83歳の今も免疫研究を最先端でリードする奥村康さんと、『80歳の壁』著者・和田秀樹氏の対談ををまとめてお届け! ※2025年2月掲載記事を再編。

1.「お金を借りてタバコを吸えば、ボケない」免疫学の第一人者が語る、長生きの秘訣

和田 お久しぶりです。いつお会いしてもお元気そうで(笑)。
奥村 あなたもね(笑)。
和田 今回はこの連載のテーマでもあるんですけど、ただ長生きするだけじゃなく、元気でイキイキ生きる秘訣のようなものをうかがいたいと思いまして。
奥村 それは大事ですよね。
和田 お医者さんって、検査データは重視するけど、元気かどうかはあんまり考えない。
奥村 でしょうね。
和田 僕はたくさんの高齢者を診て実感もしてるんですが、奥村先生の話をお聞きしたりもして、元気に生きるには、やっぱり免疫が大事だなと。
奥村 うん。
和田 日本はがんで死ぬ人が多いんだから、検査データを正常にするためにいろんなことを我慢するんじゃなく、免疫力、とくにNK細胞の活性を上げるほうがよっぽどいいんじゃないかと思うようになったんです。
奥村 そのとおりです。例えば、聖路加の日野原重明先生は105歳まで生きたんですが、100歳の時にNK細胞がどれくらい活性してるかを測らせてもらったんです。そしたらとても高かった。で、先生の同級生も調べさせてくださいとお願いしたら「もうみんな死んでる」と。
和田 NK活性の高い人しか長生きしてないんですね。
2.酒もタバコも無理に我慢するな。脳もメンタルも免疫力もストレスがよくない!

和田 僕はたくさんの高齢者を診てきましたが、禁煙すると元気がなくなってしまう人は少なくありません。逆に、ガンで余命宣告を受けたような人が、タバコを吸い続けてイキイキと長生きしたりする。
奥村 脳とメンタルには、タバコはいいですからね。
和田 タバコは肺ガンの元凶みたいに言われてるけど、そもそもこれも怪しいんですよ。だってタバコが原因とされる「扁平上皮ガン」っていうのは減ってるんですよ。一方で「腺ガン」は増えています。
奥村 そうですね。
和田 タバコは粒が大きくて気管支で引っかかる。だから気管支の「扁平上皮ガン」の原因になります。実際、タバコの喫煙率が3分の1に減ったら、その10~20年後くらいに、扁平上皮ガンも3分の1になったんです。それなのに、肺ガンになる人は年々増加している。それはやはり「腺ガン」がすごく増えているからです。腺ガンは、小さい粒が肺の先まで行って起こります。
奥村 そうそう。扁平上皮ガンが減っている以上に、腺ガンが増えてるんですよ。
和田 腺ガンの一因として考えられるは、交通渋滞です。
3.NK細胞が強ければ、ガンにもウイルスにも負けない。強さの尺度と強化法とは

和田 せっかくの機会ですから、免疫について簡単に説明してもらってもよろしいですか。
奥村 いいですよ。免疫っていうのはね、脳の神経細胞と違って、ものすごく長持ちするようにできてるんです。
和田 長持ち?
奥村 そう。100歳くらいではまったく衰えない。100歳の人にインフルエンザのワクチンを打つと効果があるのは、その証拠です。ただし、加齢によって低下する免疫もあります。
和田 免疫にもいくつか種類がありますからね。
奥村 そうです。免疫の仕組みについて話しておきましょう。
和田 はい。お願いします。
奥村 免疫力を担っているのは、白血球の中にあるリンパ球です。これが外から侵入してくるウイルスなどに対処します。リンパ球にはT細胞、B細胞、NK細胞があります。
和田 3種類の役割は、それぞれ違うんですよね。
奥村 はい。T細胞とB細胞は外的と闘う「国の軍隊」のようなものです。そしてNK細胞は「町のお巡りさん」。
和田 わかりやすい(笑)。
4.体を守るNK細胞を、より活性化させる方法とは

和田 NK細胞を強くするには、栄養も大事ですよね?
奥村 大いに大いに。栄養状態がものすごく関係します。
和田 日本人の悪い癖で、痩せてないといけないなど、変な思い込みがあるから食べたいものを我慢する。そんなことをしていたら、免疫が強くなるとは絶対に思えないですね。
奥村 コロナのときも、アメリカで亡くなった人の多くは、低所得者層の栄養状態の悪い人たちでしたからね。あまり知られていない話ですが。
和田 彼らはジャンクフードや炭水化物ばかり食べてるから太ってしまう。太っているので見た目には栄養状態がよさそうでも、タンパク質や必要な栄養素は不足してるんです。
奥村 NK細胞だけじゃなく、T細胞、B細胞もしっかり働くためには、栄養は必須ですよ。
和田 それと対談2回目で「修復機転」の話がありましたよね。体は少しいじめると必ず元に返ろうとする。これが大事だと。
奥村 そう。例えばね、みんな放射線は悪いと思ってるけど、じつは毎日浴びてるんです。浴びてるから、体の修復機転を使って頑張ろうとするわけ。
和田 低量の放射線は体にいいというのは有名な話です。鳥取の三朝温泉の話も有名です。三朝温泉は全国平均の3倍ぐらいの自然放射線量なんだけど、ガン死亡率は全国平均の半分なんですよ。
5.免疫力を上げる3つのコツ「ゲラゲラ笑う、悪口を言う、楽しい人といる」

和田 チームで仕事をしていると人に気を使うとか、いろんなストレスもあるでしょうね。何か心掛けていることはありますか?
奥村 ストレスの逃がし方は、いろいろありますけどね。一般の人によく言うのは「NK(細胞)を上げるにはゲラゲラ笑うのがいい」って。
和田 それは精神医学的にも言えることです。
奥村 笑うだけでNKが上がっちゃう。それはいろんな人が実験をして実証されています。吉本興業に協力してもらった実験もありましてね。観客に漫才や落語を楽しんでもらった後、採血をしてNK細胞の活性を調べた。そしたらね、NKが上がってるんですよ。アメリカの実験では、面白い映画を見せてゲラゲラ笑った人とクスクス笑った人を比べると、ゲラゲラ笑った人のほうがNKの活性が高いという結果も出ています。
和田 大笑いするのがいい?
奥村 日本の実験ではクスクス笑いでもNKが上がることがわかっています。そこは国民性の違いかもしれない。いずれにしても笑いが免疫を高めてくれるのは確かですよ。
6.日本人の免疫力が落ちた理由はコロナ対策? では、どうするか?

和田 コロナのニュースもね、「何人亡くなった」と総数でひとまとめにして言われたので、みんなびびったわけです。
奥村 そもそもね、若い人は死んでない。病気を持った人ばかりですよ。今、日本には80歳以上が1000万人くらいいて、そのうちの100万人ぐらいが、なんらかの病気を持って、寝たきりの状態です。コロナで亡くなった8~9割はその方たちです。
和田 そうですね。コロナよりインフルエンザのほうがよっぽど怖い。若い人も亡くなりますからね。
奥村 おっしゃる通り。
和田 不安を煽られるとNKは下がりますよね。
奥村 そりゃそうです。僕はコロナのニュースが出た当初から「ウイルスが日本に入ってきたら10年は居着く。だからムダに恐れるな」と言っていました。
和田 なるほど。コロナは弱いウイルスですからね。
奥村 そう。免疫からすると、弱くて、非常に印象の薄いウイルスだから、叩きようがない。だから居座る。ワクチンができても効かないんですよ。
和田 それ、わかりやすくお話しいただけますか。

