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2023.08.21

精神科医の見解。高年者の交通事故は、技能低下ではなく、薬が原因!?

30万部を記録した『80歳の壁』はじめ、多くのベストセラーを手がける高齢者専門の精神科医・和田秀樹氏が“心の若がえり”を指南。「事故は、高年による運転技能の低下によって引き起こされるものではない」と語る和田氏は、別の可能性を指摘する。『65歳から始める 和田式 心の若がえり』の一部を再編集してお届けする。【和田秀樹氏の記事】

Unsplash/Dan Gold ※画像はイメージ

高年者の交通事故は多剤服用が原因

高年者は交通事故を起こしやすいという考えが、今や常識化しています。ペダルの踏み間違えや逆走、暴走などを起こし、大事故につながりやすい、というものです。

しかし、私は、この社会の風潮に真っ向から反対します。こうした事故は、高年による運転技能の低下によって引き起こされるものではない、と考えられるからです。

高年ドライバーにおける重大な交通事故の原因のほとんどは、薬による意識障害が原因ではないか、と私は推測しています。薬害といってもよいくらいです。

高年になると、複数の薬を常用している人が多くなります。しかも、高年者は代謝が落ちているため、薬の副作用が出やすくなります。

そのため、低血糖や低血圧、低ナトリウム血症などで、意識障害を起こしやすいのです。頭がボーッとして記憶が定まらず、歩き方もヨタヨタしてくることから、認知症と間違われることもあります。

暴走事故を起こした高年ドライバーが、普段はしない暴走をしながら、当時の状況を「よく覚えていない」と答えることがあります。あれこそ、明らかに意識障害を疑ってよい証言です。

それなのに、高年者すべてをひと括くくりにして、「免許を返納しろ!」と迫るのは、人権侵害、高年者差別にほかなりません。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、35年近くにわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『ぼけの壁』(ともに幻冬舎新書)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)など著書多数。新刊に『65歳から始める 和田式 心の若がえり』(幻冬舎)。

社会が免許返納を高年者に求めるならば、まずは多剤服用の危険性を社会に知らしめたほうがよいでしょう。認知症を疑われていた人が、薬の飲み方を改めたところ、頭の働きも身体能力も改善することは、よくあることです。

高年者の交通事故の責任は、多剤服用を容認している医療界にもあります。患者さんが「頭がボーッとすることがある」と訴えているのに、薬の処方を改めなかった担当医の責任ともいえます。高年者はむしろ、その被害者なのです。

ですから、高年者自身も、「年を取ると事故を起こしやすくなる」のではなく、「不必要な薬を飲んでいると事故を起こしやすくなる」と考えを改める必要があります。

若者の事故は報道されず、高年者の事故は問題視される不可解

そもそも、高年者の交通事故の発生率は高くありません。
2020年に起こった交通事故の件数(警察庁の統計)を使って確率にしてみたところ、75歳以上のドライバー(原付以上の運転免許を保有している人)が第一当事者(加害者)となる確率は、単純計算で0.4%でした。60代は0.3%です。30~50代は、いずれも0.3%でした。

つまり、60代の人が事故を起こす確率は、ほかの年代とほぼ同じなのです。
ただし、70代、80代になると0.1ポイントだけ高くなり、0.4%になります。

一方、突出して多いのは16~24歳の若年層で、約0.7%にもなります。この確率は、高年者を含むそのほかの年齢層のおよそ倍です。

皆さんの記憶にも焼きついている、池袋の暴走事故が起こったのは2019年です。

こののち、「高年者は免許返納せよ」という機運が一気に高まりました。高年者の事故が目立って多かったわけではなかったのに、一つの悲劇が高年者すべての責任のように扱われ、返納者が善、返納しない人は悪、のように叫ばれたのです。

一方で、24歳以下の人が起こす死亡事故は報道されません。若者が高級スポーツカーを乗り回し、幼い子を死なせる事故が起こっても、ほとんど報道されないのです。

本当に交通事故を減らしたいのならば、高年者の免許返納を叫ぶ前に、確率的に事故の多い24歳以下の免許返納を求めるのが筋でしょう。それが平等というものです。

世界中で高年者に免許を返納しろと騒ぐのは、日本ぐらいです。高年者は運転に自信を持っているうちは、胸を張って堂々と運転を続けてよいと、私は考えます。

※続く

TEXT=和田秀樹

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