ルーキーの台頭が目立った2025年のプロ野球。その一方で、2年目にして大きな飛躍を遂げた選手がいる。楽天の外野手・中島大輔だ。高校、大学時代は決してエリート街道ではなかったが、武器であるスピードと全力疾走を磨き続け、プロ2年目にして存在感を放った。123安打、22盗塁という数字の裏にある、成長の軌跡と転機を振り返る。

2年目で一気にブレイク。数字が示す中島大輔の成長
ルーキーの活躍が目立った2025年のプロ野球だが、その一方で2年目に大きく飛躍した選手がいたことも確かだ。そしてパ・リーグでその代表例と言えるのが中島大輔(楽天)である。
ルーキーイヤーは37試合に出場して28安打に終わったが、2年目は2025年4月下旬から外野の一角に定着すると、5月4日のオリックス戦では4安打を放つなどヒットを量産。シーズン終盤に少し調子を落として打率を下げたものの、いずれもチーム2位となる123安打、22盗塁をマークする活躍を見せたのだ。
ちなみに7月5日の日本ハム戦から9日の西武戦まで4試合連続でスリーベースを放ったが、これは1960年の長嶋茂雄(巨人)と並ぶプロ野球タイ記録である。
無名からのスタート。龍谷大平安時代に見えた原点
そんな中島は近畿で屈指の強豪である龍谷大平安の出身だが、早くから名前が知られていたわけではなく、2年夏に出場した甲子園もベンチ外となっている。
ようやくレギュラーをつかんだのは2年秋で、初めて現地でプレーを見たのは2018年10月27日に行われた近畿大会の対市和歌山戦だった。この試合で中島は1番、センターで出場。
第4打席まではノーヒットだったものの、同点で迎えた9回の第5打席にレフト前ヒットを放って出塁すると、後続のタイムリーでサヨナラのホームを踏み、チームの勝利に貢献している。当時のノートにもそのプレーぶりについて以下のようなメモが残っている。
「シートノックの時から動きの良さが目立ち、脚力は抜群。平凡な内野ゴロでも足を緩めることなく常に全力疾走しており、相手の守備にプレッシャーを与えられる。
打撃もタイミングをとる動きがゆったりしていて慎重で、ヘッドが下がらずにスムーズに振り出せる。ミート力は十分。速いストレートに力負けするのは課題で、もう少しパワーをつけたい」
「足」と「全力疾走」は最初から別格だった
この試合では3度の内野ゴロを放っているが、一塁到達タイムは4.02秒、4.08秒、4.06秒といずれも高水準の数字を記録しており、そのことからも当時からスピードが際立っていたことがよくわかるだろう。
ただ当時のプロフィールは178㎝、68㎏とまだまだ体つきは細く、打撃の力強さは物足りなかったことは確かだ。翌年春に出場した選抜高校野球の時には体重が73㎏まで増えていたが、最初に見た時の印象は大きく変わらず、初戦で対戦した津田学園のエース、前佑囲斗(現・オリックス)の前に5打数ノーヒットに抑え込まれている。
ただこの試合でも全力疾走する姿勢は変わらず、第2打席では相手のショートのエラーで出塁し、一塁到達タイムも4.08秒をマークしていた。
青学大での試行錯誤が、打撃を変えた
高校卒業後は青山学院大に進学。1年秋からリーグ戦に出場していたが(1年春のリーグ戦は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止)、2年秋までの3シーズンは打率2割前後となかなか結果を残すことができなかった。
ようやくドラフト候補として改めて注目するようになったのは3年春になってからだ。特に印象に残っているのが2022年4月13日に行われた中央大との試合である。
2番、センターで出場すると、3回の第2打席で岩本大地(現・セガサミー)から先制のソロホームランをライトスタンドに叩き込むと、続く第3打席でもピッチャー強襲のタイムリー内野安打を放ち、2安打2打点の活躍でチームを勝利に導いたのだ。
当時のノートにも中島の成長ぶりを示すメモが残っている。
「バットを引く動きが以前よりも良い意味で大きくなり、トップの形に緊張感が出てきたように見える。ボールをしっかり長く見て呼び込み、全身を使ってスムーズにフルスイングすることができる。
ヘッドの走りとインパクトの強さも昨年と比べて大きくアップ。脚力はあってもしっかり体を残してスイングできるようになった。(中略)足を緩めず、フライでも全力疾走する姿勢も素晴らしい」
このシーズン、中島は打率.298と結果を残して初めてベストナインを受賞。3年秋は少し打率を落としたものの2本塁打を放ち、4年時は春秋連続でベストナインに輝いた。
怪我を押して立った神宮の舞台。キャプテンとしての覚悟
そしてもう一つ大学時代の中島で印象に残っているのは4年秋に出場した明治神宮大会だ。
初戦の日本文理大戦で足首を痛め、準決勝の富士大戦は欠場。満足に走れる状態ではなかったというが、それでも決勝の慶応大戦に出場し、チームは競り負けたものの、1安打1盗塁を記録し、キャプテンとしてチームを牽引したのだ。
このような負けん気も、プロで活躍できている要因の一つではないだろうか。
楽天は4年連続4位となかなか優勝争いに絡むことはできていないが、ルーキーながらベストナインを受賞した宗山塁など楽しみな選手が出てきたことはプラス要因だ。
そんなチームのなかでも中島にかかる期待は大きいだけに、2026年は前年をさらに上回る活躍を見せてくれることを期待したい。
■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

