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2022.08.13

佐藤二朗が俳優になった分岐点は、リクルートを就職1日目で辞めたこと!?

慶應義塾大学教授・岸博幸先生が、各分野で活躍するいま気になる人と対談する不定期連載企画「オトナの嗜み、オトコの慎み」。今回の対談相手は、俳優の佐藤二朗さん。【過去の連載記事】

芝居がやめられず、就職先を1日で退社

 今回の対談相手は俳優の佐藤二朗さん。僕は佐藤さんが醸しだすあたたかな空気感が大好きで、今まで見た作品のなかでも、特にWOWOWのテレビドラマ『下町ロケット』とサントリー「ほろよい」のCMは強く印象に残っています。佐藤さんは今でこそ俳優として高い評価を得ていますが、若い頃は苦労の連続だったと聞いています。

佐藤 若い頃はダメダメの人生でしたよ。自分でも”暗黒の20代”と呼んでいます。中途半端に生きていたので、何をやってもいい結果は出せなかったですね。

 大学を出て、まずはリクルートに就職?

佐藤 そうです。大学を出る時に「役者になりたい」という想いと、「自分が役者として食っていけるわけがない」というふたつの想いがあって、半端な気持ちでリクルートに就職しました。でも、入社式の時に「これでオレは本当に役者を諦めてしまうんだ」という実感が込み上げてきて、その場にいられなくなった。気づいたら外に出ていて、1日で退社。人事の方から「リクルートの創業から30年間で、入社日に辞めた人は初めてだ」と言われました。

 何事も”初めて”はすごいことですよ。

佐藤 そうでしょうか(笑)。会社に非常に失礼なことをしてしまったのに、それから20年以上たったある日、リクルートから「当社で出版している雑誌の表紙を飾ってほしい」と依頼がきた。なんて懐の深い企業なんだろうと。リクルートって素晴らしい会社だなって実感しました(笑)。

 それからは役者に専念した?

佐藤 リクルートを辞めたことで、それしか選択肢がなくなったんです。でも、26歳の頃に、再び「俳優としてはやっていけない」と思い、小さな広告代理店に就職。会社勤めをしながら、舞台で芝居を続けていた。どうしても芝居はやめられないんですよ。

 それだけ芝居が好きっていうことですよね。

佐藤 好きな言葉に「画家になりたい人は画家になれない。絵を描きたい人が画家になれる」があります。その言葉を自分に当てはめると、「役者になりたい人は役者になれない。芝居をしたい人が役者になれる」ということになる。それがすべてだと思います。

 芝居が好きで、あれこれ思い悩みながらも継続してきた。だから、結果として成功できたんですね。

佐藤 いや、「運がよかった」だけだと思います。

 「運がよかった」って言えることが、成功するためのひとつの要素ですよ。自分の力だけじゃなく、運も味方した。そう言える謙虚さがあるから、周囲からかわいがってもらえる。でも、多くの人間は成功を収めると、謙虚さを忘れて傲慢になってしまう。佐藤さんは成功しているのに、謙虚な姿勢を崩さない。これって、すごいことですよ。

弱者の側に立って、物語を描きたい

佐藤 ドラマ『浦安鉄筋家族』で共演した水野美紀さんに、「佐藤さんって、社会の弱者の側に立っていたい人なんですね」って言われたことがあって。その時に「あ、なるほど」と思った。確かに僕にはエリート街道を行く成功者ではなく、恵まれない側にずっといたいと思っているところがあるんです。最近は役者だけではなく、脚本を書くことも多いんですけど、ライトなコメディがどうしても書けない。恵まれない人や、弱者が属する負の世界を描きたくなってしまうんです。

 その気持ち、よくわかります。僕も成功者への敵愾心(てきがいしん)が強くて、心は弱者の側に置いておきたい。でも、佐藤さんと違って、敵愾心から気に入らない人のことをボロクソに言ってしまう。だから、よくケンカしちゃうんです(笑)。

佐藤 これも友人から言われたことなんですけど、「恵まれている人たちも、だからこそ生じる負の部分を抱えている。恵まれていないからこそ、できる経験もある」って。それから、世のなかにはいろんな立場の人がいるということを、少しは理解できるようになった気がします。

 佐藤さんは周囲の人にも恵まれているんですね。家庭円満で、奥さんのことをとても大切にされている。

佐藤 妻が言うには、僕はロマンティストで頭の中はお花畑だと(笑)。まあ、奥さんのことをいつも「好き、好き」言っていますから。

 僕は最近、9歳になる娘に「たばこが臭くてイヤ」って言われます。佐藤さんも愛煙家でしょう。子供や奥さんに嫌がられません?

佐藤 たばこは時として、映画やドラマの表現において、重要なツールになりえると思うんです。『評決』という往年の名画で、弁護士役のポール・ニューマンが煙を吐きながら話すシーンが、たまらなく好き。あんなふうに、たばこを吸えるようになりたいと思ってました。たゆたう煙だけでも表現になりえる。個人的には、脚本を書き上げた時の一服は格別ですね(笑)。

 

Jiro Sato(右)
1969年愛知県生まれ。’96年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げし、本格的に俳優活動を開始。近年は映画監督としても活躍。自らの実体験を描いた『memo』(2008)、『はるヲうるひと』(’21)では監督・脚本を務め、出演もした。

Hiroyuki Kishi(左)
1962年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。経済財政政策担当大臣、総務大臣などの政務秘書官を務めた。現在、エイベックスGH顧問のほか、総合格闘技団体RIZINの運営にも携わる。

 

過去連載記事

TEXT=川岸 徹

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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