PERSON

2026.01.28

「指示したのに部下が動かない」必要なのは明確な”仕組み”。組織運営の失敗は“認識のズレ”

組織のリーダーとして、自分の認識に誤解や錯覚はないだろうか。意識構造学に基づくマネジメント理論として、5,000社以上が導入し、創立者による書籍は累計173万部を超えるなど、今ビジネス界で注目を集めているのが「識学」だ。その理論を社会に広めるべく、株式会社識学を設立した安藤広大氏に、識学の基本的な考え方から、そこに至るまでの思い、そしてこれからの日本に必要な働き方の意識改革について話を聞いた。第1回は、識学の根幹となる理論について語ってもらう。【そのほかの記事はこちら】

「指示したのに部下が動かない」必要なのは明確な”仕組み”。組織運営の失敗は“認識のズレ”

識学が突きつける“組織が壊れる瞬間”

「指示したのに部下が動かない」「優秀な人材がなかなか育たない」「組織の拡大とともに成果が鈍化する」──経営者や管理職が日々直面しているのが、こうした組織運営や人材育成の悩みだ。

そんな課題を解決するためのマネジメント理論として、今注目を集めているのが「識学」である。

「円滑なマネジメントは、リーダーの人間力で左右されるものではありません。必要なのは、組織運営のための明確な仕組みです。人や組織がうまくいかなくなる原因は、誤解や錯覚──いわゆる物事の“認識のズレ”にあるんです」

そう語るのが、識学を体系化し社会に広めるため、株式会社識学を起業した安藤広大氏だ。

安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業わずか4年足らずで東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

例えば、上司が部下に「この案件、どう思う?」と聞いたとしよう。その言葉ひとつとっても、上司と部下では認識は異なることが多い。

上司は「考えを聞いたうえで、やらせる前提」というつもりでも、部下は「意見を求められているだけで、何か決まったら指示があるはず」と受け取っているかもしれない。

その結果、時間が経ったあとに、上司は「まだ動いていないのか」と感じ、部下は「まだ決まっていない、検討中だったのでは」という認識のズレが生まれてしまうのだ。

そんな組織上の認識のズレを無くすために、役割や評価基準を明確にした仕組みを作り、組織運営の無駄を排すことで業務効率をあげ確実な成果につなげるのが、識学の考え方だ。

責任とは、個人の感覚ではなく、会社が定義すべきもの

安藤氏がこの識学の考え方に深く納得した背景には、前職での実体験があった。

「とても良い会社で、営業の仕事も楽しかった。ただ、多くの会社に共通することですが、本来は『いつまでに、どれだけの成果を出したのか』という具体的な目標で評価されるべきなのに、評価項目がとても定性的だったんです。

その結果、なんとなく仕事ができそうな人や、やる気がありそうな人、声が大きい人が評価されがちになってしまう」

さらに大きな疑問を感じたのが、責任の所在の曖昧さだった。

「『みんなで一緒に頑張ろう』という雰囲気が強く、さまざまな事柄に対して、誰が責任を持つのかがはっきりしていなかった。でもそれは、結果的に誰も責任を取らないということと同じです」

安藤氏は続ける。

「責任の所在がはっきりしないのに、評価されるのは結局、“責任感がありそう”に見える人(笑)。そう見えない人は『もっと責任感を持て』と言われてしまう。そんな変な状況が、常態化していたんです。

そもそも責任とは、個人が自主的に感じたり、持ったりするものではありません。会社側が明確な指針を示し、役割として設定すべきものです。

個人の責任感の有無によって成果や評価が左右されてしまっては、組織運営はうまくいきませんよね。ひとりひとりの感覚や能力、あるいは気配りによって物事が前に進むかどうかが決まる状態では、組織としてあまりにも無駄が多すぎます」

空気を読む組織は、もっとも非効率である

基準が言語化されていない組織では、いわゆる日本社会にありがちな「空気の読み合い」が起こりやすい。安藤氏は、それこそが企業における最大の無駄だと指摘する。

「例えば営業で、お客様の真意や交渉の駆け引きといった空気を読む能力は必要だと思います。でも、社内の上司や同僚が何を考え、何を求めているかは、きちんと言語化されていれば、わざわざ推し量る必要はありません。

それにもかかわらず、社内では読み合い、探り合いが起こり、結果的に“読み取ってくれなかった”ことへの不満が生まれる。上司にとっても部下にとっても、そうした時間こそが無駄であり、ストレスの原因になるわけです」

曖昧な雰囲気や感情に左右されるのではなく、役割と責任、評価基準を明確にする。判断と決定はマネジメントが担い、組織としての構造を整える──それが識学のメソッドだ。

これまでに5,000社以上が導入し、成果を上げてきた識学だが、その理論は自社においても徹底して実践されている。創業からわずか4年足らずで上場を果たしたという事実は、まさに識学というマネジメント理論の再現性を物語っているだろう。

「マネジメント理論を導入したことで、なぜ業績が伸びるのか。識学がやっているのは、組織の中に潜む誤解や錯覚を、徹底的に取り除くことです。

新たなポジションを設けたり、人材を増やしたりと、何かを“付け加える”発想では、組織への負担が増えたり、適合性の有無でうまくいかないケースも多い。そうではなく、まず無駄をなくす。ほとんどの会社は、組織運営にとって不要なことに、驚くほど多くの時間を費やしています。

それらを洗い出し、明確なルールや評価という仕組みによって削ぎ落としていく。その結果、同じ組織でも今まで以上に動けるようになり、スピードも上がる。ひとりひとりが仕事に集中できる環境をどうつくるか──そのシンプルで確実なロジックに基づいているのが、識学なんです」

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年3月号

今、世界が認めるジャパンクオリティ「日本のハイブランド」

ゲーテ『3月号』表紙 中島健人

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年3月号

今、世界が認めるジャパンクオリティ「日本のハイブランド」

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ3月号』が2026年1月23日に発売となる。特集は、今、世界が認めるジャパンクオリティ「日本のハイブランド」。表紙は中島健人!

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる