PERSON

2024.01.05

『北斗の拳』原哲夫、壮絶なる漫画人生を語る【まとめ】

世界中で愛されている不朽の名作漫画『北斗の拳』の漫画担当・原哲夫氏のインタビューをまとめてお届け! ※2023年11月掲載記事を再編

原哲夫まとめ

1.世界累計発行部数1億! 『北斗の拳』連載当時は1日20時間描いていた

原哲夫

199X年、世界は核の炎につつまれ、あらゆる生命体が絶滅したかに見えた。だが人類は生き残り、世は再び暴力が支配する時代へ。そんな激動の時代に暗殺拳・北斗神拳第64代目伝承者である主人公ケンシロウは、奪われた恋人ユリアを取り戻すためにライバルたちと邂逅。時には死闘を繰り広げ、時には友情を育みながら波乱の時代を生き抜いていった。

1980年代を代表する名作として愛され続け、今なお世界中で新しいファンを獲得し続けている漫画『北斗の拳』。漫画を担当した原哲夫は、連載開始時の様子をこう振り返る。

「21歳の時に週刊少年ジャンプで、『鉄のドンキホーテ』という漫画で連載デビュー。でも、人気が出なかったんです。連載は10回まで続きましたが、担当編集者の堀江信彦さん(注:1979年集英社に入社。『北斗の拳』をはじめ数多くのヒット作を手がけ、1993年に週刊少年ジャンプ編集長に就任)に後で聞いたら、2話目で打ち切りが決まっていたそう。ちょうどその『鉄のドンキホーテ』の6話を描いていた時に、堀江さんがおもしろいアイデアを持ってきてくれた。

僕は中学生の頃からブルース・リーと松田優作さんのファンで、常々カンフー漫画をやりたいって言っていた。で、堀江さんはその話を覚えていてくれて、こう切り出したんですよ。『新しくカンフー漫画をやろう』って。『経絡秘孔を突いたら、人は爆発するっていう話、どう?』って言い出した」

【続きはこちら】
 

2.原哲夫が語る、北斗の拳・ケンシロウやラオウら名キャラクター誕生秘話

週刊少年ジャンプ ’85年 49号 / 見開き巻頭カラー
週刊少年ジャンプ ’85年49号 / 見開き巻頭カラー  ©武論尊・原哲夫/コアミックス1983

『北斗の拳』が世界的な支持を集める理由は、多彩で魅力的なキャラクターにある。ラオウ、トキ、ジャギ、ケンシロウの、北斗神拳伝承者の座を争う北斗4兄弟。シン、レイ、ユダ、シュウ、サウザーといった南斗の男たち。さらにヒューイ、シュレン、ジュウザ、フドウ、リハクの南斗五車星。こうしたキャラクターは強く記憶に残り、今もその名を聞いただけで顔が思い浮かぶという人も多いのではないか。原哲夫は語る。

「ケンシロウのキャラクターは以前から固まっていた。大好きなブルース・リーや松田優作さん、それと映画『マッドマックス』の主人公を演じたメル・ギブソン。これらのイメージを組み合わせてケンシロウが誕生しました。敵役として登場したシンもほとんど悩まなかった。パッと閃いた長髪の男を描いたら、それがシンになった」

ただ、その後は生みの苦しみを味わった。頭の中に浮かぶキャラクターのイメージがどれもイマイチ。個性を出そうとしても、シンやケンシロウと同じような容姿になってしまう。

「原点に立ち返ろうと考えました。ケンシロウはブルース・リーや松田優作さんという実在の人物をモデルにした。実際の人物をモデルにすることで、キャラクターにリアリティが生まれ、魂が宿るんじゃないかと。

それが形になり、キャラ作りの突破口になったのが、シンの後に登場したレイですね。レイのモデルはロバート・ランバートという俳優。レイはシンと似たような美形、イケメンのキャラですが、まったく違う個性を持ったキャラに仕上がったと思います」

【続きはこちら】
 

3.“一発屋の落ちぶれ”から返り咲くまでの苦悩の日々

原哲夫

1983年に週刊少年ジャンプ誌上で連載が始まった『北斗の拳』。当初はケンシロウとラオウの闘いを最後に、3年程度で連載が終了する予定だった。原哲夫もまた、担当編集者からそう聞かされていた。

「3年って聞いていたから、120%の力で頑張ることができていたんです。1日15時間以上働き、たとえ休日が1日もなくても。命がけで描いていたのに、編集部が『あと1年は続けたい』と言い出した。人気があるうちは連載をやめられないのはわかるけど、そんなの大人の事情。僕は若かったから、『3年で終わるって言ってたのに』って反発しました」

だが、意見は通らない。ラオウの死とともに“第一部・完”となった『北斗の拳』は休載期間もなく、次の週から新章がスタートした。

「まったく休んでいなかったから、心がくじけました。それも第一部から数年後という設定。キャラクターは歳を重ねて容貌が変わっているし、新しいキャラも必要じゃないですか。原作者の武論尊先生も設定をつくる時間があるのか心配になりました」

それでも原哲夫は自分を奮い立たせ、モチベーションを取り戻した。

「『北斗の拳』は自分の代表作で最高傑作にすると決めていたから、途中で投げ出すことはできなかった。最後まで死ぬ気で描く姿勢を貫けたと思います。ただ、どうしてもアイデアは枯れてきてしまう。今まで描いたことがない雑魚キャラを出そうと工夫しても、なかなかいい感じに仕上がらない。『北斗の拳』の最後のほうには、今見たら、なんで描いたんだろうと思える、妙に顔の長いキャラクターが出てきたりするんです」

【続きはこちら】
 

4.片眼で描き続けた『北斗の拳』。視力を取り戻した原哲夫の現在地とは

原哲夫

原哲夫の漫画は『北斗の拳』連載時から「圧倒的な技術と臨場感」と評判を集めていた。展覧会「北斗の拳40周年大原画展 ~愛をとりもどせ‼~」で、生の原画を目にすると改めてそのクオリティの高さに驚かされる。

「そう言ってもらえるとうれしいですよ。ただ、僕の原画は汚いですよね(笑)。キャラクターに魂を宿らせようと必死だったから、同じ箇所を何度も何度も描き直している。だから修正液の白塗りが多いんですよ。当時は吹き出しのセリフは写植の貼り付け。糊の跡も目立つし、展覧会を見ると“ああ、なんて汚いんだろ”って思いますね(笑)」

原が言うその“汚さ”も、ファンにとってはグッとくる要素。『北斗の拳』制作現場の熱量が生々しく伝わってくる。そして展覧会のもうひとつの見どころが、原が描き下ろした3点の新作だ。

「展覧会開催に合わせて新作を描いてくれと依頼がありました。なんとかなるだろうと思って引き受け3ヵ月かけて描き上げましたが、もう完全に死んだ(笑)。サイズの大きなカンヴァスに絵を描いた経験がなかったし、描いていると『もっと描き込みたい』って意識が高まってきて、全然完成に近づかない。『北斗の拳』を連載していた頃の“絵に魂が宿ってくる”感覚を久しぶりに味わいました。描いている途中で、何度死を覚悟したことか」

【続きはこちら】
 

TEXT=ゲーテ編集部

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年1月号

シャンパーニュの魔力

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ1月号』が2024年11月25日に発売となる。今回の特集は“シャンパーニュの魔力”。日本とシャンパーニュの親和性の高さの理由に迫る。表紙は三代目 J SOUL BROTHERS。メンバー同士がお互いを撮り下ろした、貴重なビジュアルカットは必見だ。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる