GOLF

2025.11.08

感覚的アドバイス「フォロースルーでヘッドを走らせる」の理解が間違っていないか?

「フォロースルーでヘッドを走らせよう」——。一度は耳にしたことがあるゴルフでのこのアドバイス。しかし、実際にはその“意識”がスイングのリズムを崩し、飛距離を落とす原因になっていることも多い。ヘッドを走らせるとはどういうことなのか? そして、本当に飛ばすために必要な動きとは。感覚に頼らず、スイング全体の流れから“ヘッドが自然に走る”仕組みを解説する。

吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン/「ヘッドを走らせる」意識が飛距離を落とす? 本当に飛ばすためのスイング理論

イメージを言葉で伝える難しさ

ゴルフスイングの感覚を言葉で正確に伝えるのは非常に難しい。

抽象的なアドバイスでも、上級者であれば「そういうことか」と感覚的に理解できる。しかし、その感覚を体験したことのない人には、言葉の意図が伝わりにくく、誤った解釈をしてスイングを崩してしまうこともある。

ゴルフを始めて数年が経ち、ある程度上達した頃に「あの言葉はこういう意味だったのか」と気づくことは珍しくない。そのような感覚的アドバイスの代表が「フォロースルーでヘッドを走らせる」だ。

上級者なら意図を理解できるが、経験の浅いゴルファーは「ヘッドを走らせるためにフォロースルーで力を入れればいいのか」と考え、ボールを打ち終わった後に手でクラブを加速させようとしてしまうかもしれない。

しかし、フォロースルーはボールを打った後の動きであり、その段階でスピードを上げようとしても意味がない。実際にそのように感じるのは、スイング全体がスムーズで減速しない証拠であり、クラブの遠心力が自然に働いている結果である。

つまり、よいスイングができたときに「ヘッドが走る」感覚が生まれるのであって、意図的に走らせようとすると、手や腕に余計な力が入り、かえってスピードを損なってしまう。

「クラブが走る」は結果にすぎない

フォロースルーでヘッドが走る感覚を得るためには、フォロースルーで力を入れたり、無理にクラブを速く振ろうとしたりする必要はない。

この感覚は、他のスポーツを思い浮かべると理解しやすい。たとえばボールを速く投げるとき、投げ終わったあとで力を入れることはない。リリースの瞬間に力を伝え終えたあとは、その勢いで腕が自然に振られ、加速しているような感覚になるだけだ。

ゴルフのフォロースルーも同じだ。ボールにエネルギーを伝えたあとは、その流れでクラブヘッドが自然に走るように感じる。これが「ヘッドが走る」感覚の正体だ。

つまり、「何かをしてヘッドを走らせる」のではなく、「ヘッドが走るようなスイングをする」ことが本質なのだ。

そのヘッドを加速させる原動力は「地面反力」にある。

切り返しでは左足で地面を押し、その反力が上半身を通じて回転エネルギーとなり、効率的にクラブへ伝わる。左腕が平行になる地点で力を加えるフェーズは終わり、そこから先は地面反力を受け取り、左サイドの抜重によって体を速く回転させる。

この動作によって、余分な力を使わずとも自然と「ヘッドが走る」スイングが生まれる。

ダウンスイング後半からインパクトにかけては、クラブをリリースし、遠心力によってヘッドが自然に加速していく。理想は、手や腕に余計な力みがなく、スムーズにクラブを振り抜ける状態だ。この区間は「力を加えるフェーズ」ではなく、「クラブに仕事をさせるエリア」と捉えると、フォロースルーでヘッドが走る感覚を得やすくなる。

どんなに優れたコーチでも、スイングの感覚を言葉で正確に伝えるのは難しい。そして、それを正しく理解するには、受け取る側にも一定の知識と経験が必要になる。

もしイメージがつかめないときは、「その感覚を得るために、どのようにスイングすればよいのか」を尋ねてみるとよい。アドバイスの意図を理解し、それを実現するための動きを意識して練習すれば、スイングは確実に変わっていくだろう。

「ヘッドを走らせる」スイングの動画解説はコチラ

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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