HEALTH

2024.03.22

堀江貴文が「ヤバい」と唸った、老眼鏡なき人生を過ごせる最先端医療とは

最先端医療を8年以上取材し、「老化は克服できる」ことを自らの身体で実験し続ける堀江貴文氏。「バーキン買うならカラダに使え」と提言する堀江氏が今、特に伝えたい健康で長生きするためのノウハウとは!? ゲーテの人気連載を書籍化した『金を使うならカラダに使え。 ⽼化のリスクを圧倒的に下げる知識・習慣・考え⽅』の一部を再編集してお届けする。第2回。#1#3#4#5 

『金を使うならカラダに使え。老化のリスクを圧倒的に下げる知識・習慣・考え方』
joshua newton / unsplash ※写真はイメージです

毛様体と水晶体の老化は宿命

僕は39歳の時にレーシック手術(レーザーを角膜に照射する視力矯正手術)をしたので視力はいいのだが、さすがに最近、暗いところだと細かい字が見えにくくなってきたように感じる。同年代の友達から「老眼鏡をかけてみろ」と言われて試してみたら、確かにはっきり見えた。

でも僕は、メガネをかけずに快適に見える視力を維持し続けたいと思っていて、白内障手術などで著名な眼科医の北澤世志博医師に最新の治療法を取材したことがある。

老眼は一般的に40代後半から始まるが個人差が大きく、たとえば視力2.0くらいの眼のいい人は42~43歳で老眼鏡が必要になったり、視力1.0くらいでやや近視の人は50歳過ぎまで老眼鏡なしでも大丈夫だったりするそうだ。いずれにしろ、誰にでも自然に起こる眼の機能低下とされている。

老眼の原因は、眼のピント調節がスムーズにできなくなってくること。ピントは、レンズである水晶体を、その上下にある毛様体が引っ張ったり緩めたりして、厚みを変えて調節するのだが、加齢とともに水晶体が硬くなったり毛様体が弱くなったりすることで近くが見えにくくなる。

(中略)

また、眼の角膜の後ろにある水晶体は、もともとは透明で光をよく通すが、加齢に伴い中身のタンパク質が変性し白く濁っていくことで白内障にも進行する。白内障になると、物が二重に見えたり、視界にもやがかかったようになるので治療が必要となる。一般的に、白内障の手術は70歳前後で行う場合が多いが、近視の強い人は60代、なかには50代で手術が必要になる人もいるそうだ。老眼になると、その何年後かには白内障のリスクが高まる。

最新技術で老眼鏡なき人生を手に入れる

老眼対策は「まずは老眼鏡をかける」のがベーシックな選択だし、いろいろな老眼鏡を揃える楽しみもあるが、僕はメガネをかけたり外したりするのは煩わしいと思っている。北澤医師によれば、それを解決する最新の治療法があるという。

新しいのはICL(Implantable Contact Lens)、つまり眼内に挿入する眼内コンタクトレンズの遠近両用版。レーシックで近視矯正をした後でもできる治療法で、近視、乱視、遠視、そして老眼まで矯正でき、さらに“遠近両用”よりも進化した、遠方から近方までなだらかに焦点が合う多焦点レンズも広がり始めているそうだ。

「1m先の“遠方”と、本やスマホを見る30㎝先の“近方”の2焦点(遠近両用)だと、パソコン使用時の60~70㎝先が見えづらいんです。そこで遠方だけでなく、中間から近方までピントの合う多焦点のICLが出てきました。それを入れればスマホやパソコン、仕事を含む日常生活の範囲では裸眼で過ごせて、老眼鏡への依存度はかなり減らせると思います」(北澤医師)

多焦点ICLが治療の最先端だが、暗い場所ではレンズの機能が落ちてしまうため、明るい環境で見る必要があるという。40代後半~50代の近視の人と、老眼の人が多焦点ICLを入れ始めているそうだが、僕も興味を持った。その手術を受けるなら、何歳くらいのタイミングがいいのだろう。北澤医師によると「50~60歳くらい。“老眼鏡がないと近くが見えない”というタイミングが良いでしょう」という回答だったが、もう1つ気になったのは、その時に水晶体はどうするかということ。取るのか、温存するのか。

北澤医師は、基本的に水晶体が透明ならば温存し、濁っていて白内障になっていたら取って、白内障用の遠近両用眼内レンズを入れるなど、年齢と水晶体の状態に合わせて判断するという。水晶体を温存する理由は「白内障になっていないのなら、取りたくないと希望する人が多いため」。僕なら、いずれ白内障になるんだから、水晶体は取っちゃえばいいのにと思うのだが。そう伝えたら、なんと、それもアリなのだそうだ。

「50代で、白内障は軽度だけど水晶体を取ってしまおうとなれば、白内障と老眼を同時に、1回の手術で治すことは可能です。水晶体を取れば将来、白内障になる心配もなくなりますから」(北澤医師)

この治療の際に入れる白内障用の多焦点眼内レンズは30年以上前からあって、今では30種類以上が研究開発されているという。多くは遠・中・近の3焦点で、最先端のレンズはほとんどの距離にピントが合う5焦点のもの。遠方から手前まで見え方がなだらかで、理想に近いそうだ。

「昔と違って、高齢でもアクティブに活動する方が多くなってきて、メガネなしで遠くも近くも見たいというシニアが増えています。5焦点レンズの白内障手術は、当クリニックでは主流で、術後の患者さんは裸眼でも見えづらい位置がほとんどなく快適で、世界が変わったとおっしゃいます」(北澤医師)

白内障でぼやけた視界がすっきり明るくなるのだから、見える世界は確実に変わるだろう。僕も5年後くらいに治療しようと思ったので、手術はどのように行われるのかを聞いた。

「老眼の治療で使うICLは、レンズを虹彩と水晶体の間に入れるだけなので、麻酔の目薬の使用を含めて基本的に10分程度で終わります。術後に眼の充血や炎症がありますが、1週間ほどですっきり見えるようになります。手術翌日は仕事を休んでもらい、2日目からはデスクワークは可能。術後の感染防止のため、スポーツや日常生活の制限などは担当医師に確認して指示を守ることが大事です。

白内障の場合は、水晶体をレーザーできれいに分割して取り出し、そこに多焦点の眼内レンズを入れます。ICLと違い片眼ずつの手術になり、当日は眼帯を装着。翌日にもう片方の眼の手術をします。所要時間はレーザーを使っても5~10分程度。やはり充血や炎症はあり、2~3日は違和感が残る場合もありますし、人によっては腫れぼったく感じることもあります」(北澤医師)

北澤医師が研修医だった30年前だと、白内障手術にかかる時間は30分くらいで、また、当時の眼内レンズは術後に乱視が現れるのも当然だったそうだ。

現在、国内の白内障手術は年間約100万件で、約9割が保険診療。5焦点レンズだと自費で高額にもなるが、レンズは個々に合わせて製作される。眼の老化にまつわる技術の進化はヤバい。一生メガネを使わずに過ごすことだって可能なのだ。

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COMPOSITION=海野由利子

TEXT=堀江貴文

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