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2026.03.09

エイベックス松浦勝人、“マーケットとして必ず意識”するタイがフェス大国になった理由

約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのこととは。【その他の記事はこちら】

海外の音楽フェスは地元が協力的

海外の巨大音楽フェスを日本に持ってくるんだったら、本拠地と同じものが再現できなければだめだと思っている。規模感、ピカピカのエレクトリック感、熱狂。そういったものが劣っていたら、次の年は本家に行けばいいや、と思われてしまうからだ。

でも、本家と同等か、それ以上の演出ができていれば、日本で開催されるフェスを楽しみにして、毎年きてくれる人が増えていく。2014年にULTRAを日本に持ってきた時、こだわったのがそこだった。その僕たちの熱意が伝わったのか、今では、VVIP席には毎年同じメンバーが集まってくる。もうDJの音楽なんてあまり気にしてなくて、シャンパンを開けて楽しんでいる。それでいい。音楽を楽しみたい人、踊りまくりたい人、いつものメンバーで騒ぎたい人。そういう色んな6万人が集まることで、ULTRA JAPANは成り立っている。

ただ、僕たちがもっともやらなければいけないのが、地元の理解を得ること。ULTRA JAPANをやると、2日間で6万人くらいがお台場に集まる。音も出る。お台場で生活をしている人から見れば迷惑でしかないと思う。だから、地元を回って挨拶をし、説明し、理解を求めるということを丁寧にやっている。こういう地元の理解が得られるかどうかは、音楽フェスにとってとても重要なことだと思う。

海外の音楽フェスは、地元がすごく協力的だと感じる。ULTRAの本家はマイアミのベイフロントパークで開催される。ちょうどお台場と似たようなロケーションで、周りにはオフィスビルもあるし、居住用のマンションもある。でも、クレームはまったくないらしいんだよね。週末開催だから、オフィスに人がいないということもあるかもしれないけど。

6日間で40万人が集まるトゥモローランドは、ベルギー郊外にあるド・スコーレという巨大なリクリエーション公園で行われる。近くには民家がたくさんあるんだけど、とても協力的。歓迎してくれている。むしろ、地元の人も一緒に楽しんでいる。

タイの寛容さ

タイは、世界3大EDMフェスのうち、EDC(Electric Daisy Carnival)とトゥモローランドが開催されるアジア唯一の国。クラブ文化も盛んだし、音楽フェスの主催者にしてみればマーケットとして必ず意識する。先日、EDCがプーケットで開催されたので見に行ってきた。プーケット国際空港からクルマで30分ほどのリズムパークで開催されるため、アクセスはものすごくいい。でも、1日に4万人くらいの人が移動するから、渋滞は覚悟していた。

ところが、びっくりするほどスムースなんだよね。大量の人が移動することを想定して、うまく対応をしている。タイだけでなく、東南アジアの国々は音楽フェスのような大規模イベントがあっても、混乱するようなことはあまりない。まあ、明け方になると、道端には酔っ払って倒れている人がいっぱいいるけど。でも事件になったという話は聞かないから、酔いが覚めたらちゃんと帰っているんだと思う。

日本の音楽フェスで同じ状況だったら問題になるけど、タイはそういうことにも寛容で、音楽フェスが終わった後の定番の光景になっている。

なんで、日本は厳しくて、タイでは寛容なんんだろう。色んな人に聞いてもあまり明確な答えは出てこないけど、結局、“お祭り”みたいなことが盛んなんだと思う。旧正月にみんなで水をかけ合う「ソンクラーン(水かけ祭り)」という伝統的なお祭りがあって、大人から子供まで水をかけ合って楽しんでいる。EDCやトゥモローランドが上陸する前から、タイ独自の音楽フェスもたくさんあった。

日本でフェスを開催すると、タイのフェスと時期が重なることが多くて、「タイで回してすぐ日本にきた」とか「終わったらすぐにタイに飛ぶ」というDJが多い。タイはそういうお祭りを受け入れる土壌があるのだと思う。でもよく考えたら、日本も、各地に何百年も前から続くお祭りがたくさんある。なかには危険を感じるほど激しいお祭りもあるけど、関係者や地元の人たちはそれを大切にして伝統を守り続けている。

ULTRA JAPANは昨年10回目の開催となった。コロナ禍で休止はあったものの、よく続いている。いろいろな人が集まってきてお祭り感が出てきているし、ULTRA JAPANだから行くと言ってくれる人が増えている。でも、僕たちが学ばなければならないことはまだまだたくさんある。

松浦勝人/Masato Matsuura
1964年生まれ。エイベックス会長、音楽プロデューサー。24歳でエイベックス創業、ユーロビートブームの発信源となる。浜崎あゆみ、TRFなどのプロデュースを手がけた。
X:@maxmatsuuratwit
YouTube:@masatomaxmatsuura

TEXT=牧野武文

PHOTOGRAPH=長尾真志

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