1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第8回はサッカー選手・長谷部誠。「人生を彩る眼鏡#8」。
記事の最後には現役引退を決断した長谷部選手への特別インタビューも掲載している。
PERSON 58
サッカー選手/長谷部誠
日本人的なよさを大事にしたい
長谷部選手への取材はオフシーズンでドイツから帰国した昨年、2023年6月末に行われた。
「普段外出するときは、必ず眼鏡かサングラスをかけますね。とくにヨーロッパは夏の日差しが強いので、サングラスは必須です。僕は結構シンプルな服を着ることが多いので、眼鏡やサングラス、時計などでアクセントを付けるようにしています」
撮影当日もサングラスをかけてスタジオに登場。その自然なかけこなしからも、普段からスタイリングに取り入れている様子がうかがえる。
「眼鏡とサングラス、合わせて20本ぐらい持っています。僕は裏原宿世代なので、昔から藤原ヒロシさんや滝沢伸介さんのかけこなしに憧れていましたね。同じサッカー界だと、やっぱりカズ(三浦知良)さんやヒデ(中田英寿)さん。お会いするたび、サングラスを含め自分に合うものをわかってらっしゃるなと感じさせられます」
今回選んだ眼鏡は、E5 eyevanの「p15」。目元を際立たせる肉厚なデザインながら、特殊なプラスチック素材を採用し軽量に仕上げられている。クリアブラウンの色合いが肌に馴染み、淡いカラーのジャケットとも好相性だ。
「普段は黒縁をかけることが多いので、こうした色は新鮮でした。僕は眼鏡を選ぶときは軽さやフィット感をかなり重視するんですが、これは本当に軽いなと。日本人に合うように作られているということだけでなく、やっぱりこうしたかけ心地のよさには、日本の眼鏡作りの技術が生かされているわけですよね。アイヴァンは何本か持っていますが、かけるたびにそのレベルの高さを感じます」
2008年に渡独。ヴォルフスブルク、ニュルンベルクを経て、2014年に入団した現在のフランクフルトで、現在10季目を戦っている最中だ。海外でプレーをしているからこそ、日本人であることを意識する部分もあるという。
「僕は半分向こうに染まりながらも、日本人的なよさを活かすことで生き残ることができていると考えているので。プロのサッカー選手として、“当たり前にすべきことを、いかに徹底できるか”という部分は、日本の文化や教育のなかで育まれたと思っているんです。そこは大事にしたいし、そうした日本のよさは、普段から日本のモノづくりに触れるたびに感じています」
現役引退を決断した長谷部誠を直撃
2024年3月中旬、長谷部選手は現役引退を決断した。
取材から時が経った今、その心のうちを聞くため、ベストセラーとなった長谷部選手の著書『心を整える。』の企画・編集を手がけた二本柳陵介が、話を聞いた。
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ちょうど1年前の2023年3月、長谷部選手の故郷である静岡県藤枝市にアイントラハト・フランクフルトがジュニアチームを作ることになり、長谷部選手はその会見のために緊急来日していた。
「あと1年(現役を)やります。今年チャンピオンズリーグの舞台も経験して、またこういう舞台に立ちたいという思いが湧いてきています」
そう話していた一方で、2024年で一区切りするのかな?という雰囲気は感じていた。
「ここ数年は毎年今年が最後かな?と感じながらも懸命にプレイしてきました。ただ、今期はベンチには入っているものの出場時間が短くて、ひとつ(気持ち的に)区切りはついたのかな、と。ボールは蹴り続けますけどね。ドイツでも引退している選手たちのチームもあって、そこに参加したり」
2008年1月にドイツに移籍してから、17シーズンをそこで過ごした。日本代表でもキャプテンとして活躍したレジェンド。次の目標は一体?
「正直、今まで先のことを考えてこなかったんですよ。でも最近、すごい考える。辞めるって決めたら、急に考えはじめました。あー、どうしよって(笑)。とりあえず休むことは決めていますが、僕からサッカーをとったら、何もないんですよね。シーズンを終えたら、すこしゆっくり休むつもりなんですけど、何がやりたいのか、僕に何ができるのか、それを考え続けています」
何もないわけない!と突っ込みつつも、解説者になる、指導者になって経験を還元する、もしくはビジネスをはじめるなどの選択肢は、今のところあまりしっくりきてないようで……。
「よく還元って言いますけど、還元するものが僕にはないように思います。それより、ひとりの人として原点に戻りたい。名もなき人間に一度なってみて、人生において大事なものは何か?を感じてみたいんです。それを突き詰めると、どんどんサッカーから離れていきそうですけどね」
アイントラハト・フランクフルトとの契約もあるので、チームとも相談しつつ、長谷部誠、第二の人生がはじまる。
長谷部誠/Makoto Hasebe
1984年静岡県生まれ。藤枝東高校卒業後、浦和レッズに入団しプロデビュー。2008年にドイツ1部リーグのヴォルフスブルクに移籍。その後2013年にニュルンベルク、2014年から現在所属するフランクフルトでプレー。今季で渡独して17季目を迎えた。著書『心を整える。』は150万部以上のベストセラー。
衣装クレジット
眼鏡¥46,200(E5 eyevan/アイヴァン PR ︎TEL:03-6450-5300) ジャケット¥572,000、パンツ¥205,700、シャツ¥141,900(すべてベルルッティ/ベルルッティ・インフォメーション・デスク TEL:0120-961-859)