今回は、美しく飛距離を出すための運動連鎖を身につける練習ドリルを紹介する。

12人が初優勝を飾った2025年のPGA。ミンウー・リーが証明した実力
毎年、PGAツアーでは初優勝を果たす選手が誕生するが、2025年はトミー・フリートウッドをはじめ12人がPGAツアー初制覇を飾った。
そのなかでも特に印象に残っているのが、3月のテキサスチルドレンズ・ヒューストンオープンで、スコッティ・シェフラーらを1打差で下したミンウー・リーだ。彼はいつ勝ってもおかしくない完成度の高いスイングの持ち主であり、その実力を改めて証明した勝利だった。
ミンウー・リーはオーストラリア出身の27歳。2016年に全米ジュニアアマで優勝後、2018年にプロ転向。ちなみに姉は米女子ツアー(LPGA)で11勝を挙げているミンジー・リーである。
アジアンツアーや欧州ツアーで勝利を重ね、2023年の全米オープンでは5位に入るなど実力を認められていたが、ようやくPGAツアーでの勝利を手にした。
2023年から2年連続で日本開催のZOZOチャンピオンシップにも出場しており、プレーを覚えている人も多いだろう。2025年のベイカレント クラシックにも出場予定なので、ぜひミンウー・リーのスイングを間近で見てほしい。
飛距離と美しさを兼ね備える“無駄のないスイング”
ミンウー・リーのスイングは滑らかで、見た目には強く振っているように感じさせないが、平均314.4ヤード(15位)のドライバーショットを放つ。無駄のないシンプルな動きから生まれる飛距離に驚いた人も少なくないだろう。
美しさと飛距離を兼ね備えたスイングに共通するのは、スムーズな運動連鎖である。ゴルフスイングにおける運動連鎖とは、下半身から始まった力を、上半身、腕、そしてクラブへと順序よくつなげていく動きのこと。足の踏み込みで生まれたエネルギーがスムーズに流れることで、効率的に大きなパワーが生み出されるのだ。
この流れが滑らかであるほど、無駄なくスピードが伝わり、安定したショットにつながる。つまり、ミンウー・リーのスイングは体を動かす順序と方法が適切であるため、しなやかで力みのないスイングが実現している。
ゴルフスイングにおける運動連鎖で最も重要なのがダウンスイングだ。アマチュアゴルファーの多くは、上半身を使って振り下ろしがちだが、本来は下半身が先に動き、その後に上半身が追随してクラブを振り下ろす流れが理想だ。
これは野球やテニスにも共通する動きで、足の踏み込みから力を生み、その流れを腕やバット、ラケットに伝えることで強いボールを放つ。ゴルフも同じで、下半身が動き出すことで効率的にクラブヘッドへ力が伝わる。
“下手投げドリル”で運動連鎖を体に刻む
今回は適切な運動連鎖を身につける練習方法を紹介しよう。
野球をしたことがない人でも、下手投げでボールを投げた経験はあるだろう。速く、遠くへ投げようとすれば、自然に足を前に踏み出しながら腕を振る。この一連の流れはゴルフスイングとよく似ており、下半身の動きから上半身、腕、クラブへと力を伝える運動連鎖そのものだ。下手投げの感覚を思い出すことで、ゴルフに必要なスムーズな体の連動をイメージしやすくなるだろう。
練習方法は、右手だけでクラブを握り、下手投げでボールを投げるようにクラブを振る。スイング中は下半身を意識し、足を動かしてからクラブを振るように心がけよう。
ボールを下手投げする際は、後ろに腕を振りかぶりながら左足を上げ、目標方向へ踏み出して投げる。このとき、足の動きが先行し、右腕は遅れて振り下ろされる。
この流れと同じように、ゴルフではクラブを振り上げると同時に左足を動かし、切り返しで目標方向に踏み込むことを意識してほしい。少し早めに足を動かすくらいのイメージを持つと、適切なダウンスイングにつながるだろう。
投球動作では、左足が着地した後、地面からの反発を受けて伸び上がり、それとともにボールがリリースされる。ゴルフスイングでも同じで、左足を踏み込んだ後にクラブをリリースする。
このとき左サイドが伸び上がる動きを「抜重」と呼ぶが、タイミングを誤ると地面反力を十分に活かせない。いつまでも左足を踏み続けず、踏み込んだらすぐに抜重への切り替えを意識することが大切だ。
アマチュアゴルファーは、スイングの部分的な動きに意識が向きがちだ。もちろんそれも重要だが、体全体のスムーズな連動を意識することで、スイング全体が自然に良くなる。
運動連鎖を改善できれば、ミンウー・リーのような滑らかなスイングに近づき、飛距離も伸びるだろう。ぜひ下手投げの感覚を取り入れ、スムーズな体の動きを身につけてほしい。
美しく飛距離が出るスイングの動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。