PERSON

2026.01.30

「リーダーは人間力で組織を牽引すべきではない」型通りに行えば型通りの成果が出る、識学とは?

2015年にマネジメントコンサルティング会社、識学を設立した安藤広大氏。創立からわずか4年足らずで東証グロースに上場し、導入企業はのべ5,000社以上。著書は累計173万部を超え、マネジメント本として異例のヒットを記録している。自身の試行錯誤を通じて、組織運営の確信へと変わっていった考え方を、識学として形にしてきた安藤氏。第3回では、なぜこの考え方にたどり着いたのか、これまでの経緯、そして識学を立ち上げた理由を聞いた。#第1回 #第2回

「人間力だけで人は動かせない」識学・安藤広大がたどり着いた答え(仮)

ラガーマンからビジネスマンへ。未来から逆算する視点

そもそも安藤氏が識学設立に至るきっかけは、自身のマネジメントへの向き合い方に「誤解」があったと気づいたことにあるという。

早稲田大学時代は名門ラグビー部に所属し、4年間ラグビー漬けの毎日を送った。卒業後は企業ラグビー部への誘いもあり、NTTドコモに就職する。

「当時は営業として、とにかく一生懸命でした。すごくいい会社で、仕事も楽しかった。上下関係が厳しい体育会系だったこともあって、上司や先輩の空気を読む能力も高く、言われなくてもどうすべきかを常に考えていました。今思えば必要ないスキルだったと思いますが(笑)。

ただ、前回お話ししたように、だんだんとプレッシャーの少なさに物足りなさを感じるようになっていったんです。今はいい。でも、40歳ぐらいのいわゆる中堅になったとき、自分はちゃんと成長できているのだろうか。他社からも求められる存在になり、いつでも辞められる状態になっているのか。そんなことを考えるようになりました」

安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

今ではなく「未来」を意識するようになった背景には、反面教師として見てきた父親の存在もあるという。

「父はラーメン店を営んでいました。個人経営ということもあり、どうしても目の前のことばかりで、なかなか未来を見据えた経営にはならない。そういう姿を見て、自分はそうなりたくないと思った部分もあるかもしれません。今は僕も店舗経営に関わっていますが、父には採算度外視で自由にやってもらっています(笑)」

その後、ドコモの取引先でもあった人材派遣会社ジェイコムホールディングス(現・ライク)に転職。上場直後というタイミングもあり、6年後には全国に約100名の部下を束ねる営業副本部長として活躍するまでになる。

「経営に近い立場で仕事がしたいと思っていたので、そこで初めて本格的にマネジメントに携わることができました。ただ当時は、ここまで深く “マネジメント”について考えたことはなかったと思います。

それこそ、無駄な例でお話しした『いかに部下のモチベーションを高めるか』といったことを考えているような感じでしたから」

人間力や感情よりも、ルールや仕組みで評価する

さらなるステップアップとなる転職を計画していたものの、予定していた転職先がM&Aされたことにより、保留に。そんなタイミングで出合ったのが、識学の土台となる理論だった。

それは、人間の意識構造に着目し、「どのように人を戦力化していくか」を突き詰めた理論で、後に安藤氏が組織運営の実践とコンサルティングの知見を重ねることで、現在の識学として体系づけ、広めてきた。ちなみに「識学」という名称は、「意識構造学」から取られた造語である。

「当時は僕も、マネージャーやリーダーは人間力や人間的魅力で組織を牽引するものだと思っていました」

そうした“理想の上司像”は、今も多くの組織に根強く残っている。だが、識学はその前提を根本から覆す。

「識学でいうと、人間力のような“感情”や職場の“雰囲気”といったものは、目に見えず、明確な基準を持たないもの。だからそれを軸に人を動かしたり、人事評価を行ったりするのではなく、もっと明確なルールや仕組みをつくるべきという考え方です」

属人的な能力や感覚に頼るのではなく、決められた型通りに行えば型通りの成果がちゃんと出る。その構造こそが、識学の特徴だ。

「マネジメントには答えなんてないと思っていた僕にとって、物理や数学のように、ロジックに則れば必ず答えが導き出されるという識学の考え方は衝撃でした。これまで自分が行ってきた組織運営の問題点に照らし合わせても、確かに成果が出そうだとも感じた。マネジメントの立場にいながら、今までは何にもできていなかったんだと、改めて気づいたんです」

事業の立て直しに成功。識学の成果を実感

識学の考え方は、自分のようにマネジメントに関わり、日々さまざまな課題に直面している人たちにとって有効なのではないか。さらに言えば、日本の企業に蔓延する“余計な作業”を払拭できるのではないか──。そう考えた安藤氏は、ある企業の事業部立て直しに参画することになる。

「事業部長として、識学のセオリーに基づき、徹底的に組織改革を実践しました。通信業界だったのですが、識学で学んだことをその企業が抱えていた問題点に落とし込み、実行したところ、3~4ヵ月後には数字が急激に伸び始めたんです」

その成果は、安藤氏自身の確信を深めただけでなく、会社からの評価にも直結した。

「これで自分自身も識学の効果を確信ましたし、会社としても大きく評価され、最終的には全社に識学のマネジメント理論を取り入れることになりました」

その後、全社的な業績向上へとつながり、さらにコンサルタント的な立場で、他社からも依頼を受けるようになる。そこで着実に実績を重ね、2015年3月、現在のマネジメントコンサルティング会社、識学を設立した。

「識学で言うところの、業務の無駄につながる“錯覚”や“誤解”を取り除くことで、会社の生産性が劇的に上がる。これは一社だけの話ではありません。もし日本中の会社に同じような無駄がはびこっているのだとしたら、それを排除していくことは、日本全体の生産性を上げることに確実につながる。その信念が、識学を社会に広めていくべきだという思いへと変わっていきました」

TEXT=牛丸由紀子

PHOTOGRAPH=鈴木規仁

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