、優越感に浸りたいんですね。でも、そういう人は、アイツをつぶしてやろうとか、薄口評論家という枠を奪ってやろうなんて考えない。社会的立場が低ければ、誰からも警戒されないし、立場を脅かされる心配もありません」
そう笑う杉村氏に、悲壮感は皆無。それどころか、余裕すら感じられる。
「清掃会社、証券会社、政界、芸能界と、僕はいろんな業界で仕事をしてきましたが、共通しているのは、常に組織の端っこ、末端にいたということ。清掃会社では派遣の清掃員で、証券会社では雑用係の契約社員、政界でも新人の上に最年少だから、700名以上いる国会議員のなかで間違いなく最下層。芸能界にしても、僕はフリーランスで、どこの事務所にも所属していませんからね。タレントとして認められているのかどうか怪しいし、テレビ局にすればいつでも首にできる存在です。そんな風に、『この中で、間違いなくオレが一番下!』と自覚してきたから、底辺としての生き方が自然と培われてきたのかもしれません」

1979 年北海道生まれ。筑波大学中退後、オフィスビルの清掃員を経て、外資系証券会社に勤務。2005年、自民党公認候補として衆議院議員選挙に立候補、当選(2009年7月で任期終了)。2010年7月、参議院議員選挙に立候補するも落選し、その後はタレントとして活動する一方、投資家としても手腕を発揮。2022年、地元である北海道旭川市に「旭川はれて屋台村」をオープン。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程所定単位取得退学。自身の投資術を綴った著書『杉村太蔵の推し株 「骨太」投資術』(文芸春秋)も好評。
上から目線では、人は話を聞いてくれない
揶揄や嘲笑に対して、必死になって反論することもなければ、見返えそうと躍起になることもない。それどころか、「底辺の人間に敵はいない」と「人間は他者をバカにすることで優位に立ちたい生き物である」という“二大真理”に気づき、それをフル活用することで、杉村氏は唯一無二とも言えるポジションを手に入れた。
「大事なのは、世間が自分をどんな風に見ているかを知り、その“視点“をうまく利用すること。僕の場合なら、『コイツはバカで軽薄な男だ』という先入観を持たれていることを自覚し、そこに上手にのる。間違っても、世間が抱いているイメージを壊そうとしてはいけません。自分よりも賢くて立派な人に、上から目線で話をされても誰も喜びませんからね」
杉村氏が言う通り、人間は、マウントをとってくる相手に対しては、反発心や対抗心を抱きがちだ。しかし、こちらに優越感を与えてくれる人物には、心を許し、好意すら抱くであろうことは想像に難くない。
清掃員時代、杉村氏に対して「ヘーイ、シャッチョー!」と声をかけてきた外資系証券会社の幹部に、「会長! 今日もあなたのためにトイレをピカピカに磨いておきました」と返したことや、2020年、失言連発だった新人議員時代にこっぴどく叱られた武部勤氏から、小泉政権時代の大物たちによる同窓会に呼び出されたというエピソードから察するに、杉村氏には、天性の“可愛げ”もあるのだろう。そうしたキャラクターが、運と成功を引き寄せるカギのひとつなのかもしれない。
「可愛げは確かに大事かもしれないけれど、それだけでは何の価値もありません。よくいるでしょ、『あなたのためなら、なんでもやります!』っていう人。確かに可愛げはあると思うけれど、そういう人に限って何もできない。ちゃんと能力があり、専門性を身に着けていないと、今の時代、生き残れないと思いますよ。可愛げだけでなんとかできるほど、令和8年は甘くありません」
第3回は、杉村氏が能力や専門性を磨くために行っていることについて話を聞く。
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