PERSON

2024.01.27

自分が面白くすればいいと言い切る野村周平が唯一、断る役とは?

映画『ミッドナイトスワン』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が、オリジナル脚本で描いた最新作、映画『サイレントラブ』。本作で名門家庭出身のピアニストを演じる野村周平のインタビュー後編では、自由に生きる彼の現在と未来を語ってもらった。#前編 ■連載「NEXT GENERATIONS」とは

野村周平

「面白くない脚本だったとしても自分が面白くすればいい」

映画『サイレントラブ』の取材にあらわれた野村周平は、伸びた髪を真ん中で分け、三つ編みにまとめていた。

「ここまで髪を伸ばしたことはなかった。いままでで一番長いんじゃないですかね。三つ編みの理由ですか? それは言えません(笑)」

この“ひとクセある”感じが野村周平という俳優の最大の魅力といえるだろう。

『サイレントラブ』のなかでも、声を発することを捨てた沢田蒼(山田涼介)と、目が不自由な音大生、甚内美夏(浜辺美波)と特殊な三角関係になる野村いわく「金持ちで音楽の才能があるろくでなし」を見事に演じている。

「どんなクソ男の役だろうと、声をかけていただければやります。脚本を読んで決めますなんて、おこがましい。そんな俳優じゃないですよ。

万が一、面白くない脚本だったとしても自分が面白くすればいい。どんな脚本でも僕が面白ければ、面白い作品になる、と思っています。アル・パチーノとかロバート・デ・ニーロとか、彼らが出ているだけで観たくなるじゃないですか。そういう俳優になれたらいいなと思っています」

そんな野村でもできない、断る役があるとしたら……。

「とんでもないキュンキュンドラマの王子様みたいな役はキツいなあ。それで女の子に壁ドンしたりする。無理だわ。演じていて気持ち悪くなっちゃうかも(笑)」

野村周平
野村周平/Shuhei Nomura
1993年11月14日兵庫県生まれ。2010年俳優デビュー。2012年、NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』で注目を浴びる。主な出演作に『ちはやふる』『帝一の國』『ビブリア古書堂の事件手帖』、『ALIVEHOON アライブフーン』(以上映画)、『僕の初恋をキミに捧ぐ』『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(以上ドラマ)など。2024年1月から放送中のテレビドラマ『婚活1000本ノック』にも出演している。

人間としての自分を鍛える

16歳でデビューして、さまざまな映画・ドラマに出演してきた。30歳になったいま、どんな俳優を目指しているのだろうか?

「20代はとにかく走り続けた。30代も走り続けますけど、同時に勉強もしていきたい。世間からはなんにも知らないバカみたいに思われているかもしれないけど、そうじゃないぞってところは見せていかないと。

バイクとかクルマとかにも詳しいけど、それだけじゃなくていろんなことを知っている大人になりたいですね。だから本も読むし、映画も観るし、それ以外にもいろんな経験値を積むことを意識しています。

人間としての自分を鍛えていけば、俳優の部分も鍛えられる。もっと幅の広い役を、奥深く演じられるようになるんじゃないかと思っています」

「ハリウッドはリサーチ不足ですよ(笑)」

そんな“人間トレーニング”のひとつとして始めたのが「ひとりキャンプ」。2023年のクリスマスもひとり、山のなかで過ごしたという。

「犬だけを連れて、クルマで。クリスマスにソロキャンプに行く馬鹿は他にいないんじゃないかな。車中泊したんですけど、さすがに寒かったです。みんなでワイワイとキャンプするのはあまり好きじゃないんです。本を読んだり、音楽を聞いたり、森の声に耳を傾けたり。ひとりでロードムービーやっているみたいで、ちょっとカッコいいなと思っているんです(笑)」

アメリカンバイクを操り、アメリカのヴィンテージカーに乗っている。アメリカで仕事をしたいとは思わないのだろうか?

「それはもう目標というよりも、いずれそうなるという感じで思っています。ハリウッドはまだ僕を見つけてない。リサーチ不足ですよ(笑)。

芝居は好きだし、楽しい。ごくたまに、宝くじで1000万円くらいあたるくらいの確率で、俳優もスタッフもすべてが完璧なシーンとかがあるんですよ。その瞬間に、この仕事をやってきて本当によかったなと思います。早くハリウッドに見つけてもらって、アメリカでそういう思いをしてみたい」

ひとクセある。だからこそ面白い。ハリウッド映画で自信たっぷりに演じる野村周平をぜひ観てみたいと思った。

■連載「NEXT GENERATIONS」とは
新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載。毎回、さまざまな業界で活躍する10〜20代の“若手”に、現在の職業にいたった経緯や、今取り組んでいる仕事について、これからの展望などを聞き、それぞれが持つ独自の“仕事論”を紹介する。

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TEXT=川上康介

PHOTOGRAPH=勝吉祐介

STYLING=清水奈緒美

HAIR&MAKE-UP=矢口憲一(駿河台矢口)

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