放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「自分は必要とされていない……と感じることが多いです。仕事を後輩に回されたり、新プロジェクトに呼ばれなかったり、同僚から頼られることも減ったりして、職場で腐りかけています。こんな私にアドバイスをお願いします」という相談をいただきました。
ビジネスパーソンの原動力は「他者から必要とされること」なので、「必要とされていない」と感じると、労働意欲も帰属意識も薄らいでいくもの。
そして、自分がいなくなっても、そのポジションを埋める「若い人材は必ずいる」のが世の常なので、焦燥感がつのりますよね。
そこで今回は、まだ誰からも必要とされていない芸人の卵たちを励まし、育成してきた僕が、「必要とされていない人から、必要とされる人にシフトチェンジする3ステップ」をシェアしていきたいと思います。
ステップ①「距離を置く」より「距離を埋める」
まず、「必要とされる人」になるために、あなたが生まれ変わる必要はありません。感情の使いかたを変えていけばいいのです。
例えば、多くの人は、自分から「必要とされない人になっていく」パターンにハマりがちです。
僕にも経験がありますが、私たちは職場で疎外感を感じると、モチベを下げ、チームと距離を置いたり、口数を減らしたりします。相談者さんの言う「職場で腐りかけている」は、きっとこの状態です。
当人にとっては、ごく自然な行動なのですが、周囲はそれを「怖い」「とっつきにくい」「無気力」と捉え、ますます仕事を振りにくい人、つまり必要とされない人になっていくんですね。
一匹狼は崇高な生きかたですが、他者から必要とされる、自分の「強み」や同僚との「差別化」は“単独行動よりも集団行動の中で見つかる”もの。
なので、「必要とされていないかも」と感じたときは、周囲と「距離を置く」でなく「距離を埋める」というマインドを選択していったほうが得をするんですね。
ステップ②「必要とされる人」を演じてみる
「距離を埋めてみよう」という感情になれたら、次のステップは、「集団の中でどう振舞うか?」です。
人間関係は、ただでさえ複雑なので、複雑に捉えていくと難解になるばかり。なので、シンプルに考えて行動していきましょう。
例えば、「プロの芸人になること」は、よほどの覚悟と努力がいると思われています。吉本NSCには、毎年1300人もの生徒が入ってくるので、彼ら自身も「自分はなれないんじゃないか?」という疑念と不安を抱えていたりもします。
そんな生徒らに、僕が伝えていることは至極シンプル。
「芸人になりたいのなら、芸人を演じてみればいいんだよ」です。
複雑に考えず、まずは自分がイメージしている「芸人像」を日常で演じてみる。
すると、Vシネに出はじめた俳優さんが、出演作が増えるごとに「凄み」を増してくるように、演じることで身体になじみ、やがて自然に動きだす。これが芸人になる最短距離なんですね。
皆さんも、憧れの上司などの「必要とされる人」を思い浮かべ、模倣してみることから始めてみてください。
ステップ③真似できない「部分」があなたの「強み」
憧れの人を真似てみると、「あれ? ここは自分には合わないな」という部分が出てきます。
例えば、みんなから頼られているAさんを模倣していると……
▼Aさんは、快活に発言するところが魅力的→ が、直感的でエビデンスが弱いので、自分はもう少し情報を足したい。
▼Aさんは、とにかく仕事が早い→ が、やや大雑把なので、自分はもう少し丁寧に返したい。
実は“この「憧れの人からハミ出してしまう自分」が、世間で言うところの「個性」や「強み」”なんです。
今の例だと、Aさんの持つ魅力に、自分の「情報力」や「丁寧さ」を加えて「強み」にしていける可能性があるということなんですね。
「距離を埋め、憧れの人を模倣し、そこからハミ出す自分を愛でていく」。この3ステップを気に入った方がいましたら、ぜひ試してみてください。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。