PERSON

2026.01.03

87歳ミッキー・カーチスの言葉「やりたくないことは、やったってよくならない」【和田秀樹対談③】

ロカビリー歌手、音楽プロデューサー、作詞家、俳優、レーサー、落語家、画家。常に変身し続けるミッキー・カーチスさんと医療の壁に挑み続ける和田秀樹さん。反骨同士の対談は静かで熱い“ロック”だった!【対談3回目

ミッキー・カーチスと和田秀樹

日本人はとらわれすぎる

和田 日本人は柔軟性が乏しい傾向にあります。年を取るとさらに強くなる。一度こっちと思うと、それしかないと思い込んでしまう。だけど年を取ったらいろんな制約がなくなるんだから、もっと自由になったほうがいいと思うんですよね。

ミッキー 結局、宗教の問題ですよ。最終的には。

和田 なるほど。

ミッキー そうでしょ。日本に限らず外国もそうだけど。

和田 そうですね。

ミッキー 俺は神道だから。神道はね、楽なんですよ。制約が何もないので。

和田 神道は八百万のあらゆる神を尊びますからね。ところが他の多くの宗教は一神教的なので、こうあらねばならない、という考え方になってしまう。

ミッキー うん。多神教のほうがいいよね。

和田 僕もそう思います。ミッキーさんのように音楽をやって、プロデューサーをやって、絵描きもやってというのは、やっぱり素敵な生き方です。その根底にはあれもよしこれもよしと、他を認める神道的な精神があるような気がするんです。

ミッキー ただ俺は勉強してないからさ。キリストの時代のカトリックとプロテスタントが分かれた宗教改革の時代があったじゃないですか。あの時代のことはよく知らない。だからそういう絵が描けないんですよ。

和田 でもどうなんですかね。絵は理屈じゃないでしょ。

ミッキー まあそうだね。ギリシャ神話は1枚だけ描いてる。メデューサをね。メデューサの頭の蛇をマングースが狙ってるという絵。

和田 なるほど(笑)。イメージで描かれるわけですもんね。やっぱりそっちのほうが面白い。なんか日本人って勉強しなきゃいけないって思いこんでる人が多すぎちゃうから。

ミッキー そうだよね。

和田 例えば僕は医者ですけど、習った通りの治療しかしない医者と、患者さんの病状や気持ちに応じて臨機応変な医療をする医者がいます。

ミッキー そっちのほうがいいよね。

和田 ねえ。そうしないといけないんだけど。どうもね。

ミッキー なんで、なんでも習った通りにやるんだよ。

和田 絵もそうですよね。

ミッキー そう。

和田 だからつまんない。

ミッキー 石膏のさ、ベートーベンの像みたいなのあるでしょ。美術学校に行くとああいうデッサンをみんなやる。そんなことをするのは世界でも日本だけですよ。

和田 おっしゃる通りです。学者なのか官僚の意向なのかはわかりませんが、日本は自発型のユニークな発想が衰えていくような教育なんです。

ミッキー そう。言った通りにやんないと点が取れないんだよ。

和田 理科の実験も「○○を何㏄、△△を何㏄入れてください。青に変わりましたね」っておままごとみたいな実験をしてる。実験というのは失敗して、原因を考えて組み直すものでしょ。

ミッキー そうそう。だけど最初から答えを教えちゃう。それはおかしいんだよ。

ミッキー・カーチス
ミッキー・カーチス
ミュージシャン・俳優。1938年7月23日生まれ。1958年、第1回「日劇ウェスタン・カーニバル」でロカビリー三人男としてブームを巻き起こし、同年、映画『結婚のすべて』で俳優デビュー。日本初の音楽プロデューサーとしてガロやキャロルなどを世に送りだす。ハーモニカや養蜂など幅広い趣味も。自伝書に『おれと戦争と音楽と』。

教育の影響は大きい

和田 ミッキーさんは人生そのものが実験的です(笑)。

ミッキー まあそうかもね。

和田 学校の教育の影響も大きいんですか?

ミッキー 俺ね、和光学園なんですよ。

和田 あー、いい学校ですね。

ミッキー だから自由なんです。実験室に火をつけてえらいことになったことがある(笑)。

和田 え、言っていいの(笑)。

ミッキー 本当にいい学校ですよ。全然自由。だって園長は戦争に反対して捕まってるくらいだから。すごい学校だよね。

和田 確か、作曲家の三枝成彰さんも和光学園でしたよね。

ミッキー そう。三枝は俺より2つ下かな。明日会いますよ。

和田 そうなんですか。

ミッキー 学校のイベントで明日スピーチやってくれって。しょうがねえ。もう最後だろうからやるよって引き受けた。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー等を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。『80歳の壁』『幸齢党宣言』など著書多数。

やりたいことをやる。やりたくないことはやらない。

和田 三枝さんも今は足を悪くされて。

ミッキー あ、そうなんだ。

和田 理由がユニークで。お年寄りは病気やケガで歩けなくなる人が多いんです。ところが三枝さんは、歩くのが嫌いだから歩けなくなっちゃった。

ミッキー あー、わかる。わかるよ。この年になったら歩くの嫌だから。

和田 周りはどう思うかわかりませんが、三枝さんご自身がそういう選択をしたわけです。だからそれでいいのだと思う。自分を貫いているのだから。

ミッキー 三枝はさ、モーツァルトの未完の曲を書き上げちゃうくらいのやつだからね。

和田 やりたいことをやる。やりたくないことはやらないという人生を貫いている人ですから。

ミッキー 最高だよ。だってやりたくないことは、やったってよくならないもん。

和田 おっしゃる通りですね。三枝さんも若い頃は商業音楽をやって大河の主題歌を何曲も書いたりされている。だけどある時期から、儲からなくてもいいからってオペラを始めて。

ミッキー 面白いのはさ、日本でクラシックをやってる人は、ポップスとかロックを商業音楽だと格下げして言うでしょ。だけどクラシックのほうがよっぽど商業音楽なんだよ。

和田 そうそう。だって王様とか宮廷に雇われたわけだから。

ミッキー フランツ・リストなんか国の音楽家とされている。それじゃ自由にできないもんね。

和田 その点、日本は庶民文化が発達した。そこは世界に誇るべきことですよ。浮世絵であれ小説であれ歌舞伎であれ、庶民から出てきたものですから。

ミッキー 音楽もね。

和田 はい。現代では特に漫画がそうです。庶民の支えで作り上げられた文化です。

ミッキー 日本独特よ。

和田 そういう日本特有の自由に発展した文化をもっと誇っていいと思うんですけどね。

※4回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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