PERSON

2026.04.18

大学中退、選挙落選、薄口評論家。杉村太蔵「凹んだことはまったくない。我が人生、大満足」

小泉チルドレンとして世に出て20年以上。「薄口評論家」としてメディアで活躍し続ける一方、投資家として大成功し、地域創生事業にも取り組む杉村太蔵氏。振り幅の大きい半生に思えるが、「凹んだことはまったくない。我が人生、大満足!」と断言するのはなぜか。連載第1回。【その他の記事はこちら

大事なのは“今”。過去は一切振り返らない

杉村太蔵という名が初めて世に出たのは、2005年9月に行われた衆議院議員総選挙だった。郵政民営化を争点に、衆議院を解散した小泉純一郎氏に国民は熱狂。自民党は圧勝し、83人もの自民党初当選組、いわゆる“小泉チルドレン”が誕生したが、なかでも最も注目されたのが杉村氏だ。

杉村氏が“時の人”になったのは、26歳で最年少当選(当時)したという理由だけではない。

当選直後に駆け付けたマスコミに対し、「早く行ってみたいですね、料亭に」「国会議員の給料は2500万円以上。念願のBMWが買えますね」「国会議員はJR乗り放題らしいですよ。しかも全部グリーン車」などと、無邪気に発言。それが、「不謹慎だ」「政治をなめている」などと、世間から大バッシングされたためだ。

あれから21年。現在は、コメンテーターとして数々のワイドショーに出演しつつ、辣腕投資家として講演会や執筆活動を行うほか、出身地である北海道旭川の地域活性化を目指し、新規創業支援施設「旭川はれて」を運営するなど、実業家としての顔も持つ。

「我が人生、大満足です。人がどう思っているかはわかりませんが、僕自身は大成功しているつもりですし、実力以上の結果を出していると思っています」

キッパリとそう言い切る杉村氏だが、人生全てが順風満帆だったとは言い難い。スポーツ推薦で入学した筑波大学体育専門群は、6年間在籍したものの卒業に必要な単位が取れず、中退。就職活動はしたが正社員になることは叶わず、赤坂のオフィスビルに派遣の清掃員として働くことになる。

その時、ビルに入っていた外資系証券会社の役員と知り合ったのがきっかけで、同社の雑用係として勤務。当時の上司から「郵政民営化について調べろ」と言われたことが自民党の公選公募での出馬へとつながる……というように、その半生の振り幅は極めて大きい。そこから「大満足の人生」に転換するターニングポイントは、どこだったのだろうか。

「……うーん、考えたこともないですね。ターニングポイントという言葉はよく聞くけれど、『あれがきっかけだった』と断言できるようなものって、あるんですかね? いろんなことが重なって今があるというのが、自然なんじゃないかと思いますけど。そもそも僕は、過去は一切振り返らないんですよ。“今”が一番大切だから」

杉村太蔵氏
杉村太蔵/Taizo Sugimura
1979 年北海道生まれ。筑波大学中退後、オフィスビルの清掃員を経て、外資系証券会社に勤務。2005 年、自民党公認候補として衆議院議員選挙に立候補、当選(2009年7月で任期終了)。2010年7月、参議院議員選挙に立候補するも落選し、その後はタレントとして活動する一方、投資家としても手腕を発揮。2022年、地元である北海道旭川市に「旭川はれて屋台村」をオープン。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程所定単位取得退学。自身の投資術を綴った著書『杉村太蔵の推し株 「骨太」投資術』(文芸春秋)も好評。

与えられた場で活躍する自信がある

自らが、「こうしよう」「こうしたい」と心に決めて選び取ってきたというよりは、「選ばれてきた」人生だったと杉村氏。

選挙で選ばれなければ政治家にはなれないし、オファーがなければメディアに出続けることはできない。清掃員から外資系証券会社、そして衆議院議員からタレントに転身したのも、杉村氏のまじめな仕事ぶりと明るくユーモアあふれる対応を同社の幹部が気に入って、声を掛けられてのことだ。その道に進むかどうかを最終的に決断するのは自分だとしても、初めからそこを目指していたというよりは、訪れたチャンスに飛び込み続けた結果、今があるといった感じなのだろう。

「選ばれるということを初めて意識したのは、小学生の時。先生やクラスメイトから『お前ならできるよ』と推されて、児童会会長に立候補し、選挙の結果、選ばれたんですよ。その時、選ばれることのありがたさ、嬉しさと同時に、責任の重さみたいなものも感じて、『選ばれたからにはしっかりやろう』と思いました。

で、変な言い方をしますけど、その頃から僕は、与えられた場で活躍する自信があったんですよね。勉強も運動もできたからというのもありますが、なぜか自信満々だった (笑)。今時の言葉で言うなら、自己肯定感が高かったんでしょう。政治家、タレント、投資家、実業家と、いろいろチャレンジしたくなるのは、環境が変わっても自分ならできると信じているからです。あのまま外資系証券会社で働いていたら、間違いなくその世界でトップクラスになっていたと、今でも確信していますよ」

幼少期から自分に自信があった分、筑波大学を卒業できなかったことはショックだったのではないだろうか。そんな疑問を投げかけると、杉村氏からは、「卒業しようと思えばできました」という答えが返って来た。

「筑波って、他の学部の授業を受けられる自由度がある大学でしてね。入学後、体育以外の授業に興味が湧いてきて、経済学部や法学部など、ほぼすべての学部の授業に顔を出していたんですよ。そうしたら、卒業に必要な単位が取得できなかったというだけの話なんです。でも、まったく後悔はありません。あの時に学んだことが今の仕事に確実に生きていますから」

一見挫折に思えるような体験をしていても、自己肯定感を損なうことなく、人生を謳歌している杉村氏。第2回は、その理由を紐解く。

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TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=田中駿伍(MAETTICO)

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