英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第307回。

“I am not a people person.”って「私は人ではありません」ってこと!?
イギリスで暮らしていた時、一度だけホームパーティというものに参加したことがあります。よく映画とかで見る、家にいっぱい人が集まって立食で飲み食い、音楽がガンガンかかっていてみんな好きなように踊ったり喋ったりしているやつです(ちなみにパーティを開いたのはアメリカ人でした)。
もともとが根暗、しかも英語も0の状態でそんなパーティを楽しめるわけはありません。会場にはもう1人日本人がいて、その人にずっとくっついてなんとかやり過ごしていました。
その日本人の方は、私と同じように人付き合いが苦手そうで、けれど私と違うのは英語がペラペラということでした。
「楽しんでる〜? 飲んでないじゃ〜ん」
ホストの方に、たぶんそんなようなことを英語で言われて、私はなんて返していいかもわからずただヘラヘラ笑っていると。
I am not a people person.
その英語ペラペラの日本人の方がそう言いました。
ピープルパーソン? 直訳すると「人々の人」? もしかして「私は人ではありません」的なことを言っている? いくら場になじめないからってそれはさすがに卑下しすぎでは? そう思って話を聞いていると、アメリカ人の方は「そんなことないわよ〜」的なことを言って(たぶん。英語力がないので正確に聞き取れず)、その日本人の方と笑い合っています。
people person=社交的な人
あとでその方にこっそり聞いてみたら、そういうことでした。
ケンブリッジの英英辞典にはこんな例文がありました。
Donna was a people person. She was warm, outgoing, and an excellent listener.
(ドナは社交的な人だった。彼女はあたたかくて、外交的でそして素晴らしく聞き上手だった)
優しくて、外交的で聞き上手。これは社交的というより、人たらし、みたいなことかもしれません。誰とでもすぐ仲良くなれる人は確かにそんな性質を持っている気がします。
結局そのパーティはすぐに抜け出して、そのあとその日本人の方とお茶をして帰りました。ちなみにその日本人の方ともそれまで2、3回しか話したことがなく、いざ二人きりになってみるとあんまり話すことがなく、それはそれで気まずかったことを覚えています。
ケンブリッジの英英辞典にはこういう例文もありました。
Dave tries hard, but he's just not a people person.
(デイブは頑張っているが、彼は人付き合いが苦手だ)
その方にとっても、私にとっても、このデイブの気持ちがよくわかる一日でした。