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2024.03.05

運動効果が薬で得られる!? 堀江貴文も注目する「マイオカイン」研究の最前線

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。。第30回は「マイオカイン」。ギリシャ語の「Myo=筋 Kine=動作」を語源とする、骨格筋細胞が収縮した時に分泌されるホルモン物質のことで、全身のさまざまな働きの調節に関わっていることが解明されている。分子生物学の視点から運動効果の研究を行う、東京都立大学の藤井宣晴先生に話を聞いた。■連載「金を使うならカラダに使え!」とは……

堀江貴文連載第30回タイトル

骨格筋が出すホルモンの研究が進めば、運動効果を閉じこめた「最強の薬」が実現する未来が来る。

堀江貴文(以下堀江) 前号では、「運動が健康にいい」というメカニズムと科学的根拠を教えていただきました。概要は、運動する時に使われる骨格筋が収縮する際、「マイオカイン」というホルモン物質が骨格筋細胞から分泌され、血液などの体液を経由して全身に運ばれる。そして各所に情報が伝わることで身体のさまざまな働きが調節されるから、ということでした。

藤井宣晴(以下藤井) そうです。運動した部位だけではなく、別の臓器へ作用して状態を調節したり、筋肉のみならず血圧や骨密度の増大を促すなど、多彩なメッセージを送っていると考えられます。他にも免疫機能の亢進やがん発症率の低下、鬱・不安の抑制など、運動の健康効果が全身に及ぶ理由はマイオカインの存在で説明がつくので、これを「マイオカイン仮説」としています。

堀江 骨格筋からマイオカインが分泌されることを証明したのが、藤井先生なんですよね。

藤井 はい。かなり苦労しましたが、骨格筋細胞を培養してシャーレ内で収縮させるという実験に、私の研究室が世界で初めて成功しました。

堀江 シャーレ内の実験だったからこそ、収縮によって分泌されたマイオカインが、骨格筋細胞由来であると証明されたわけですよね。

藤井 そうです。これまでにマイオカインを数十種類発見していて、それぞれ働きが違います。例えば2022年に発見した「RSPO3(R-spondin3)」。これは筋細胞を、疲れにくいマラソンランナータイプに変化させる働きがあることがわかりました。

もうひとつが「PDGF-B(platelet-derived growth factor-B)」。もともとは血液成分の血小板に含まれる成長因子(特定の細胞の増殖や分化を促すタンパク質の総称)として発見されましたが、筋肉にも存在していることがわかりましたし、骨格筋細胞の培養実験で筋量と筋力を増強する作用が確認されています。

堀江 マイオカインの研究は、注目されていますよね。

藤井 研究が進んだのは近年のことで、世界中のいくつかのグループが研究報告をしています。神経細胞を活性化するというマイオカインや、大腸がんを抑制するマイオカインも発見されていますね。

堀江 筋細胞の研究とアンチエイジングのつながりが見えてきたし、運動とマイオカインが連携しているのは間違いなさそうですね。理想の筋肉のデザインができるとか、運動以外の方法で筋力低下を防ぐなどという治療も出てきそうです。

藤井 おっしゃるとおりです。ただ、人体への応用はまだまだ先になると思いますので、今、皆さんにしていただきたいのは運動です。骨格筋からマイオカインを分泌させることで、筋肉を維持して、全身への健康効果を得ることができますから。

堀江 筋肉の維持や増強法で代表的なのはウエイトトレーニング。以前から「筋肉はダメージを受けることで大きく強くなる」と言われていますが、その理由は何ですか?

藤井 骨格筋の維持に関わっているのは「サテライト細胞」と呼ばれるもので、細長い繊維状の骨格筋細胞の上に複数へばりついているんです。骨格筋細胞に負荷がかかったり、損傷を受けたりすると活性化して増殖し、損傷した部位から内部に入りこんで筋細胞に変わり、修復します。この仕組みがあるため、骨格筋は非常に高い再生力を持っているのです。

ただ、ウエイトトレーニングである程度の負荷をかけた状態の筋肉を電子顕微鏡で観察すると、筋肉構造が少し壊れた場所がいくつか見つかるくらいのダメージだとわかります。筋肉が壊れると主成分であるタンパク質がバラバラになってアミノ酸となり、すぐに修復・再生の材料として使われるので、運動で筋肉に負荷を与えてより大きくしたいのなら、筋肉のタンパク質合成を高めるアミノ酸を同時に摂ると効率がいいと思います。

堀江 筋肉が壊れた場所の修復にはサテライト細胞とアミノ酸が関わっていたのですね。その類のドリンクとか、製品の効果には疑問を持っていましたが、これからは運動する時に絶対摂ろうと思います。

もうひとつ質問があって、運動をすることで筋肉に溜まる乳酸は疲労物質である、とも言われていましたがどうなんですか。

藤井 それは誤解ですね。今は否定されていて、乳酸もマイオカインの一種じゃないか? という研究が、最近いくつか出てきています。乳酸は体内の水分でイオン化すると水素とラクテートになります。水素イオンはpHバランスを酸性に傾けるので、タンパク質が主体の細胞にとってはよくないかもしれませんが、ラクテートは骨格筋がエネルギー源として利用できるのでメリットのほうが大きい。むしろよいものではないか、と言われているんです。

堀江 研究が大きく進んでいるから、情報の入れ替わりも早いわけですね。すべてのマイオカイン情報を鵜呑みにしないよう注意も必要ですが、今後、研究はどのように進んでいくのでしょうか。

藤井 1960年代、アメリカ国立老化研究所の初代所長が語った『運動の効果をひとつのカプセル剤の中に閉じこめることができたなら、1錠でもっとも広範に効く、最強の薬になるだろう』という言葉があります。現代はまさに“運動のさまざまな効果を閉じこめた薬を作る”という挑戦が始まっていて、私たちがゴールとするのもそこです。現在はタンパク質を中心としたマイオカイン研究が主流ですが、今後はより分子量の小さいマイオカイン、例えば筋細胞の中で脂質が代謝されて生じる物質などの研究も行いたいと思っています。

堀江 実現すれば、運動が難しい人でも運動効果が得られるような、夢の治療法になるでしょうね。藤井先生の研究には今後も注目します。

藤井宣晴先生
藤井宣晴/Nobuharu L Fujii
1966年生まれ。東京都立大学人間健康科学研究科 運動分子生物学研究室教授。博士(体育科学)、専門は分子生物学。ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センターを経て現職。研究テーマは「運動が糖尿病の予防・改善に貢献するメカニズムの探索と、筋収縮による細胞内情報伝達の変容解析」。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書に『堀江貴文のChatGPT大全』他。本連載をまとめた書籍が2024年3月に発売。

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堀江貴文の金を使うならカラダに使え!

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する連載。

COMPOSITION=海野由利子

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