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2022.01.03

【角田信朗】極限の筋肉美を追求した“還暦の品格“。食事は何を?

1990年代後半から2000年代にかけて、格闘技ブームを巻き起こしていたK-1。選手として参戦し、引退後はK-1競技統括プロデューサーとしてその人気を牽引したのが角田信朗だ。K-1レフェリーとして、またある時はバラエティタレント、ある時は子供番組の司会者、ある時は俳優と、毎日のようにテレビに映る角田の姿を記憶している人も多いだろう。そして現在。テレビという主戦場を離れ、角田が選び進んだのは、極限の筋肉美を追求するボディビルダーの道。50代を過ぎてから築きあげた超絶な肉体は、角田から還暦世代へ向けた激励のメッセージだ。

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角田信朗「逃げていた現役時代の自分への"仕返し"」

凄まじい肉体である。彫刻のように絞り込まれながらも艶と張りがあり、色気さえも纏ったような筋肉だ。これで還暦過ぎというから、さらに驚く。この脅威の肉体の持ち主は、角田信朗。K-1競技統括プロデューサーとして1990年代後半の格闘技ブームの一翼を担った男だ。

「60ですけどって言った瞬間、相手が絶句するときが一番面白いですね(笑)。別にかっこいい身体は必要ないので。"かっこいい"の定義は人それぞれ違うし、自分でイイと思っていても、人から見るとそうでないことも多い。『若いもんには負けん!』みたいな変な見栄や独りよがりは、もういいかなって」

自分の年齢に対して抗うのではなく、年を重ねたからこその面白さに目を向ける。角田はこれを、アンチエイジングならぬ「ウェルエイジング」と呼び推奨するが、それを具現化した形が、この肉体なのだという。

「僕くらいの年齢の方は『年を取ると体力がついてこんのじゃ〜』ってよく言いますけど、ちゃんと節制してトレーニングすれば全然、右肩上がりですけど? やってらっしゃらないだけですよね?って。腹筋を六つに割ることは簡単だけど、実行しないから割れない、それだけ。身体づくりでも何でも、自分がどうありたいか、目標やターゲットがしっかりしていれば、そこに対して本気になればいいだけの話なのに、できない理由を探して言い訳をするんです。『本気は出してる』という人もいるけど、それは本気を出したつもり、なだけ。僕に人よりも抜きん出たものがもしあるとしたら、それは才能や素質ではなく、本気になるためのリミッターの外し方なんです」

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2021年9月に、約5年ぶりに「第33回 日本マスターズ選手権大会」男子60歳以上級に参加し、表彰台に登った。この写真は、大会から5日後に都内で撮影されたもの。とても還暦過ぎとは思えない肉体だ。

ご存知のとおり、角田はK-1で活躍した生粋の格闘家だ。もともと鋼の筋肉を持っていたが、さらにメスを入れ、現在の肉体にまで昇華させた。50代を過ぎてからの"本気の挑戦"。そこには、30代、現役のファイターだった頃の苦い思い出がある。

「試合に勝つためにクリアすべき壁の優先順位は、上位に行けば行くほど、できれば目を背けたい辛いことです。しかし人間は、その順位を勝手に都合よく入れ替えてしまう。すると当然、リング上で結果が出ない。そのくせ負けたら『クソ!』と悔しそうな顔を見せる。まさに自分がそうでした。あの頃の自分の姿を思い出すと、とても嫌でしょうがない。今は、かつて逃げていた自分へ"仕返し"している最中ですね」

2001年から’11年まで、東京を拠点に、売れっ子タレントとして活躍していた角田だったが、東日本大震災とK-1人気の下り坂が重なり、出身地である大阪へと舞い戻る。しかし、そこで角田を相手にする者は誰もいなかった。全国区の知名度があるから大丈夫という自信が崩れ去り、精神的に追い込まれた。

「その時に出合ったのが、アーノルド・シュワルツェネッガーのライバルが考案した『ヘビーデューティートレーニング』でした。『あと1回あげられるか上げられないか』という限界を超えるトレーニングです。限界には心理的限界と生理的限界があって、我々が考える限界は8割方が前者。その心理的限界の先にあるのが生理的限界で、その時に出る力を"火事場の馬鹿力"みたいな言い方をしますが、通常だと『もう駄目だ』という心理的リミッターがかかって、出すのは難しい。このトレーニングは、その火事場の馬鹿力をコントロールして出すことを目指します。自分の限界を超えるトレーニングをやっていると、メンタルもどんどん強くなっていく。僕の場合、フィジカル面はもちろん、考え方や生き方がアグレッシブになりました。人生で直面する試練とか面倒くさいことは、人間関係も全部含めて、自分から一歩足を踏み込んで取り組んだ方が、意外と簡単に片付くものなのだと気がついたんです」

このトレーニングにのめり込むうちに、身体が"ドン引き"するほどに変化し、メンタルも揺るがなくなった。そして、いつしかこの体験を同年代や次世代に伝えたいという目標ができ、手始めとして、具体的な成果を示すためにボディビルのコンテストに出てることを決意する。

「ある意味、究極の振り切った世界なんですね。筋肉を極限まで肥大させておきながら、余分な体脂肪を全部削って本当に彫刻のような身体をつくって、でもそれを審査するのは他人、という。格闘技みたいな、ワンパンチでの逆転は絶対にありえない」

かくして、大会に挑むための肉体づくりに励んだ角田は、’15年に出場した「日本グアム親善ボディビル選手権」のミドル級での優勝を皮切りに、’16年「ボディビルフィットネス選手権大会」で3冠達成、同年「第28回 日本マスターズ選手権大会」の男子マスターズ50歳以上級75キロ超級で、レジェンド級の猛者たちに割り込み準優勝を果たした。

そして還暦をむかえた’21年9月、約5年ぶりに「第33回 日本マスターズ選手権大会」男子60歳以上級に挑戦し、銅メダルを獲得。前回の’16年大会に比べ、結果としては順位を落としたが、本人は「満足している」と充実した表情を浮かべる。その裏側にあるのは、自分の中の常識を180度変えて挑んだ、新たなる挑戦の結果だったからだ。

業界の常識を根底から覆し取り入れた"糖質中心"の食生活

「還暦間近になり、ボディビルのためではなく“健康に生きるため”の食事が重要だと考えて、管理栄養士の先生と契約をし根底から見直したんです。大きな改革が3つあって、1つ目は動物性タンパク質を減らして、植物性のタンパク質にシフトしていくこと。2つ目はプロテインをやめたこと。3つ目は一番の改革で、今までほとんどダイエットのために取らなかったご飯を食べよう、と。1日1キロ、お米を食べるんです」

ボディビルの世界では、減量段階では糖質を抜くのが常識だ。角田も当然のごとく、’16年大会時は糖質をカットし、そのぶん馬肉を1日1キロ食べて挑んだという。しかし、当時の身体(写真下)を振り返り、角田は"焼き過ぎのししゃも"と評す。

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糖質をカットし、動物性タンパク質を中心とした食事で減量し挑んだ2016年「第28回 日本マスターズ選手権大会」出場時の写真。極限まで絞られているが、肌艶などは’21年大会と比べると劣る。改めて2枚の写真を見比べると、5年を経た現在の方が、明らかに若々しい印象だ。

「確かに絞れるし、血管も浮いてくる。でもそれは、至近距離で見た時のこと。でも糖質をカットしているせいで筋肉が膨らまないから、ステージに立って離れて見ると、迫力がないんです。糖と水と塩分、この3つがくっついた時に筋肉はパンプアップされるので。お米を食べた方が、ステージ上で大きく見えるし、何より、明らかに肌の艶が良くなりました」

常識を疑い、根本から見直す。簡単なようでいて、実はとても難しいことだ。自分より遥か年下の者に、自分の持ちうる知識と経験とは逆の意見を言われた時、つい反論してしまうのが人間の性だろう。しかも角田は、第一線で活躍した格闘家として、一般より遥かに高い知識、経験、プライドを持っていたはずだ。にも関わらず、自分の中にある情報を一旦リセットし、学び直す道を選んだ。

「いや、でもね、とか言っていたら何も学べないです。その結果、吉と出るか凶と出るかはわからないですけど、凶と出たら、次回から選択肢として外せばいい。中途半端なことやっていると、結局何が正解で何が不正解だったかわからないままに、次もまた悩むわけです。今回の食事改革では明確な答えが出たので、次回はこれを信じ、さらにレベルアップするために踏み込むことができる。またひとつ、歳を重ねて強くなったなという感じですかね」

学び続けるものは、成長し続ける。この法則に年齢は関係ない。

「東京で色んなことをやらせてもらった10年よりも、今の方がはるかに面白い。さらに、ここから先の10年で、どんな洒落にならないジジイになれるのか(笑)。本気になるっていうのはすごく難しいことなんだけど、何歳でも、本当に本気になったら、できないことなんて何もない。この年齢でドン引きする身体をつくるっていうのも、その証明のためなんです」

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角田信朗/Nobuaki Kakuda
1961年4月11日生まれ。高校2年で極真空手の芦原道場に入門。正道会館空手総本部師範。関西外語大学卒業後サラリーマンとして働きながら空手を続け、K-1ファイター・競技統括やレフェリー、タレント、俳優、歌手として幅広く活動し、お茶の間の人気を集める。2016年大阪ボディビルフィットネス選手権大会では3冠完全優勝を達成。’21年日本マスターズ男子ボディビル選手権大会では第3位を獲得するなど、近年はボディビルダーとしても活躍。2022年スペインで開催されたボディビルの世界大会「IFBB世界選手権」5位入賞の快挙を達成。

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TEXT=岡村彩加(ゲーテ編集部)

PHOTOGRAPH=片桐史郎〈TROLLEY〉

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